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$4.金は天下の回り物⑪

 第一関門をすり抜け中庭に戻った初人は早速次の行動に移る。犬たちの小屋に行くと早紀がいた。抱えていたものをおろして近づいた。  『戻りました。餌とかついでに持ってきましたよ』  「あっ気が効くね。ありがとう!」  『あのー松永さん、今日こいつらの散歩一人で行ってみていいですか?』  「新見くん一人で?けど、、まだ慣れてないし大変じゃないかしら?」  "松永さん、ちょっといいですか!?"と同じ持ち場の使用人が顔をの覗かせて声を掛けてきた。持ち場で何かあるとリーダーの早紀には何かあればまず報告する決まり。  「あっうん。ごめん!新見くんちょっと待っててくれる?持ってきた餌あげてて」  『はい、わかりました』  2人の歩く後ろ姿を見て計画が順調に進んでいるのが確認出来る。餌の時間を把握しているかのように訴えかける3匹の番犬はすっかり初人に懐いていて大人しくお座りをしている。  『よーし!いい子だな。持ってきてやったぞ食うか?』  頭を撫でると目を細め嬉しそうに近寄る。人間に比べれば、動物を手懐(てなず)ける方が楽。 しばらくして走って戻ってきた早紀にワザと何も知らないですと言った心配気な顔を向ける。  「あー、新見くんごめん。この子たちの散歩。やっぱりお願いしていい?」  『えぇそれは全然大丈夫ですが、、何かあったんですか?』  「庭のスプリンクラーが全部動きなくてね、ちょっと江口さんに相談してこようと思って」  『スプリンクラーが?、、それは大変ですね。こっちは任せてください』  「ありがとう。じゃあよろしく」    実はこれ仕込んでいた計画の仕掛け一つ。広い庭に設置されている散水スプリンクラー。この豪邸を彩る花や木々達の水やりは大体この機械数十台置いてまかなっている。  昨日の水やり終了後、初人が目を盗んで手を加え動か無くなるようにした。これも今まで数多く経験したのアルバイト経験の一つで備わった知識。  『それじゃお前たちこれ食べな。食べ終わったらちょっと長めの散歩付き合ってもらうからな』  教わった規定量の餌を与えて時計を気にしながら凄いスピードで皿を空にする犬たちを見ていた。そして最後の仕掛けの時間がきた。  「よしっ。お前ら散歩行くか」  裏出口から屋敷の外へ出て改めて気合いを入れ直した。大きな体を揺らしながら番犬達は初人の横を歩く。小柄な初人が大型犬3匹を引き連れて歩いている姿は、いささか珍妙にも見えるが最後の散歩になると思うと周りの目も気にならなかった。  ゆっくりと歩道を歩いて周りに家や人通りが少なくなった頃合いを見て歩みを止めた。番犬達は初人の顔を見て"?"と顔をする。  「ストップ!待て。ちょっと静かにしててくれよ」  犬達に向けて人差し指を口元に持っていき"しー"と合図するといつも初人が使用しているのとは別の携帯電話を出して耳元に当て呼び出し音を鳴らす。  「はい、もしもし」  『えーわたくし防犯カメラのメンテナンス依頼受けておりました三葉(みつば)システムの者ですが、お世話になります』  電話を掛けた先は神崎宅だ。警備室に繋がり電話の声は警備担当の者だが江口ではなかった。 初人はそのまま悠長に慣れた口調で業者に成り済まし話を続けた。  「ご苦労様です」  『あのですね、明後日カメラのメンテナンス行く予定でしたが今日に変更出来ないかと思いましてね』  「今日ですか?、、ちょっと待って下さい」  確認の確認の為、インカムで江口に状況を話すとOKが出たが"今手が離せないから"と対応を任された。  電話に出た警備の男はは実はまだ入って一ヶ月の新人。言われた通りデスクをまだ慣れない手つきで手探りし、三葉システムと書かれたファイルを見つけた。

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