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君がすき 8

「リュカ、すき」  頬をすり寄せて言うと、リュカの両腕が首の後ろに回ってきた。すき、を返してもらった訳じゃないけど、受け入れて貰えた気になって嬉しくなった。 「すき。すき。リュカ、すきだよ」  もう僕は一生リュカだけを抱き続ける。誰がなんと言おうと、僕の相手は生涯リュカただ一人だ。一生愛して、一生大事にする。そう決めた。  夢中で腰を振っている内に、いつの間にかリュカの中に僕のペニスが全部埋まっていた。初めはくったりとしていたリュカの性器もピンと上を向いていて、先っぽの穴からとろとろ透明の先走りが糸を引いていて最高にいやらしい。 「う、あっ、あ、ルー、シュ……っ」  リュカが切ない声を上げながら涙を溜めた瞳で僕を見上げてくる。普段は全然呼んでくれないくせに、こんな時ばかり名前を呼んでくるのはずるい。もう既にこんなにリュカの虜になっているのに、もっともっとリュカが欲しくて堪らなくなってしまう。 「んっ、あ、だめっ、も……あっ、あ、アッ」  奥を強く抉った瞬間、リュカの足が宙を掻いた。お腹を痙攣させながらびゅくびゅくと精液を放ついやらしい姿にやられて、僕も再びリュカの中で果ててしまった。    今日だけで計三回吐精していたけれど、僕のそこはまだ治まることを知らなかった。その後も一晩中、何度交わったか数えきれないだけ抱き合って、リュカは気を失うように先に眠ってしまった。べとべとのぐちゃぐちゃになった身体を適当に拭いてそのままリュカの隣で僕も目を閉じた。明日の朝になったら、またリュカに好きだと告げよう。順番を間違えてしまったけれど、僕のこの気持ちはきっと伝わる。そう思っていた。 * 「起きたか」 「おはようリュカ。あのね、」 「昨日の事なら、あんま気にすんなよ」  昼過ぎまで寝てしまっていた僕よりも先に起きていたリュカに、開口一番この気持ちを伝えようと思っていた。昨夜も沢山言ったけど、欲に呑まれていない素面の状態でちゃんと伝えるべきだから。それなのに、リュカは僕を一蹴しただけで実に軽い調子で言った。 「まあけど、すっきりはしただろ?」  リュカが軽薄な笑みを浮かべる。昨夜の事は、僕にとってそんな風に簡単な言葉で終わらせられる様なものじゃないのに。 「僕はリュカを抱けて幸せだったよ」  すっきりしたとかじゃない。そういう目的でリュカを抱いたんじゃない。それだけは分かって欲しかった。それなのに。 「ふーん。じゃあまた溜まってたら相手してやろうか」  言葉を失った。急速に目の前が色褪せていく様な気がした。リュカと身体を合わせて、気持ちが通じ合った気がしていたのは嘘だったのか。昨夜の出来事はリュカにとっては何てことない事だったの?街で女の人を抱くのと、シダに抱かれるのと大差ない事だったの?あんなに沢山僕の名前を呼んでくれたのに。気持ちいいって、僕の首に腕を回してくれたのに。頬をすり合わせて微笑んでくれたのに。それなのに、リュカにとって僕との一夜はその他大勢とするのと何ら変わりない事だったって言うの。そんなのあんまりだ……。 「僕はそういうつもりじゃ……」  辛うじて紡いだ言葉はあまりに薄っぺらかった。 「お前にその気がないってんならこれっきりでいいさ」  気づけば爪が食い込むくらいぎゅうっと拳を握っていた。リュカの一言一言が心に刺さって、力を抜いたら今にもへたり込んでしまいそうだった。 「んな顔すんなよ。別に出てけとか言うつもりはねえから」  リュカってこんなに鈍感な人だっただろうか。わざとかと思うくらいあさっての事を言って、僕の気持ちを無視してくる。こんな仕打ちないよ。僕はただ、リュカを好きなだけなのに。

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