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その為に生き、その為に死ねるような恋をしよう⑦
『体液』を飲み込んだ瞬間に見せたルースの表情を、俺はきっと死ぬまで忘れないだろう。
どこか勝ち誇り、それでいて何か物悲し気で、でも恍惚としたものだった。
その意味するところは分からない。分かったところで、どうすることもできやしない。
ただ、その表情は瞬時に消え失せ、代わって気恥ずかし気なはにかみを見せると、ルースは俺に抱き着いた。
「なあ、ルース」
「なんだい、コノエ」
「いや、俺ずっと自分のことばかり考えてたけど、ルースはさ、愛し合う相手が俺でいいのか?」
俺がそう聞くと、ルースは少しだけ身体を離し、不思議そうな表情で俺を見た。
「もちろんだよ。なぜ?」
「いや、俺、男だぞ」
「分かってるよ」
平然とそう答える。
「カミアンってのには、女はいないのか?」
俺が出会ったカミアンは、ルースとフィスとそして俺を襲った相闍梨ことヒーノフという三人だ。皆、癖は強いが男である。必然、そういう疑問がわいてくるのだが……
「カミアンに性別はないよ」
「まじか」
つまり、皆『付いてる』んだな……
「じゃあ、どうやって子孫を増やすんだ? 人間の女性と交わるんじゃないのか? 男と愛し合ってどうする」
「ああ、なるほど」
ルースは俺の聞きたいことが分かったようだ。したり顔をしながら、また俺に体を寄せた。ルースの少しひんやりとしたすべすべの肌が俺の体にまとわりつく。そして滑らせるように手を俺の背中へと回した。
その感触が俺の欲望を刺激する。
「カミアンは子孫は残さない。残す必要がないからね」
ルースの手が俺の背中からお尻へ、そして股間へと回ると、俺のモノは硬くいきり立ってしまった。
はぁ……体は正直だね、まったく。
「あー、そっか。カミアンは不老不死なのか」
俺の言葉に、ルースが少し笑みを浮かべて、俺を見つめる。その少し上気した顔があまりにも色っぽく、俺の目には映った。
「不死ではあるけど、不老じゃないよ」
そういいながらルースは、手で俺のモノをなで始めた。
「お、おい」
「硬く、なってる」
「そ、そりゃ」
「ボクに、発情してるの?」
ダイレクトすぎる質問に、俺は思わず顔が熱くなる。
「そんなに刺激されたら、当たり前だろ」
「ふーん」
ルースの笑みが、少し意地悪気なものに変わる。ルースが俺の耳元に口を寄せ、小さく囁いた。
「ボクに、いれたい?」
唾を一つ飲み込む。いまだ口の中に残る『ルースの味』がまた喉の奥へと落ちていく。
その囁きは、神でも天使でもなく、まさに悪魔だ。
それに対して、頭の中で『イエス』と答えている自分に驚きを禁じ得なかった。
「いいよ」
二人の体は、見た目は宙に浮かんでいるようだ。しかし無重力ではない。ルースはそれを器用に動き、俺の上半身に抱き着くと、そのまま俺のモノを自分の中へと導こうとする。
「お、おい、何もせずだと痛いんじゃ」
ここにキャノーラ油はないぞ?
「ボクらはね、大丈夫なようにできてるんだよ」
あてがわれた穴。それはきっと『おしりの穴』なのだろうが、俺のモノの先端にぬるっとした感触の液体がまとわりついた。
「なっ」
「ほらね」
一体それがなぜなのか、もっと言えば、このカミアンという存在がどのような進化を遂げてこのようになったのか、いやそもそもダーウィニズム的進化を遂げた存在なのか。
あらゆる疑問は、俺のモノへと加えられた得も言われぬ刺激により吹き飛ばされた。
思わず口から声が漏れる。ルースもそれに合わせるように「あぁっ」と喘ぎ声を一つ上げると、うれしそうに微笑んだ。
「こ、これも、儀式、なのか?」
ルースが腰を振る。俺はされるがままであるが、その快感に意識が持っていかれ、何か能動的なアクションが起こせない。
「儀式、といえば儀式かな」
ルースが動くたびに、二人の体が微妙に位置を変える。快感に耐えるように、俺はルースにしがみついた。すぐに、俺の奥底から何かが込み上げてくる。
「ま、待て。そんなことしたら、すぐに」
「いい、いいよ、コノエ。ボクの、中に、あっ、いっぱい、はぁっ、だ、出して!」
ルースの動きがさらに激しくなる。頭の中がしびれて何も考えることができない。それに耐えようという気が消え失せた瞬間、俺の中の欲望が、粘性の高い液体となってルースの中へと吐き出された。
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