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後輩 3

「嫌です」 まあ、そう言われるのもわかっていた。 昨日何回繰り返したっけ?この会話。 「オレに構わないでくれ!!オレは1人でいたいんだ・・・頼むから・・・」 とうとう懇願した。 泣きそうになりながら、頭すら下げた。 そんな真似誰にもしたことがなかったのに。 奇怪な生き物はここで初めて何か考えこんでいた。 見えない耳が垂れていた。 真剣に考えているのはわかった。 期待した。 理解を。 たのむから。 「やっぱり、嫌です」 でもはっきり言われた。 おまけにじゃれるように抱きつかれた。 ベンチに寝ていたオレを抱き抱えるようにして。 「離れたくない」 耳もとでささやかれ、また鳥肌が立つ。 コイツには犬が飼い主にじゃれつくようなモノなんだろうとはおもっていても。 いつの間にか周りに出来上がっていた周囲の人垣から女の子達の悲鳴が上がった。 学校の噂の中心であるコイツに人がついてくるのは当然ではある。 だが、なんか嬉しそうでもあるその女の子達の悲鳴がさらにオレの怒りを掻き立てた。 「離せ!!」 暴れようとするが、さすがに身体のコントロールが絶妙で、柔道経験者のオレでも腕を外すことすらできない。 「先輩、先輩、先輩」 嬉しそうに、バカ犬が鳴く。 なんだよコイツ。 マジキモイ。 なんなんだよ!! オレは頭がおかしくなりそうだった。 でも、どうすることもできない。 「離れろ!!お前なんか、大嫌いだ!!」 そう子供みたいなことを叫んだのは、本当に子供みたいな気分だったからだ。 自分じゃどうしようもできないことを強いられる子供みたいな気分だったからだ。 大きないじめっ子にいじめられて、何も出来なかった時みたいな。 『お兄ちゃんのバカァ!!嫌い!!』 子供の頃、アニキに怒られて泣いた時みたいな。 嫌いと叫ぶしかできない、それしか反撃の仕様がない小さな子供みたいな。 でも、大きないじめっ子にはいくら嫌いと叫んでも無意味だったが、アニキには効いたように、コイツにもそれは効いた。 「すみません、ごめんなさい、ごめんなさい・・・」 腕はすぐに解かれ、デカいデカい男がベンチの下で土下座を始めていた。 周囲に沢山の人がいる場所で。 「許して下さい・・・先輩、僕を嫌わないで・・・」 土に額を擦りつけるソイツ。 しかも、本気で泣き始めた。 声をあげて。 ざわめく周囲。 オレはオレは。 ただ誰にも構われず生きたかっただけのオレは。 この公開処刑にかたまった。 空を見上げた。 「ここから自由にしてくれ」 そう願った。 今までの自由への願いなど。 大したことではなかったと知り、大人になった瞬間だった。

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