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世界が灰に染まった日 6
「ん……っ」
うんざりするくらいしつこく舐めたり噛んだりこねくり回され続け、いい加減そこがジンジンしてきた時だ。先っぽを甘噛みされた拍子にビリッと電気が流れたみたいに刺激が走って、下腹部がズクンとなった。
「やっといい声が出てきたな」
「ひ、や、ア、や、だ……ぁっ」
ちうっと吸われたり、舌や指で弾かれたり、爪や歯を立てられたり。その度に変な感覚が走る様になって、俺はなんとかその感覚から逃れたくて身を捩った。いつの間にか片手で一纏めに拘束されていた腕はぴくりとも動かせず、大きな身体の下敷きにされた身体を捩らせた所で大した抵抗にはならない。
「気持ちいいだろう?」
「や、んん……ちが、っ」
「どこが違う?」
「あ……っ!」
徐に男の手が下半身に伸びた。
「勃ってるぞ」
「そ……それは……っ!」
指摘された途端、火がついたみたいに顔が熱くなった。恥ずかし過ぎる。何で今こんな風に……。
「可愛いな、リュカ」
「ち、ぁっ、……んむぅ……っ」
違うってまた否定しようとした唇を塞がれながら、掴まれたものをズボンの上から撫で擦られる。胸を弄られていた時の比でない直接的な刺激に思わず腰が浮いてしまう。同時に生温くて分厚い舌が口の中に入ってきて、無防備にくたりとしていた舌を絡め取られた。逃げても狭い口内は俺の舌と男の舌でぎゅうぎゅうだからすぐに捕まってしまう。
「ふ、む、んん、ぐ、んぅ……」
下半身の刺激にも気を取られ、いつ息を吸って、どのタイミングで吐き出せばいいか分からなくなった。自分の涎に加えて男のそれも口の中に止めどなく流れ込んできて、それを飲み込むこともできなくて口の端からダラダラ溢れていく。うう、溺れる……。
永遠に感じられる様な時間が経って漸く解放されて思いっきり息を吸ったら、喉に涎が流れ込んできた。
「けほっ、う……けほっ、うえ……」
「……リュカ、お前まさか息を止めてたのか?」
涙目で咳き込む俺を見下ろし男が呆れた声で言う。誰のせいだ。
「だって、お前が、さわるし、口の中もいっぱいに、するから……」
まだ呼吸が整わない中答えると、男がゲラゲラ笑いだした。
「本当にガキなんだな」
ガキと言われてむっとする俺に、男は尚も笑いながら言った。
「口が使えなきゃ鼻で息をすりゃあいい」
さあほら実践だ。言われてギクリとした時にはもう既に顎を掴まれていて、数センチの距離まで男の顔が下りてきていた。
「んん……っ」
「息を止めるな。……ほら、吸って、吐いて」
口の中をかき回す舌を時々引っ込めて、器用に男が喋る。言われた通りに息を吸ってみる。驚いた事に普通に吸えたし吐けた。けど、よく考えたら当たり前の事だ。口でできなきゃ鼻ですればいい。そもそも普段から鼻呼吸がメインの筈だ。そんな当たり前の事が意識しないとできなくなるくらい、俺はこの男に翻弄されている。悔しいけれどそういう事だ。
「出来たな。じゃあこっちも追加だ」
「んんん……っ!」
男の手がズボンの履き口からするりと中に入ってきて、半勃ちの中心を直接握り込んだ。そのまま上下にこすこすとしごかれては、あまりに強い刺激に悲鳴が上がった。その悲鳴は全部男の口内へと吸い込まれて消えてしまったけれど。
性的な衝動と共に勃起する様になったのは少し前からだ。けど、暫く放っておけばだんだん治まるから、いつもなんとか気を紛らわせながら落ち着かせていた。そうなった時のそこの敏感さに、もしかしたら弄ると気持ちいいかもしれないって予感まではあった。けど、実際に弄った事はまだない。家にはいつもニナがいるし……というのは表向きの理由で、一番の理由は怖かったからだ。そこを触ったら、知ってしまったら、自分の事を性的な目で見てくる大人たちと同類の存在になってしまう気がして。
「やだっ、も、やめてくれッ……!」
「なんで?気持ちいいだろ?」
「や、だめッ、だからっ……!」
「だめじゃない。素直に快感に身を委ねればいい」
解放された唇で懇願するも、男はニヤニヤするだけで全く手を止めてくれない。自分の意思とは関係なく、身体がどんどん昂っていくのが分かる。こんなのまだ知りたくなかったのに。
「は、あ、ぁあっ、や……ふむ、んん、あっ」
「可愛いな、お前の声。もっと聞かせろ」
はあはあ開きぱなしの口から意味不明な声が漏れ出て、恥ずかしくて手の甲を噛んだ。けどすぐに男にその手を引き剥がされ、簡単にシーツに縫い付けられてしまう。キスをされない代わりに、男の舌は俺の胸の突起を舐め始めた。力が入らなくて何も抵抗できない。下肢には変に力が入っているのに、どういう訳かガクガク震えてしまって言うことをきかない。口からは変な声が漏れ続ける。
同じ速度で上下にしごいていた男の手が、突然先っぽを握り締めた。そうかと思えばそのままくるくると手首を回して先端を撫で擦り始めた。
「ひ、やぁああっ……!」
「気持ちいいか、リュカ」
気持ちいいなんてものじゃない。敏感な所の更に敏感過ぎる部分をピンポイントに責められてあられもない悲鳴が出た。弾かれた様に無茶苦茶に暴れる手足は例の如くあっと言う間に押さえ付けられてしまい、耳元で熱い吐息に囁かれる。
「我慢しないでイっていいんだぜ」
それが合図だった。あ、の形に口を開いたまま息が詰まって声が出ない。腰が持ち上がって、尻の穴がきゅうっと狭まる。爪先まで力が入って、ぎゅっと足の指が曲がる。次の瞬間、全ての力が解放されるみたいにビクンビクンと身体が痙攣した。
「あ、あ、あ……」
さっきまでが嘘みたいに全身の力が抜けて、浮いていた腰も、丸まっていた爪先も全部くったりとシーツに落ちた。力が入りすぎた反動か、全力疾走した後みたいに筋肉がガクガクしている。
「精通前のガキがなんて色気だ……」
男が切羽詰まった声で何か呟いた。気だるくて頭すら動かしたくないから目線だけ向けると、男は何かを振り払う様に首を振っていた。
「勝手にひとりで気持ちよくなりやがって」
向けられたのはさっきの声色とは正反対の余裕ぶった顔。それにしてもその言われようは心外だ。勝手に触って勝手にこんな風にした癖に。恨み言を言われる筋合いはない。
「さっさと突っ込めって、言った」
「……そうだったな」
ふっと自嘲する様に笑って男は下半身を寛げ始めた。突っ込めば終わる。つまり、この最悪な時間はもうすぐ終わりだ。突っ込めば───。
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