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第38話 晩ご飯
「うぅ、疲れた…」
軽く腰をさすりながらホテルから出る
外はまだ日が出てすぐの時間帯だったので、少し薄暗かった
響さんと別れた後、アプリでマッチングした相手と会った美風だが
食事だけ、と言っておきながら相手の押しに負けてしまい、結局ホテルに入ってしまったのだ
しかも相手にSMプレイを強要されてしまい、体力があるわけのない美風は昨日今日と疲労が溜まり続けて限界だった
もうあいつと会うのはやめよう
そんなことを思いながら美風は家に帰った
家につくと荷物を床に放り投げ、ドサっと布団に倒れ込む
疲れが溜まっていた美風は、何もする気が起きず、あっという間に眠りについた
次に起きたのはスマホの着信音がなった音で目を覚ました
のそっと起き上がりスマホを確認すると、画面には相手の名前が映っており、少々迷ったが、美風は電話に出ることにした
「もしもし、どうしたのりょうすけさん」
『あ出た。どしたのミカちゃん、元気ないね』
「ちょっとね、疲れてんの」
『そっか、ご飯誘おうと思ったんだけどやめとこうか』
「ご飯…そういえば今日なんも食べてない」
ぎゅうっとお腹がなって、美風は時間を見るが、ずいぶん眠っていたようで時刻はもう夕方だった
朝から眠ってこの時間なので当然何かを食べれるわけもなく、再び腹がなったので美風はりょうすけさんの誘いに乗ることにした
「いいよ、ご飯行こ」
『え、いいの?大丈夫?』
「うん、その代わりに奢ってよ」
『ははっ、いいよ。迎えに行こっか?』
「ありがと、待ってる」
『はいはーい』
ぷつっと通話が切れる
再び美風は布団に寝転がるとまた重い瞼が落ちてきて、それに争うことなく目を閉じた
「おーいミカちゃん、おきてー」
「…ん、あ、りょうたさん」
「りょう"すけ"ね。おはようおはよう」
ゆさゆさと肩を揺らされ起きる
目を擦りながらりょうすけさんに洗面台に連れて行かれ、顔洗いな、と言われるがまま顔を洗った
濡れた美風の顔をふわふわのタオルで優しく拭きながらりょうすけさんは言った
「勝手に入ってごめんね?ピンポン押しても出なかったからさ」
「いいよ、そのために鍵渡してんだから」
実は美風は、りょうすけさんに合鍵を預けている
理由はいろいろあるが、言うとするならば、美風がりょうすけさんを気に入っているからだ
美風は周りの人間に執着されやすい体質で、良い例が響さんだ
1から10まで干渉してこようとする人間は少なくなく、それこそ美風のセフレや客はだいたいがそうだった
その中でりょうすけさんはかなりサッパリした性格で、美風にそれほどの執着を見せず、むしろ程よい距離感を保ってくれるので美風としては、とてもありがたく思っていた
勝手に家に入られたとしても、物を盗まれるなんて事は一度もなかったし、美風はかなりりょうすけさんを信用している気がする
「それにしても、まだ俺の名前覚えてくれないなんて…俺たちけっこー付き合い長いけど」
「仕方ないじゃん。セフレが多いんだよ僕。みんなりょうすけさんみたいに茶髪でチャラそうな人ばっかで…あれ?髪染めた?」
「お、気づいた?」
さっきまで寝ぼけていて全然気づかなかったが、顔を洗ってサッパリした美風はりょうすけさんの髪色を見て驚いた
確かに一昨日までは茶髪でまるでホストのような見た目だったが、今の髪色はアッシュグレーになっていて、それだけでガランと見た目の印象が変わっていた
「なんか、お兄さんって感じ。似合ってんね」
「いいっしょ?茶髪そつぎょ〜」
美風に褒められて気分がよくなったのかウキウキで髪をいじる
「これ見せるために誘ったんよね」
「あ、そういえば何食べる?決めてなかったよね」
「そうそう!ミカちゃんしんどそうだったからさ、ピザとか寿司とか頼んどいたんだ〜もうちょいで来るよ」
「えガチ?やったありがとめっちゃ好き」
「またまたぁ〜」
しばらくするとデリバリーが届くが、問題はその量で、ピザや寿司以外にもハンバーガーやスイーツがわんさか届いて一瞬見間違いかと思った
「ちょっと、頼みすぎじゃない?」
「今日なんも食べてないんでしょ?いけるいける!」
「流石に無理そうだけど」
自身ありげに言うりょうすけさんに美風は呆れるように言うが、実は美風もジャンクフードが山盛りになっている夢のような状況にワクワクが止まらなかった
「全部食べたら太っちゃうな」
「その分動けばいいよ。ほら座って」
「はいはい」
「それじゃ」
「「いただきます!」」
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