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第3話

 くちゅ、くちゅ、と生温いローションが何度も水音を立てる。ハルの指が入って、僕の前立腺を擦って、出ていくのがわかる。 「あっ……は、ぁ……」  僕はこれで何度目かの快楽をやり過ごしていく。僕の先端からはとめどなく先走りが溢れていて、好きな人じゃなくても行為はできることを再確認させてくれた。 「あっ、あ、ハル……っ、イかせて……っ」  腕を伸ばして、ハルに縋る。ハルの指の動きは気持ちいいけれど、イくには足りない。僕の懇願にハルは気をよくしたらしい。なごむによく似た目で柔らかく笑った。 「いいよ」  そう言うと、ハルは僕の前立腺を内壁越しにとん、とん、と叩いてくれる。 「ぁっ、あ、……ああっ、んぁぁっ」  突然僕のからだはびくりと震えて、きゅぅとハルの指をきつく咥えた。僕は慌てて両腕で顔を覆う。イくときの顔を、僕はまだハルに見せたことはない。涙を浮かべて、涎も垂らしただらしない顔を見せたくなかった。それにイくときだけは、そこにいるのはハルではなくてなごむであって欲しかった。 「気持ちよかった?」  自明のことをききながら、まだひくひくと痙攣する後孔からハルは指を抜いて代わりにスキンを開封した。  ハルは僕の脚を掴むと、大きく広げる。膝頭が僕の肩に着きそうになる。この恰好はハルの位置からだと全部丸見えだ。 「挿れるよ」  一言そう言われて、さっきの余韻に浸っていた僕のからだの中にハルが割って入ってくる。 「あっ、んんっ」  この瞬間だけは慣れない。ぎゅっと目を閉じて、シーツを掴む。お腹が壊れそうだ。僕の目に涙が浮かぶ。脳裏をなごむが過ぎる。涙がいっぱいになった。でもからだは相変わらずハルが侵食していく。ずぶずぶと挿ってくる。終わりがない、とまで思ってしまう。 「……はぁ、全部、挿った」  頭上から降ってくるハルの言葉で、その事実を知った。一年前は全然挿らなかった。僕のからだは変わっていっている。でも受け入れたくないので、僕はまだ目を瞑っている。  そうすると、ハルが何かに気付いたらしい。「先輩」と僕の目元を拭った。 「泣いてるの?」  柔らかな声だ。音楽科のハルは声まできれいだ。これがなごむの声だったらいいのに。  なごむに「まどか、泣いているの?」と言われたい。なごむは言うだろうか。なごむはちょっと鈍感だから、先にそっと僕が涙を拭ってしまえば気付かないかもしれない。だからきっと、 「泣いてない」  そう言えばなごむは誤魔化せる。  ハルは「嘘吐き」と言うけれど。

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