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世界が灰に染まった日 7

「──って、それ……」  男が取り出したブツを見て、俺は言葉を失った。俺のの、倍以上ある。太さも、長さも。 「ンなの入るかよっ!」  無理無理無理。絶対にムリ。想像するだけで痛い。ケツ壊れる。 「入れないと終わらねえぞ」 「けど……!」 「いきなり突っ込んだりはしねえさ。ちゃんと慣らしてやる」  慣らすって何。俺の穴をあのサイズに広げる気か。と言うか、広がるのか。万が一広がったとして、そうしたらその後の日常生活に困るのでは……。  あれこれ考えたけど、選択権が俺にない以上、突っ込む気満々の目の前の男に従うしかないのだ。 「もっと足開け」  当然の様に下半身裸に剥かれた俺は、男に従いベッドの上で死んだカエルみたいに股をおっぴろげている。今を一刻も早く終えるために、生きるために、羞恥心はかなぐり捨てた。 「そうだ。しっかり抱えとけよ」  言われた通り、脛を両腕で外側に押し広げるように抱えて。 「っ……!」  冷たい液体を股の間に垂らされ、びくっとなった。それを尻の穴に擦り付けられ、さっきとは違う意味でまたびくっとなる。 「ちんこもケツの穴もツルツルじゃねえか。っんとにガキだな」 「うるせえ。もうちょっとしたらボーボーになんだから」  自分でも見たことのない尻の穴を他人に見られながら触られてるっていう状況は、客観視すると死にたくなる。だから、敢えて軽口を叩いて平気なフリをして自分で自分を誤魔化した。そうか、とくつくつ喉の奥で笑う男が、その指に潤滑油をたっぷり絡ませて穴の入り口をグイグイ押してくる。つぷり、と中に入ってくる感覚があった。 「う……うぅ……」 「狭いな。痛くねえか?」 「……痛くは、ねえけど……」 「けど?」 「クソ出る時みたいで気持ちわりい……」  色気ねえなぁ、と男が肩を揺らした。笑うと身体が揺れて、俺の中に入ってる指もちょっと動くからやめてほしい。 「もっと奥まで入れるぞ」 「まだ、あんのかよ……」 「まだ爪の先っぽしか入ってねえぞ」  信じられなかった。そんな少ししか入ってないなんて。こんなに違和感やばいのに。 「ぐ、う、う……」  ゆっくり侵入してくるものを身体が全力で拒んでいるのがわかる。だって当然だろ。そこは出口であって入り口じゃない。何かを入れる様な構造になってないんだから。 「も、ムリだ……っ、かんべんしてくれ……」 「何言ってやがる。まだ指1本も入ってねえんだぞ。さっさと突っ込んで欲しかったんじゃねえのか?」 「はいらねえよ、もう……」  煽られてもやり返す余裕なんてどこにもなくて、泣き言みたくなってしまった。男がまた笑う。 「入るっての。ほら、裂かれたくなかったら息吐いて力を抜け」  どう言ってもやめてくれる気は更々ないらしい。ならせめて裂かれるのだけはごめんだ。男の言う通りに無理にでも息を吐いて力を抜こうとしてみる。 「そうそう、上手だ。そのままゆっくり呼吸してろ」 「うう……」 「半分入ったぞ。もう少しだ」 「くうう……」  俺は今何をしてるんだろう。とても、性行為をしているとは思えない。それこそ色気のイもない。なのに、嫌でも視界に入ってくる露出した男のブツはさっきと変わらない形を保っている……どころかさっきより大きくなってないか。マジかよ。どこに興奮する要素があるんだよ。あのでかさは本当にやばい。あんなの入れられたら絶対壊れる。 「入ったぜ……」  男がふうっと息をついた。どうやら指が全部中に入ったらしい。違和感は相変わらずだけど、入ってしまえばあるのは入り口の違和感ぐらいで、爪の先っぽを入れられてた時と大差ない。 「うあっ!う、うご、かすなッ」  そのままじっとしていてくれ。そう思った矢先、男の指が出たり入ったりし出した。完全に出さないギリギリまで引いて、奥まで押し込んでの連続だ。 「どうだ?」 「う、あっ、あ、うう……」  どうって何だ。動かすなって言ってるだろ。そう思うのに言葉にならない。 「気持ちいいか?」 「う、ぐ……んな、わけ、ッ……」  そんな訳ないだろ。こっちは気持ち悪さしかないっていうのに、男の呼吸がはあはあ煩いし視線が粘っこい。ただ指を動かしてるだけで息が切れる筈ないから、欲情しているのだろう。さっきも同じこと思ったけど、この行為のどこに興奮する要素があるんだよ。 「ここはどうだ?」 「ぐ、う……、べ、つに……」  男が中に入れた指を曲げる様にして、さっきから一点をぐいぐい押している。出し入れされるより違和感はましだけど、それだけだ。 「そうか。ここは前立腺。男が気持ちよくなる場所その一だ」 「な、んだ、それ。その二、も、あんのかよ……」 「知りたいか?」 「べつ、に……」 「あとで実践で教えてやる」  男がニヤリと唇の端を持ち上げた。実践はもううんざりだし知りたくもない。どうしても教えたきゃ口で言え。 「指もう1本増やすからな」  無情な宣告と共に入り口にもう1本指があてがわれた。無理、と身を捩ってみたものの、聞き入れてくれる筈もなかった。その後の抵抗も泣き言も虚しく、結局中の指は3本にまで増やされた。 「うぐっ……ああ、ううう……」  男の太い指3本と言ったら、相当な太さだ。自分の穴が今それを受け入れている事が信じられないし驚きだ。男が意外にもかなり時間をかけて丁寧に解しているお陰なのかもしれない。男は中を探りながら度々「気持ちいいか?」と聞いてきたけど、尻の中を弄られても違和感と苦痛以外の何も感じない。「その一」の場所はどうやら俺には当てはまらなかったらしい。

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