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夜鶯の見る夢①

 目が覚めた。  目覚ましはタイムリミットぎりぎりの一〇時にセットしていたのだが、まだ鳴ってはいないようだ。カーテンを開けたまま寝てしまっていたので、外が少し明るくなっているのがわかった。窓の方を向いて寝ていたので、光で目が覚めてしまったのだろう。  もう少し眠れるよな。  そう思って、反対側を向く。と、そこに、軽い寝息立てて幸せそうに眠っているルースがいた。  ちょ、おま!?  なんでここにいるんだよ……  ルースを叩き起こそうとして、しかし、やめた。  少しずれた羽毛布団から、ルースの白い肩が見えている。服が白いレースの、たぶんネグリジェだろうものに変わっていた。  どこで着替えたんだよ。というか、透け透けかよ。  男のくせに、似合いすぎていて面白くない。心の中で苦笑しつつ、少しはだけたルースの白い肩に布団を掛けてあげた。そして、ゆっくりと窓の方を向き、目を閉じる。  んっふ  なんとも悩まし気な声がして、背中に温もりを感じた。ルースの匂いが鼻をかすめる。  ルースが何を考えているのか全然解らない。  宮様が泣いた理由も全然解らない。  全く……女性の心が解らないとは思っていたが、男の心も分からないとは。  そんなことを考えつつも、かなり疲れていたのだろうか、俺はほどなく二度目の眠りに落ちてしまった。 ※ ※  ぴ、ぴ、ぴ、ぴ、ぴ  目覚ましの音で目が覚めた。さすがに朝は寒い。もう少し布団の中にいたかったが、今日は大学に行かなければならない。その後はバイト先にもいかなきゃな。  隣にもう、ルースはいなかった。いつのまにか布団に入ってきて、いつのまにか出ていったとは……何してんだか、まったく。  のろのろと体を起こす。そして気付いた。  俺、なにも着てねー!  そういや昨日、風呂から直行で寝たんだった。いくら疲れてたとはいえ、シャツとパンツくらいは履いておけばよかった。  横でルースが寝ていたことを思い出し、頭が痛くなる。  アイヤー、恥ずかしいアルヨ。  ……まあ、男同士だし、いっか……いや……よくないよな……  寒い寒いとつぶやきながら、ベッド脇のクローゼットから服装一式を取り出す。下着を着用。デニムのパンツと長袖を取り出し、素早く着る。そしてジャケットを手に取ると、寝室を出た。 「やあ、おはよう」 「うわっ」  ダイニングテーブルでルースがお茶を飲んでいる。昨日ベッドで見た、白いネグリジェ姿のままだ。レースを通して、体のラインが見えた。 「なんでいるんだよ。それに、なんだよその服。目のやり場に困る、だろ」  なるべくルースを見ないように、視線を泳がせながらしゃべる。 「ボク、男性だよ」 「そういう問題じゃないから」 「そう? コノエだって、裸で寝てたじゃない」  いや……そうだけどさ……って、ちょっと待てよ。 「おい、な、何もしなかっただろうな」 「何って、何、かな」 「何でもないよ!」  俺はそう声を張り上げながら、冷蔵庫から牛乳とシリアルを取り出した。ちょっと寒いが、朝食を簡単に済ませるにはこれが一番だ。ボウルにシリアルを開け、牛乳を注ぐ。 「だいたい、人の布団に入ってくるとはどういう了見なんだ」  そしてスプーンですくい、口に入れた。 「コノエの匂いを感じたくて」  ぶっ  危ない! 危ない! やばかった……  口から牛乳という最悪の事態を我慢した代償が、鼻から牛乳ってのが笑えない。俺は慌ててティッシュを何枚も取り出した。  ルースは意地悪そうに微笑みながら、俺を見ている。 「襲われても知らねーぞ!」 「ボクを?」  あ、こいつ、男だった。 「別に、いいよ」  その瞬間、時が止まる。あ、いや、止まったのは俺の時間だけのようだ。ルースは、平然とした表情で、ティーカップに口を付けた。 「すまん、そういう趣味、ないから」 「コノエが言ったんだよ」 「うるせーよ!」  ティッシュで鼻を拭き、テーブルへと戻る。  ふぅと一息。目の前に座るルースに目をやると、レースのネグリジェを通して、仄かに桜色をした二つの蕾が透けて見えている。  俺はシリアルの入ったボウルを手に持ち、横を向いて食べることにした。

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