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その為に生き、その為に死ねるような恋をしよう⑧

 二人果てた後も、しばらくつながったまま宙を漂っていた。  ルースは俺を強く抱きしめている。それは余韻を味わうものなのか――いや、俺にはそうは思えなかったのだが、かといってルースが何を考えていたのかは分からなかった。 「な、なあ、ルース」 「何、かな」 「俺、ルースの、何だっけ、『眷属』? それになったのか?」  ふと、思い出したようにルースが俺から体を離した。  お互いに生まれたままの姿で向き合う二人。ルースは全身純白だった。まるで古代ギリシャの彫刻が、命を吹き込まれて俺を見つめているかのよう。胸の頂上を染める桜色、唇の薄紅、瞳の紅、そして細部の凹凸にできる陰影だけが、彼の彩の全てである。 それはまさに神々しい神のそれである。俺の眼には、少し眩い。 「ああ、そうだね。そして」  そこでルースは顔から表情を消した。 「ゲームが始まる」  その言葉は、まるで俺のこれからの『運命』を告げるようで、俺はこれまでの少し浮ついた気分を吹き飛ばされてしまった。 「ゲーム……『リバ・ゲーム』ってやつか。それ、何なんだ?」 「アンフィスから、聞いたんだね」 「いや、名前だけだ。それが何なのかは教えてくれなかった」  俺がそう言うと、ルースの表情が少し悲しげなものに変わる。 「お、おい、なんだよその顔は」 「コノエを巻き込んでしまった。ボクのせいだ」  ルースが俺を優しく抱きしめる。 「おいおい、何か不穏だな。そんな物騒なのか、それ。魂を集めるって言うんじゃないのか?」  白くつややかな髪の毛が頬をくすぐり、ルースのモノが俺のモノと重なった。 「ボクたちカミアンは、不死だけど不老じゃない。そう言ったよね」 「あ、ああ。でもルースは若いじゃないか。いくつなんだ?」  その問いかけに、ふっと俺の耳にルースの息がかかる。 「実際の年齢はよく覚えていないよ。でも、前回の『リバース』からはもう二千年近くたってる」  俺の頭の中で、ルースの言葉が繰り返し再生された。そう繰り返し…… 「リバース?」 「そうだよ。ボクらは死なない代わりに、『再生』を繰り返す。それができないでいると、次第に活動エネルギーが減退していき、やがて動けなくなるんだ」  俺は驚き、ルースから体を離すと、その肩を掴みまっすぐに見据えた。ルースの表情は相変わらず悲し気で、それでいて何かを悟っているもののようだ。 「ま、待て」  その内容、俺にとってはショッキングだ。  動けなくなる? 「それは、『死』じゃないのか」 「いや、死にはしないよ。ただ存在するだけになる。ボクなら、そう、ここで」  ルースはこの空間を包み込む繭のような白い靄を見回し、それを指し示した。 「……なにそれ」 「言葉通りだよ。ここが、ボクの、墓場」  そういうことか――フィスの言葉の意味がようやく分かった。  不死――それは人間にとって、究極の欲望と言える。しかしルースの話が本当なら、それは永劫に続く拷問じゃないか。 「でも、カミアンは消滅してもまた復活するんだろ?」 「それは『仮の肉体』の話に過ぎない。ボクたちは、『エネルギー生命体』だよ。エネルギーがなくなれば、ただ『存在するだけの存在』になる」  真に理解しろと言われても、到底無理な話だ。人間はそんな存在じゃない。  しかし、そういうものだと受け入れるなら、話は分かる。つまり、カミアンは『再生』しなければ『死に体』になるということだ。 「なあ、ルースのその活動エネルギーとやらが無くなるのはいつだ」 「いつ、ということははっきり言えないけど、でもボクはそんなに遠い話じゃない。随分長い間『再生』してないからね」  なんだ、ルースはおじいちゃんだったのか――そんな冗談を言える雰囲気ではない。 「その再生ってのはどう」  そこまで言って、言葉を止める。そういうことか。 「それが、『リバ・ゲーム』か」  俺の言葉に、ルースは申し訳なさそうに上目遣いで俺を見た。その紅い瞳が、たまらなく愛しい。 「そう、だね」 「なるほど、話は分かった。それに俺を巻き込んだというわけだな」 「……すまないと思ってる」 「何言ってんだよ、俺はルースの為に生きることにした。任せろ、二人ならなんとかなるさ。いや、なんとかしよう」  話が分かってしまえば、こっちのもんだ。  ルースに向けて、笑ってウィンクをして見せる。ルースも笑顔になってウィンクを返してきた。 「そうだね」  そしてまた、唇を重ねた。  唇を離すと、ルースが不安そうに俺の眼を覗き込む。 「な、なに?」 「えっと……その、ど、どう、だった、かなと、思って」 「何が?」 「ボ、ボクの、その……ア、アレ。気持ち悪くは、なかった、かな」  遠慮がちに、でも大胆にそう尋ねるルース。俺の答えを、期待と不安で胸をいっぱいにして待ち構えている。 「ああ、えっと、そうだな。美味しかった、と思う」  自分から訊いたくせに、ルースは手をパタパタさせながら、激しく恥ずかしがった。

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