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君の事を 2

 嬉しいなぁ。僕、リュカに正式にここにいていいって言われたんだよね?今はただの穀潰しかもしれないけど、いつか僕もちゃんとリュカの役に立てる様になれば、リュカの友人って言える存在になれたりするかな。僕の初めての友達。それって凄くいい。 「僕、もっとリュカの役に立てる様に頑張りたい!」 「……別に、お前はお前のままでいい」 「けど情けないだろ。リュカに頼ってばかりじゃなくて、いつかは頼られる存在になりたいな、なんて」 「ま、せいぜい頑張れ。けど、無理に背伸びしないで、お前はお前に出来る事をやればいいんじゃねえの」  背伸びしないで、今の僕にできることを……か。 「うん、考えてみるよ!」  とても、気分が高揚していた。鼻歌混じりに漸く任せて貰えるようになった食後の後片付けをして、リュカと入れ替わりに3日ぶりのお風呂を堪能して、寝る前に暖炉に薪をくべて、それからベッドに入った。隣のベッドではリュカが使い古した布切れでナイフを磨いている。いつもの光景だった。護身の他、料理や、リュカ曰く髪を切ったりするのにも使うという万能なそれは、きちんと手入れしてやらないとすぐに錆びたり切れ味が悪くなったりするらしい。 「リュカはまだ起きてる?」 「ああ……と言うか、ちょっと出掛けてくる」 「え……?今から?」 「ああ」  幸せだった気持ちが一気に急降下した。瞬時に思い出したのは、食堂のおじさんの言ってたことだ。夜にひとりで飲みにきては女の人と連れ立って帰っていく……って。 「こんな夜に、危ないんじゃない……?」 「誰に言ってんだ」 「いくらリュカが強くても、万が一だってあるし……」 「心配すんな。慣れてる」  流れる様にベッドから立ったリュカは、腰のベルトに差した鞘にナイフを仕舞うと灰色の外套を羽織った。行って欲しくない。リュカが危うげなく自分の身を守れる人だって事は知ってる。けど、そういう心配抜きにしても、行って欲しくない。  僕はどんな顔をしていたのだろう。玄関前で一度僕を振り返ったリュカが眉を潜めた。そしてカツカツと靴を鳴らして僕のいるベッドの脇まで引き返してきた。 「大丈夫だから、いい子で寝てろ」  ポンポンと頭を撫でられる。びっくりして何も言えずにいる内に、リュカの姿は扉の向こうに消えてしまった。  完全に子供扱いされていた。僕としてはもう少しで成人だし、殆ど大人の気分なんだけどな。それでも3つ上のリュカから見たら、僕は子供なんだろうか。優しくされるのは嫌じゃなかった。頭を撫でられるのも。リュカから貰えるスキンシップならどんなものでも嬉しい。けど、今隣にリュカがいない。その事実が、嬉しいって気持ちを打ち消して余りある程寂しい。行って欲しくなかった。女の人の所へなんて。  はあ。言われた通り、いい子で寝よう。リュカにされたポンポンでも思い出しながら。…………寝れない。  リュカ、溜まってたのかな。今ごろ女の人と飲んでたりするんだろうか。そしてその後は…………。  むくり。想像したら、僕のも少し勃ってきた。そう言えば僕もここへ来てから一度も出してなかった。溜めすぎは身体によくないって聞いたし、出しておこう。  前を寛げて、やんわりと芯を持ったものを握りこむ。上下にしごくと、直ぐにそれはピンと上を向いてカチカチになった。 「ふ……うっ、」  これはきっと早い。あっという間に出そうだ。しゅっしゅっと手を上下させる度に訪れる昂りに身を委ねるように目を閉じた。いつもする時みたいに女の人の裸でも想像しよう。そう思っていたのに、瞼の裏に浮かんできたのは薄桃色だった。どうして、と動きを止めかけたけれど、僕の想像は止めどなく溢れてきて、それが凄くえっちなものだったから、結局止まりかけた手の動きを早める結果になった。  リュカが、顔の見えない誰かを抱いている。僕が想像しているのは、その相手ではなくてリュカだった。腰を振って、今の僕と同じように気持ちよくなっているリュカの美しい顔が快楽に歪む様を想像した。その時の甘い声や吐息を想像した。きゅっと閉じられた瞼。震える睫毛。潜めた眉。結び目が緩んで赤い粘膜を覗かせる小さな唇。  リュカの相手はいつの間にか僕に成り変わり、僕は前髪を下ろしたリュカをベッドに縫い付けていた。僕が腰を振る度、リュカが矯声を漏らす。枕に散らばった薄桃色の髪を振り乱し、気持ちいいと涙目で僕に縋りつく。腰の動きが早まる。このままリュカの中に、リュカの一番奥深くに射精したい。そう思った瞬間、目の前が弾けた。パタパタとお腹の上に生暖かいものが降ってくる。奥の奥から全部搾り取られるみたいに何度も何度も迸った。  こんなに強い快感を味わったのは初めてで、長かった射精を終えた後も腰から下がじんじん痺れていて気だるくて、暫くは爪先さえも動かせないくらいだった。  僕はどうしちゃったんだろう。頭の中で、とは言え勝手にリュカを汚してしまった事に罪悪感を覚える。と同時に甘い気持ちも押し寄せてくる。これはなんだ。どうしてあの時にリュカの事を考えてしまったのだろう。どうしてこんなに気持ちよかったんだろう……。

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