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“後輩 “1
後輩は実はスゴいやつだったと判明した。
オレにしてみればものスゴいストーカーでしかなかったけれども。
翌日、学校に逃げた。
でないとその奇妙な生き物がオレから離れようとはしなかったからだ。
奇妙な生き物は泊まっていたのだ。
シャツが乾いてないなどと言い訳していたが、出ていく気が無いのはよくよくわかった。
なんでだか、居座るつもりなのかわかりすぎた。
せまい6畳1間の安アパートの部屋がさらに狭くなる。
別に何かをされるわけではない。
オレの近くでニコニコ笑っているだけだ。
ずっとオレのする事を眺めている。
部屋の掃除なり、料理なりをしてくれたが、とにかくオレの一定距離から離れようともしない。
朝には笑顔で乾いたオレと自分の制服のシャツにアイロンをかけて、tシャツとパンツにまでアイロンをかけていた。
オレは。
オレは困惑し続けていた。
なんだか分からなかった。
作ってくれたチャーハンはやたらと美味かったし、朝飯も美味かった。
米を大量に消費されたが、それはいい。
それを口実にして、もう来させなければいい、とか必死で考えていた。
でも。
「帰れ」
「嫌です」
「出ていけ」
「嫌です」
通じないんだよ!!
結局、夜も1つしかない布団に潜り込んできて、オレはぬいぐるみみたいに抱きしめられて寝た。
呆然と抱きしめられてた。
裸のソイツに。
服がないからな。
確かにソイツが着れるようなモノは。
バスタオルだけは身につけていたけど。
拒否してる。
してるんだけど!!
会話が成立しないのだ。
笑顔で全力で離れることを拒否してくるのだ。
叩きだすことは不可能だとわかってたし、警察はオレが嫌だった。
子供1人で住んでるのは、あまり知られたくないことで。
オレは。
おじさんの家に住んでることになってるんだ。
あそこには行きたくない。
アニキと住んでたこの部屋にいないと。
いないとダメなんだ。
騒ぎを起こしたくもなく。
子供1人で住んでると実はバレているからこそ。
だからとりあえず学校に逃げた。
それにこの化け物にだって親はいるだろ、これでも15才だぞ。
学校に行けば親や先生がコイツを確保するに違いない。
コイツは入学式を抜け出して、無断外泊したんだからな。
入学式早々。
いくらなんでも、ゆるーいウチの高校でもそれは許されない。
学校へ向かえば、制服を着てニコニココイツもついてはきた。
「一緒に学校行けるの嬉しいです」
本当に嬉しそうに言う。
「あっそう」
オレもこんなに学校に行きたかったことなんかなかった。
早く誰か、オレからコイツを引き取ってくれ。
そう願った。
話もほとんどしないで、学校へむかった。
ただただただただ、ソイツは嬉しそうだった。
ただ隣りを歩いているだけなのに。
何なんだ。
何なんだ。
オレはコイツに何をしてしまったんだ。
全くわからなかった。
そして。
学校にたどり着いたとき。
門でアイツを見かけた先生が叫び、他の先生も集まってきて、アイツは連行されていった。
オレを見たが、流石に暴れはしないで連れていかれていた。
先生達の喜びようは凄まじく。
そう、先生達はあいつを見て喜んでいた。
とにかく喜んでいた。
「よかった!!どこへ!!」
「無事だった??」
「何があったの??」
その後、警察とかも来たらしい。
オレと一緒に歩いていたんだが、先生達にはオレが見えない、というか、コイツとオレが一緒にいるはずが無いという思っていたんで、そうとはわからなかったんだろ。
オレも先生達とはそんなに絡みたくないし。
警察もごめんだ。
それもアイツはわかってたんだろ。
オレを見をしたが、オレに声をかけることなく連れて行かれた。
そして、オレはやっとアイツが誰なのかを知ることになったのだった。
周りの生徒がヒソヒソ話す声にそれを知る。
スポーツエリート。
スポーツだけは優秀なこの高校でもずば抜けて優秀な生徒。
バスケットボール、野球、陸上、何でもできるらしい。
何より、柔道。
重量級の優勝候補らしい。
もう入学したこの時点で。
納得した。
トップアスリートってのは人間じゃない。
化け物だ。
でも、なんでそんなスポーツエリートが、入学式をサボって?
アイツらはそういうことはしない。
奴らは色んなことを優遇されるし、なんなら問題の1つや2つもみ消して貰えるけど、セレモニー的なものにはきちんと参加しなければならないはずだ。
建前だけはちゃんとする。
でも、まあ。
世界が違う人間なのはわかった。
これで、もう。
大丈夫。
そうオレは安心したのだった。
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