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君がすき 7

「まだ準備終わってねえけど……」  リュカが何の事を言っているのか分からなかった。与えられる快感が強烈過ぎて、リュカがえっちすぎて、視野が極端に狭くなっていた様だ。少し余裕を取り戻した今になってようやく、リュカが腕を自分の後ろに回してずっと何かしていたことに気が付いた。シーツの上には空の小瓶が転がっている。リュカがナイフの手入れによく使っているものだ。 「女のみたいに濡れないし、柔軟でもねえから」  僕の視線に答える様にリュカがそう言った。それでも僕には何のことか分からない。 「ま、なんとかなるか」  後ろに回っていた手が戻されて、誘うように僕の腕を引く。その指先は油っぽくぬるんとしていた。  仰向けに転がったリュカの股の間に腰を据える。女性とどうやるかは学んで知っていたけど、男同士のやり方は教えて貰ったことがなかった。けど、リュカのリードと本能で察しはついた。リュカが何をしていたのかも、ようやく理解した。  僕は今からリュカとひとつになる……。  目の前がチカチカする程興奮していた。リュカに何か声を掛けないとって思うのに、興奮のあまりうまくしゃべれないどころか呼吸すら思うようにできない。    リュカの膝の裏を掴んでぐっと向こうに押しやる。痛いほど勃起したペニスの先を当てがったリュカの受け入れる場所は小さくて狭そうで、本当に僕のが入るのか心配だ。 「大丈夫、だから……」 「う、うん。入れる、ね」  僕の戸惑いを察したのだろうリュカに言われて、腰を進めた。やっぱりそこは想像以上に狭かったけど、くぷりと亀頭を埋めたが最後、止めるなんて選択肢は僕の中から消えていった。リュカが眉間に皺を寄せてふー、と口から息を吐く。そのタイミングを見計らって、僕のペニスをリュカの中へ押し込んでいく。ずぶずぶと埋まるペニスが温かい粘膜に包まれていって堪らなく気持ちがいい。  ある程度進めると、こつんと壁に当たって、リュカが息を詰めた。ここがリュカの最奥なんだ……。僕のペニスは全部は収まっていないけれど、それでも十分すぎるほどの快感が背骨を駆け上る。  ふー、と一旦息をついて早鐘を打ち続ける心臓を落ち着かせた。さっき、リュカに舐めて貰った時に一番だと感じたすべての快感の記録がここで更新されていく。セックスって、こんなに気持ちいいんだ……。 「も、動いて、いいぜ」  リュカが腰を揺らして僕を促した。誘われるがままに腰を動かす。ゆるゆると抜き差しするだけでさっき更新したばかりの記録を再び更新する快楽が腰から脳まで突き抜けて、はあはあと獣の様に息を荒げて夢中で腰を振った。リュカが、あ、とか、う、って時折色っぽい声を上げるものだから堪らなくなって、我慢が効かなくなる。そして、両手の指で数えられるほどの回数抜き差ししただけで、あっという間に射精してしまった。 「ごめん……」  リュカはびっくりしたみたいに目を瞠っていたけれど、すぐに薄く笑って大丈夫、と首を振った。僕のごめんに、射精したことと、もう一つ別の意味が含まれていることには気づく由もなく。 「あ……?」  再び揺さぶると、リュカがまた目を瞠った。 「ごめん、まだ治まりそうになくって……」 「お前も、かよ……っ」  お前「も」って誰と比べてるんだよ。カッと頭に血が上ってさっきよりも激しく腰を振ると、リュカの声が高くなった。このぐらい強くやっても大丈夫なんだ。新たに学んで抜き差しを再開すると、一か所、リュカの反応が明らかに変わる場所を見つけた。そこを突くとびくびくとお腹を震わせ、一層いやらしい声を上げる。 「リュカ、ここ、気持ちいいの……?」 「んっ……ルーシュ……い、い……」  リュカに名前を呼んでもらえたことが嬉しくて、素直に僕に与えられる快感に身を委ねてくれるリュカが可愛くて堪らなくて、僕は背中を屈めてリュカの頬に唇を押し付けた。本当は唇にキスをしたかったけど、そうしたら可愛い声が聴けなくなると思って。

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