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君がすき 3

「リュカ、したい……」  いつの間にかそう口走っていた。ふ、と息を吐いたリュカが僕の腰を撫でる。 「後悔すんなよ」  まだそんな事言ってる。リュカの言ってる意味で後悔なんてする筈ないのに。リュカが身体を屈めて僕の首筋に顔を埋めた。首筋にちゅ、とキスを落とされる。 「ねえリュカ」 「ん」  上目遣いに僕を見上げてリュカが首を傾げた。ちょうどお風呂に入った日だったから、薄桃色の前髪がさらさらと額の上を流れた。 「僕が、抱いてもいい?」  そんなに意外だったのだろうか。リュカが珍しいほどにきょとんとした。その顔が普段よりも幼げに見えて、堪らないと思った。可愛くて仕方がない。 「僕、初めてだから」  ずるい言い方をした自覚はある。けど、リュカを抱きたいという気持ちは譲れなかった。リュカがどうしても受け入れる側が嫌で抱かれるぐらいならしたくないと言うなら、リュカと身体を合わせる手段として自分が抱かれてもいいとは思っているけれど。 「抱かれるより抱くほうが、まだマシか」 「そういう意味じゃないよ」 「いいぜ。お前の好きにして」  微笑みかけられて胸がどきりと跳ねる。なんとか落ち着き払って腕を伸ばすと、リュカが身体を屈めてくれた。抱きしめて、身体をくるんと回転させる。リュカが、下から僕を見上げている。勢いなんかじゃなくて、意志を持って今僕はリュカの上に乗っている。これから、リュカを抱くんだ……。 「お前ほんと、でかくなったよな。同じもん食ってんのにさ」  下から見上げながら恨めしそうに言うリュカが可愛くて、その不満げに尖らせた唇に誘われる様に腰を屈める。さっき知ったやり方でちゅ、ちゅと唇を啄んだら、何度目かにリュカも同じ様に僕の唇を啄んでくれた。受け入れて貰っていることが嬉しくて可愛くて愛おしくて、さっきしたみたいに深く唇を合わせた。  探り当てたリュカの柔らかい舌をちうちう吸って堪能していたら、リュカの指が僕のさらさらと流れる髪に触れて、そっと耳にかけ直してくれた。さっきから、何度耳にかけても落ちてくるのだ。さらさらのストレートヘアは他人によく褒められるし、僕自身も気に入ってはいるけれど、今だけは本気で鬱陶しい。髪、結んでおけばよかったな。  口付けの角度を変えようと顔を逸らした瞬間、また髪がさらさら落ちて、リュカの指に掻き上げられた。リュカも僕の髪、鬱陶しいと思っていたりして……。確かめる様に薄目を開けると、リュカの目蓋もうっすらと開いていた。じっと僕の事を見ている。  目が合った瞬間、恥ずかしさにぼっと頬が熱を持って、キスどころじゃなくなってしまった。まさか、最中ずっと見ていたのだろうか。僕、多分、かなり鼻の下を伸ばしただらしない顔でキスに没頭してたと思うんだけど……。  あたふたしていたら、リュカの目がふっと細められた。首の後ろに両腕が巻き付く。まるでキスをねだるみたいに───。  リュカの手が僕の後ろ頭に回って髪を搔き乱す。もう既にキスを再開して、僕の舌はリュカの中だけれど、「もっと」って言われている様な気がして、僕は無我夢中でリュカの咥内を犯した。  ん、とか、は、とか。時おり漏れる鼻に掛かったリュカの声を聞く度に、僕の理性というものが脳みそから溶けて流れ出していく。何の技巧もなくただ舐め回すことしか知らないキスを続けながらリュカの服を捲り上げた。初めて触れるリュカの素肌は、これが男の肌なのかと驚くくらい柔らかくて吸い付く様だ。撫でると滑らかですべすべしている。  キスもしていたいし、リュカの身体も見たい。けどどっちも同時にはできない。

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