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その為に生き、その為に死ねるような恋をしよう⑥

 それが、最後の審判を告げる鐘だと言われたら俺は信じただろう。  ルースの口から出た言葉――まったくの想定外。いや、ちょ、まじか。 「そんな話は」  言いかけて、言葉を止める。  した、していたのだ。ルースは。そして俺は…… 『なんでもする』なーんて言ってた奴、誰だよ。俺だよ。 「分かった。おーけー。らじゃー。ぐーてんだーく。あー、ちょと、ごめん、深呼吸させてくれ」 「あ、あのさ、コノエ」 「な、なに」 「ボクだけ何も着てないというのも、ちょっと、恥ずかしい、かな」  裸のルース。それに対し俺は、フィスによってズタズタに切り裂かれてしまった部屋着の代わりに、これまた何の味気もないジャージを着ている。 「ま、まあ、そうだな。じゃあルース、お前、服を」 「コノエも、脱いで、くれない、かな」  むべなるかな! むべなるかな! 「いや、言いたいことはわかるが、その、人が見ている前で服を脱ぐというのも、あれだな」 「ボクは、脱いだよ」  ですよねー。  よし、俺も男だ。服の一つや二つ……  そう思いチャックに手をかけた瞬間、紺色のジャージが、いや、紺色のジャージだったものが幾方もの布切れとなって宙に舞った。ついでに、ブリーフも。 「おい、俺の切るもんがなくなるだろ」 「後でボクが買ってあげるよ」  ルースはそう言うと俺に体を寄せた。  いったいどこで買うのだろう。ネットか? ネットなのか? 「あのな」  なおも何か言おうとした俺の口を、ルースの口がふさいだ。  二人の口の中で舌が絡まり、しばらくの間、唾液が交換される。二人が顔を離すと、名残惜し気な粘性の糸が二人を結び、そして消えた。 「分かったよ。でも、初めてだからうまくできないかもだぞ」  そう、俺は踊ると決めたのだ。ならどこまでも踊ってやろうじゃないか。  俺の言葉には返事もせず、ただ期待を込めたまなざしを向けるルースをちらと見たあと、俺は再びルースの下腹部に顔を寄せた。  口を軽く開き、そのモノを咥える。多分こうすれば気持ちいいだろうという動作をしてみるが、果たしてそれが神様にも気持ちいいことなのかという疑問は、ルースの出す声にかき消された。 「あ、コノエ……」  前後に動く俺の頭を、ルースの手が包み込む。もっと速くという催促だろうか、その手が俺の動きを手伝うように動いた。 「はあっ」  ルースの喘ぎ声。少しハスキーではあるが、それがかえって俺の頭の奥、いや、胸の奥に潜む欲望にまみれた魂の琴線をはじくようだ。  ルースへの愛おしさが込み上げてくるにつれ、俺の動きが大きくなる。それとともにルースの声も大きくなり、そして俺の頭をつかむ手に力が入った。 「コノエ、お願い、口で受けて」  それが合図だった。俺の口内に唾液よりも粘度の高い液体が放出される。それと同時に、ルースの味――あの木と土の匂いが広がる。  死の匂い。ふとそんな言葉が頭をよぎった。  ルースから離れる。俺の口の中にはいまだ嚥下できずにいる液体でいっぱいだ。  ルースが俺を見つめる。神の目で。  コクン  音を立て、ルースの『体液』が俺の喉を落ちていく。  もう、戻れない。  比喩ではない。本当に何か、そんな気がした。

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