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第41話 おせっかいさん

「はぁ…美風っ」 「ん、んあっ!ひびき、さんっそこっ…もっとっ…ああ!」 美風がねだるように響の首に腕を回すと、答えるように響も美風の良いところを突く 強い刺激に震えながらも、絡めた腕が外れないようにしがみつけば、目の前には汗で髪を濡らす、男前の顔 ちゅっとおでこにキスすると、響も美風の唇にキスをする それは軽いものからだんだんと深くなっていく もちろん、腰の動きは一切緩めないまま 「ん!んむっん、んあ…はあ」 「…んっ美風、イっていいよ」 「あっあっ、イく、から、まっ〜〜〜っっ!!」 「…っ!」 美風はビクッビクッと体を揺らした後、ダラリと力を抜いて、響に寄りかかる 響もしばらく息を整えると、寝息を立て始めた美風を抱き上げ、浴室へ向かう 「ほら美風寝ないでよ…。お風呂入らないと」 「ん…もう、むり…」 一言だけ残して再び目を瞑る美風にため息をつきながらも浴室に連れて行くと、慣れた手つきで美風を洗い始める 体を洗っている時も、美風は小さく喘ぎ声を漏らしていたが、起きる気配はない 風邪を引かないよう素早く、丁寧に美風を洗い、湯船に浸からせると、すぐに響自身の体を洗う 湯船で美風が溺れないかとチラチラと確認しながら体を洗い終わると、美風のいる湯船に無理矢理入り込む 2人が入るには明らかに狭い浴槽は、耐えきれず水が溢れ出すが、美風が小柄なためかなんとか湯に浸かることはできた 「…こんなに痩せて…ちゃんと食べてんの?」 全く起きる様子のない美風の体を見て、響は呟くように言った 成人男性にしては細い手足と腹。客が付けたであろう複数のキスマ。誰にやられたのかもわからない謎の痣。 どう見ても健全ではない美風の体を優しく撫でる 最初に会った時よりはマシになってはいるが、本人の意識が低いためか、治してもすぐに新しい傷をつけて戻って来る おそらく、客の中にそういう趣味を持つのがいるのだろう 響は今すぐにでもそんなことをやめて欲しかったが、本人にそんなこと言えば、今度こそもう自分の元には戻ってこないだろう 響はそれが怖いのだ 今にも消えてしまいそうなほど弱っているのに、手を差し伸べても全く頼ろうとしない 見ていてヒヤヒヤするのに自分じゃ何もできないのが酷くもどかしい 父親ってこんな気分なんだろうか いや、父親は息子とセックスなんかしないだろう どうにかしたいけど結局、俺も美風にとってはただのセフレでしかないもんな… やけに冴えた脳内でそんなことをぼんやり考えたとて、この状況はなんともならない わかってはいるがやるせない気持ちが、響の不安をより掻き立てるのだ 美風の顔がほんのり赤くなってきたところで湯船から出し、体を拭く さすがの美風も目を覚ましたようだったが、髪を乾かしている時もうつらうつらと頭を揺らしていた 「おやすみ、美風」 「ん、おやすみ」 全ての身支度を済ませてベッドに入れてやると、美風は一瞬で夢の中へと落ちていった 対して響はすぐに寝ることはせず、一度ベッドから出ると、美風の荷物を一つ一つチェックしていく 実は以前、美風の客の1人に粘着質な奴がおり、美風は荷物や服に盗聴器をつけられていたのだ 本人にそれを伝えても 「ああ、多分あの人だ!しつこくてめんどくさいんだよね〜」 などと、なんとも危機感など全く感じてないような素振りでほとほと呆れたのを覚えている 美風があんなんだから変な奴ばっかりに好かれるんだ とは言う俺も美風のスマホに勝手にGPS機能入れてるけど… 「これは、大丈夫。これも…大丈夫」 誰かの連絡先の書かれた紙や、明らかに美風のではない物を排除しつつ確認していく 全て確認し終わり問題がないことがわかると、美風の持ち物は元通りに戻して、ベッドに戻る すやすやと寝息を立てる美風を、早朝に勝手にいなくなってしまわないように、しっかり抱きしめながら響は眠りについた 「ちょっと、力強すぎ」 朝、日の光で美風は目を覚ますが、起き上がることはできなかった 響の腕は美風の背中に回り、向き合う形でピッタリと密着した状態で固定されていたからである これでは起き上がるどころか寝返りすらできないだろう 今何時なんだろう 美風の体内時計ではだいたい5時か6時には目が覚めるから、だいたいそのくらいなのはわかってる 響は平日は仕事に向かうため7時に目覚ましをセットしているが、あいにく、今日は休日だ つまり目覚ましは鳴らない可能性が高い 起こすしかないか… 「響さん、ひ、び、き、さーーん!」 「……ん、みかさ」 「僕もう起きたいんだけど」 「……もう、ちょっと……」 「うっくるじぃ」 美風の声に一度は目を覚ましたものの、再び目を閉じてしまう響 美風はみじろぎをしてなんとか抜け出そうとするが、先ほどよりも腕の力を強められて、さらに身動きが取れなくなってしまった 仕方ない、起きるまで待つしかない… 美風は響が起きるまでの間、ぼーっと天井を見て時間を潰すしかなかった

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