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$4.金は天下の回り物⑧
大きな重い扉開けて部屋に入った。
ある意味、想像通りではあるがやはり目の前にすると口を開けて興味深そうに目を動かす初人。
「どう?すごいでしょ。人生勝ち組の象徴だよね〜僕らとは住む世界が違うんだよ」
『、、掃除大変そ』
「そっち!?こんな部屋住みたいと思わない?」
『あんまりないな』
「えーそうなの?てっきりこういう生活に憧れがあってきたのかと思ってた」
『みんながみんなこういう生活したいと思ってるわけじゃないよ。金持ちは金持ちの悩みだってあるだろうし』
「わお!慧って意外と哲学的だね」
そしてチェックするのはお宝のありかだけではなく防犯だ。監視カメラの種類は、大体を大まかに分けられていて、そのほとんど網羅している初人。屋内用や室内用など、もちろん設置する場所や用途によっても形や性能が変わってくる。
監視カメラの管理は管理室で行っている事は知っている。まずはそこへ行き確認することが先決か。
『夕日、このドアは?』
「そこはなんていうか、、セレブ部屋!」
『セレブ部屋?あーなんか想像つくかも』
「入ってもいいけど見たらすぐ出るよ」
ドア開けると天井近くまで高いガラスのショーケースがずらっと並んで目がくらみそうなほど眩 かった。ケースの中には高級腕時計、アクセサリー、サングラス、万年筆。
いわゆる金持ちの贅沢品が自慢げに並べている優越感に浸る部屋だ。
『スゴっ、これ使ってんの?』
「大事なパーティーとか大きな仕事をする時に持ち出す事はあるみたいだけど、それ以外は大体ここで眠ってるんじゃないかな。ほら、お金持ちって使う使わないで物選ばないじゃん」
『まぁね』
とりあえず宝のありかは確認した。郁の部屋ににさえ入れば、この扉には鍵はないし特別な防犯システムもなさそうだ。
『誰か郁さんの仕事や休みのスケジュールって把握してんの?だって、掃除のタイミングとかってそれで決まるわけじゃん」
「基本的には田ノ上さんが管理して、掃除担当に時間を伝えてるみたい」
『みんなが知ってるわけじゃないんだ』
「けど定期的にこの日は休むとか泊まりでいないとかルーティンあるから、なんとなくはわかるかも」
『、、いない日?』
「ホテルは全国にあるから、月イチは泊まりで各ホテルを内密に視察に行ったりしてるらしい。あーそういえば明日はその日かも。郁さん専属シェフが休みになってるし」
それを聞いた慧は頭の中ですぐに構想を練り始めた。決行なら明日の夜がベストタイミングだろう。まだ少しリサーチ不足なところもあるが、このチャンスは逃させない、、時間も限られている。初人の意志は決まった。
『そっか、ありがと夕日』
「もういいの?」
『そろそろ休憩終わるから戻んないと』
「あぁそうだったね!あっ、ねぇ夜仕事終わったらへ遊びに行っていい?」
『あー…今日はちょっと、、また別の日に』
「そっか〜、オッケー!」
そう言って初人はまた中庭に戻り仕事を再開する。仕事中も明日の夜の事ばかり考えていた。明日の夜までにまだまだやる事は多い。
悪いけど"別の日"なんて来ない。出会う場所が違ったらもっと仲良くなれたんだろうな。不覚にもここへきて友達なんか出来てしまった。
新見 慧でいるのもあと一日であることを望んだ。
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