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君がすき 1
「リュ、カ……ぼく、も……だめっ、でるっ!」
自分でするときの半分にも満たない時間で、僕はあっという間に達した。察したリュカが掌で覆ってくれた中に、2度、3度と精液を飛ばす。精嚢が空っぽになったんじゃないかってくらいの凄い量が出たのに、汚れてない方の手で最後にもう一度絞り出すように扱かれたら、奥の奥にあったらしい残渣がまだトロリと出てきた。
「すげ……」
ずっと黙ってたリュカが漸く口を開いた。というよりも思わず感嘆したと言ったほうが正しい。
「ご、ごめん、リュカ、汚しちゃったよね……」
リュカの片手じゃ収まらない量だったに違いない。溜まっていたのもそうだし、何よりも気持ちよすぎて……。
「ちょっとそこの布、とってくれよ」
「う、うん」
リュカがよくナイフを磨いているぼろ布を渡すと、リュカは身体を起こしてそれで自分の手と汚したであろう布団を拭った。
「ねえ、リュカ、ごめんね」
「何が」
「こんなこと、させて……」
「別に。俺がしたことだ」
でも、と言いかけて自分で首を振った。リュカが気にしてないって言っているのにしつこく謝るのは違うって思って。
「あのね、すごく気持ちよかった。ありがとう」
言うと、漸くリュカがこっちに目を向けてくれた。
「眠れそうか?」
「うん、ぐっすりと」
「そうか」
「けどね……」
「うん?」
「リュカは?」
「……?」
「リュカのも、したい」
「は?」
「僕ばっかりじゃ不公平だよ。だから、リュカにも僕がしてあげたい」
「俺はいい」
「けど」
「俺はお前と違って溜まってねえから」
がつんと、ハンマーで横から殴られた。そう思うくらいショックだった。知ってたよ。リュカが女の人やシダと寝てるって。けど、今それを言うのは酷い───。
「な……」
リュカのこんなに驚いた顔は初めて見た。───僕は今、完全に油断していたリュカの身体を難なく押し倒して、その腰の上に乗っかっている。
目を見開くリュカの唇に、勢いで自分の唇を押し付けた。リュカも僕も、目を開けたままの、甘さもロマンチックさも何もないキス。これが僕のファーストキスだった。
「なにしてんだ……」
顔を上げた僕に、呆然とリュカが問う。
「キスだよ」
「なんで」
「すきだから。僕はリュカがすきなんだ」
再び、リュカの目が見開かれた。その唇に何度も何度もキスを落とす。ただただ唇を押し付けるだけの拙いそれを続けていたら、ふいにリュカの唇が僕の上唇を優しく啄んだ。びっくりして頭を上げる。リュカはいたずらっ子の顔で口の端を上げていた。
「お前さ、女抱いたことねえんだろ?」
「う……うん、ないけど……」
「じゃあやめとけ」
「え……」
「さっきのは忘れてやるから」
「え、ま、待って!忘れるってどっち?僕が言ったこと?それともしたこと?」
「どっちもだ」
「ダメだよ!忘れないで!キスは……嫌だったなら忘れてくれてもいいけど、好きだって言った事は忘れられたら困る」
「…………」
リュカは何も言わずに僕から視線を外した。もうこのやり取りを終わりにしたいのかもしれない。けどこれは僕にとってすごくすごく大事な事だから。
「リュカ、すき」
しつこいと思われてもいい。それが僕がリュカにキスした理由で、リュカが傍にいるとドキドキしてしまう理由で、リュカに触れたくなってしまう理由だってことを、ちゃんと知っていてほしい。
背けられた白い頬を眺めながらじっと返事を待っていると、リュカがため息をついた。
「お前、そもそもそっちなの?」
「そっち?」
「男が好きなのか?」
「ううん、男が……じゃなくて、リュカがすきなんだ」
「じゃあお前のそれは勘違いだ」
「え……」
「今のお前には俺しか頼れる相手がいないから。だから、それを好きって勘違いしてんのさ」
「ちがう!そんなんじゃないよっ」
「だから、そう思い込んでるだけだって、」
「ちがうよ!いくら僕だって勘違いでキスしたりしない。それに僕は、できるならリュカとそれ以上のこともしたいって思ってるんだから」
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