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$4.金は天下の回り物⑦

 その言葉を聞いて薄ら笑みを浮かべた郁は振り返って聖に近づいた。  「今までは親父や叔父さんがいた手前仕方なく呼んでいたが今年は二人はいない。お前も忙しいだろう、あちこちと現場を駆け回ってヘコヘコ頭下げてんだから」  「僕はホテルの為ならそれぐらい朝飯前だけどね。プライドの高い郁には考えられないかな」  煽るように皮肉を皮肉で打ち返した聖。やはりついさっきの会議での聖の活躍が面白くないと感じている郁。それは言葉や態度からあからさまに聖にも伝わっていた。  「それと今年はなるべく身内や親しい友人とでやるパーティーにしようと思ってる」  「それなら僕だって行く権利があるだろ?もちろん手ぶらでなく何か用意して行くよ」  「お前からの贈り物なんていらないから絶対来るな。それが何より最高のプレゼントかな」    犬猿の仲、水と油。とにかく何にでも反発し合う、会社の今後を担う若い御曹司達はお互い一歩も引かない。  「あー…聖さん時間がないのでこの辺で、、」  「これは申し訳ない。足止めさせてしまって」  「いえ、、今日はお疲れ様でございはさました」  二人の間を割って強制的に引き離す。これはもう田ノ上の中では毎度の出来事で、二人が鉢合わせる現場では仲裁役の為にいるようなもんだ。  郁と田ノ上が出て行った会議室に一人残った聖はため息をついてスマホを見ると海外にいる父親からの着信があって、すぐさま折り返しの電話をする。  「父さん。はい、今終ったところです。皆さんから賛辞を受け今回の企画は問題なく通りそうです。後は各取引先との打ち合わせをした後にご報告します」    "ご苦労だった"と父親からの言葉に安堵の表情で電話切ると自然とため息をこぼした聖。父親の期待を背負っているのは、郁だけでは聖も同じだった。 ◆◇◆◇◆  正午、家の主がいなくなったと神崎邸では朝の張り付いた緊張感から解放された使用人たちが各持ち場の仕事を淡々とこなし柔らかい時間が流れていたていた。  『夕日っ!』  「ん?あっ、慧。どうしたの?サボり?」  『違うよ、なんですぐサボりって言うかなぁ。今休憩時間!』   「ああ、ごめんごめん。そうだ何か聞いたよ〜朝に何か一悶着(ひともんちゃく)あったって」  夕日の持ち場の地下にひょこっと現れた慧は何でもなかった様に涼しい顔で現れた。朝の出来事はすでに使用人内で広まっていて噂好きの夕日は顔見るなり直球で口にする。  『いや別に一悶着ってほどじゃないけど、、』  「入ってたった2日目でもう郁さんに目つけられてるってなかなかないよ!もしかして慧って問題児?」  『たまたまだよ。あー…それよりもし今大丈夫なら二階案内してくれない?ほら昨日見れなかったじゃん』  「んー、いいけど5分待って。すぐ終わるから」  そしたてキリのいいところで持ち場の部屋出てきた夕日は少し乱れた服装を正して、外で待っていた初人に付いて来てと手招きをした。  二階へ続く螺旋階段のゴールドの手すりはで自身の姿が映るほどピカピカに磨かれていた。足元に視線を音ストこの先の豪華な部屋へ誘っているかのように床の絨毯にも塵ひとつない。  「二階は旦那様の書斎とプライベートルーム。ドレッシングルームにコレクタールーム」  『なんか横文字ばっかりで何だかさっぱり』  「まぁ旦那様は海外にいるから空き部屋状態だけど掃除は定期的にしてる。他に二階は郁さんの部屋がある」  『ふーん。いわゆる立ち入り禁止区域って事ね」  「そう!貴重な物ばかりだからくれぐれも触って壊すようなことしないでよー!問題児さん!」  『もうその呼び名やめろってば』  ずんずん歩き進む夕日の横で顔を上げ天井や左右にキョロキョロと目線を動かす初人。そしてワインレッドのドアの前で立ち止まった。  「ここは郁さんの部屋。これから担当が掃除に入ると思うから鍵は空いてるはずっ、、ほら開いた!」

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