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第55話 白い部屋
ここは、どこ…
美風は体に圧迫感を感じて目を覚ます
最初に目に映ったのは真っ白な天井
見渡すとそこは少し広めの部屋の中で、まるで天国なのではないかと思えるほど白を基調とした部屋だった
汚れ一つないまっさらな部屋は、家具も何もなく、あるのは今美風か横たわるキングサイズのベッドと、壁の端にポツンと扉が一つ
美風はその扉に近づこうと、身を起こそうとするのだが
「おはよう、美風」
「っ!に、いさん」
ドキッと心臓が跳ねた
声のした方に向くと、恭冴は美風の隣で寝転がり、腕は美風の腰に巻きついていた
目を覚ました時に感じた圧迫感はこれだろう
恭冴は離すまいと、さらに美風を抱き寄せる
顔と顔が近くなり、息が詰まる
慌てて目を逸らすと、巻きついていた手の片方で、顎を掬われ無理矢理視線を合わせられた
おそらく彼も先程まで眠っていたのだろう
寝起きの兄はとても艶かしく刺激が強い
兄の顔は子供の頃とは違い、幼さが抜け、男らしくもどこか可憐な美青年へと成長していた
そんな顔が美風に近づきチュッと唇に触るだけのキスをされる
ぎゅっと目を瞑り、貪るようなキスを想像していた美風は、案外あっさりしたものに少し驚いた
「美風はとっても早起きだね」
「…あ…」
「待ってて、飲み物取ってくるね」
「あ、ちょ、待ってにいさ…」
————カシャンッ————
起き上がりドアに向かう兄の後を追おうと、美風も起き上がるが、何もないはずの部屋に似つかわしくない音がなる
その音は美風の足元でなっていた
恐る恐るそちらに目を向ける
音の正体は美風の左足首に巻きついていた足枷だった
金属製のそれには細い鎖がついており、ベッドのフレームに繋がっていた
「なに、何これ…」
鎖に気を取られているうちに兄は扉を開けて向こう側に行ってしまった
慌てて追いかけるも、鎖の長さはベッド周りをうろつけるほどの長さしかなく、結局扉に届かず、再びカシャンと音を出して美風の動きを止めた
「取れないっ、どうして…っ!」
引っ張ったり、叩いたりしてみるが全く外れる気配もなく、むしろ力任せに外そうとしたせいで足首が擦れて痛い
それでも無理矢理外そうと半分涙目になりながらも奮闘していたが、しばらくすると兄がグラスを待って部屋に戻ってきた
「駄目だよ美風、傷ついちゃう」
「いや、いやっ来ないでっ!」
恭冴はグラスをサイドテーブルに置くと、美風に近づいてくる
先ほどは寝ぼけていたため何も感じなかったが、意識がハッキリした今は、恭冴が怖くてたまらない
美風は鎖の長さが許す限り恭冴から距離を取り、部屋の隅へ逃げ込んだ
恭冴はそんな美風に優しく微笑み、この鎖をつけた張本人とは思えないほど爽やかな声で言う
「大丈夫だよ。俺は美風に酷いことしないよ」
どこの誰が言っているんだ
実の弟にここまで執着し、拉致監禁しといて、今更そんなこと言われて信じる奴などいない
恭冴は手を差し伸べるが、美風は部屋の隅から動かないでいた
「…これ、外してよ…」
「美風がいい子になったらね」
恭冴はそう言うと、美風の足に繋がる鎖を引き寄せると、足を取られた美風は床を引き摺られるように、無理に距離を詰められる
「いやっいやだっ」
「喉渇いたでしょ?」
そう言って恭冴は美風の顎を上向に固定すると、持っていたグラスの口を美風の唇に寄せた
もちろん喉は渇いている
だが兄が用意した飲み物など、何が入ってるかわからない
傾けられたグラスを無視して口を閉ざしていると、痺れを切らしたのか、恭冴は美風の口の中に指を突っ込み無理矢理開かせた
「ぅあっ!?」
「大丈夫だから、ね?」
美風の無理に開かされた口に冷たい水が流れてくる
それが気持ち良くて、美風は一口、飲み込んでしまった
それからはタガが外れたように、ゴク、ゴクと飲み込む
渇いていた喉が潤う感覚がした
「んくっ…ん」
「うん、上手上手」
いつのまにか自らグラスを掴み飲み干す美風を見て、満足そうに恭冴は頭を撫でる
「いい子だね」
「…にいさん…」
恭冴は部屋の隅に座る美風を抱き上げるとベッドに下ろす
動くたびにカシャカシャと音が鳴る鎖が忌々しくて、外そうと弄ると恭冴に手を掴まれ止められる
「っ、」
「擦れちゃうからダメ」
「なんで、とってよぉ…もう帰る…」
「美風の家は今日からここだよ。ここで暮らすんだ」
「やだ、やだ帰るぅ」
駄々をこねるようにベソをかいてイヤイヤと首を振るが、恭冴は聞く耳を持ってくれない
「まったく、我儘ばかり言うんだから」
「やだっやめてよ!」
そしてあまりにも言うことを聞かないと美風を押し倒し、どこからか取り出したのか縄を使って腕を一括りにし、ベッドフレームに固定した
万歳の姿勢が恥ずかしくて、手を振り解こうとするが硬く結ばれた縄はびくともしない
無防備になった美風の上に、恭冴は跨るように覆い被さってくる
急に距離を縮められ、昔の記憶が蘇り体が小さく震えた
そんな美風の頬を恭冴は愛おしそうに撫でる
「ここにいれば安全だよ、美風を傷つける人もいない。俺が守ってあげるからね」
「僕はそんなの頼んでない!…お願いだから…んっ、んむっ」
ここから出して、と再び説得を試みたが、恭冴に唇を塞がれ叶わなかった
喋っている最中にいきなり口付けられたため、開いた口に舌を入れられる
恭冴の舌は隅から隅まで撫で尽くすように、口内を蠢く
ぞわぞわと背中がくすぐったいような感覚に身を捩るが、恭冴が上に跨るせいでうまく体を動かせない
「んっんぅ、ん!?」
「勃ってる。気持ちいね?」
美風がキスに夢中になっている間に、恭冴の手は美風の下半身へと手を伸ばしていた
恭冴は美風の下着をズリ下げると、見せつけるようにツンっと指でつつく
快感を感じているそれは、弱い刺激でも感じてしまい、美風の体は派手にビクついた
「可愛いね」
「やめっ、にいさっ、んんっ!!」
そんな美風の反応を見るように、恭冴は美風のそれを片手で包み込むように握ると、上下に動かし始めた
「、んっはあ、んっ」
最初こそ抵抗していたが、美風からしだいに嬌声が漏れ、与えられる快楽に無意識に腰がくねる
兄が怖いのに、恥ずかしいのに、体は浅ましく反応してしまうのだ
兄の手は美風を攻め続け、クチュックチュッと先走りで音が部屋中に響く
どうしよう…もう、イきそう…!
「まだイっちゃだめだよ」
「いっ!?ぅんっなんで…あっ」
快感に耐えきれず、美風の腰がより一層くねったところで、恭冴は見計らったようにパッと手を離した
もう少しで達しそうだったのに、いきなり刺激を取り上げられて、美風はもどかしさに恭冴を睨む
対して恭冴は心底楽しそうに微笑んでいた
その笑顔にゾッとしたのも束の間、恭冴は先走りで濡れた指を美風の蕾に突き入れた
「イくんなら、こっちでね?」
「んあっ、やめ…ふあっ」
使い慣れたそこは、指ごとき簡単に飲み込むが、恭冴の細く長い指は拡げるように開いたり閉じたりと中を撫で回す
美風の先走りで滑りが良くなった指が気持ちいいところに当たるたび、再び美風の下半身に熱が集まった
「あっ、あぅ、ぅうんっ!」
「ここ、美風の気持ちいい所。昔と全然変わらないね」
恭冴は嬉しそうに美風のぷっくり膨らんだ前立腺を、トンットンッと指で弾く
寸止めされて、お預けされた状態で強い刺激を与えられてしまえば、美風の快感は簡単に限界を迎えてしまった
「んあ、あっ〜〜っ!」
「うん、上手にイけたね。偉い偉い」
まるで子供を褒めるように頭を撫でる恭冴をぼーっとした目で眺める
それは小さい頃、よく美風が頑張った後のご褒美として頭を撫でてくれていた姿と重なった
熱に浮かされているせいか、美風の顔は撫でられた心地よさに、思わず恭冴に縋りつきたくなる
誰かに褒められるのは久しぶりだ
頭を撫でられるのも
美風は頭を撫でる恭冴の手に夢中になっていた
そのため、恭冴が自身のモノを美風の蕾に当てがっていることに気づくのが遅れてしまった
「かわいい、俺の美風…」
「え、あっ、なに」
ぴとっと自身の蕾に何かが当たり、慌ててそちらに目を向けるとそこには、ガチガチに固まった恭冴のモノが中に入ろうとしていた
「はっ!?ちょっとそんな、おっきいのむりだよ、むりむりむり…」
「大丈夫、美風なら気持ちよくなれるよ」
「いや、壊れる、やだっやめてっ」
「壊れても、俺が愛してあげるからね」
そう言うと恭冴は美風の腰をガッシリ掴み、勢いをつけて美風の中に突っ込んだ
「うぐぅっ〜〜〜っっ!!」
ゴリっと音がなりそうなほど勢いよく突き抜かれ、美風の目には星が飛ぶ
その衝撃で気持ちいいところに当たったのか、先ほど出してクタリとしていた美風のそれからは、再び芯を持ちぴゅるっと液を吹き出した
「挿れただけでイったの?すごいね」
「らめっうごかな…ぅああっ!」
ガクガクと震える美風の足を引き寄せ、恭冴はさらに奥へと何度も何度も突き入れた
今まで入ったことのない場所まで届き、美風は体を震わせた
奥まで突かれるたび、美風は連続でイった
まるでスイッチが壊れたように美風の意思とは関係なくぴゅっ、ぴゅっ、と吹き出し、美風の視界はしきりに点滅した
「あうっぐっ、ふぅ、んあ!」
「イきっぱなしなの?気持ちいね美風」
満足気な兄の声がはるか遠くに感じる
もう、むり…
そう思った瞬間、まるで電気を消されたようにパチンッと美風の意識は途切れた
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