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転機 2

「妹さんがいたから、リュカは僕を甘やかすの上手なんだね」 「甘やか……してるか?」 「うん、凄く。今だって、僕を寝かしつけようとしてくれてるし」 「……にしてはお前、全然眠れそうにないな」 「だって……」  あ、この話題はまずいかも……。思った時だ。リュカの手が、僕の腰をつつ、と撫でた。 「わ……な、に……」 「あんな気晴らしは子供騙しだったか?」  首のすぐ後ろ。さっきまでよりも確実に近い位置でリュカが囁いた。ギクッとして身体が硬直する。そうしている内に、リュカの手がするっと下腹部に回って、まだやんわりと主張し続けていた前を掠めるように撫でた。 「あ……」 「俺が気付いてないと思った?」  バレた。いや、バレてた。どうしようと恥ずかしいが頭の中で交互にぐるぐる回る。 「溜まってんだろ」 「そ、そそ、そんなこと、」 「お前、いつも俺のこと物欲しそうな目で見てるよな」 「な……」  絶句した。まさかそんな所までバレてたとは……。けど、思い当たる節がないとはとても言えない。勘のいいリュカならすぐに気づきそうな行動をいくつもとっていた自覚はある。 「ごめんっリュカ!僕は……僕は、君のことっ、」  覚悟はまだ全然決まっていなかったし、まさかこんな風に告げることになるなんて欠片も想定していなかったけれど、もう本当の気持ちを打ち明けるしかないと思った。どんな反応が返ってくるのか怖いけど、せめて、下心だけでリュカを見ているわけじゃないって分かって欲しくて。けど、最後まで言い切る前に、リュカの手にやんわりと口を塞がれた。 「仕方ねえよ。多感な時期に毎日野郎の顔しか見れねえんだから。お前には申し訳ないって、これでも少しは思ってるんだぜ」 「リュカ、」 「抜いてやろうか」 「え……」 「目閉じて、女にされてるのでも想像してろ」  リュカの手が、さっきよりも意志を持って僕の前に触れた。ズボンの上から優しく撫でられて、何よりもリュカにそうされているという事実に興奮してあっという間に大きくなってしまう。  そこは本能に忠実な反応を見せた一方で僕の頭は混乱していた。こんなの違う。僕が望んでいたのはこんなんじゃ……。 「リュカっ、だ、め……こんな、の……」  僕のが大きくなってすぐ、リュカの手はズボンの中に入ってきて直接そこを握ってきた。初めて、自分の手じゃないものに触られて、そのあまりの気持ちよさに愕然とした。リュカの長くて白い器用な指がばらばらに動いて、僕の亀頭を撫で擦る。カリ首の部分に引っ掛ける様に握った手を上下させる。あのリュカが僕を……。  一人でするときの何倍も気持ち良い。リュカも、自分を慰める時こんな風に自分に触るのかな。そして、こんな力加減で握って、こんな風に動かして、時々こうやって亀頭を虐めたりもするのだろうか。リュカはどこが一番感じるんだろう。裏筋?それとも先っぽ?  リュカの声が聞きたいのに、リュカは一言も発してくれない。「女の人を想像してろ」なんて言っていたから、自分の存在を消しているつもりなのかもしれない。けど、そんな思惑いざ知らず、僕の頭の中はリュカでいっぱいだった。リュカに手淫されながら、僕も頭の中でリュカをそうしていた。リュカにこんなことをさせていることに背徳感と罪悪感とそれを上回る情欲が内から湧き出てきて止まらない。

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