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関係 4

試合は圧勝だった。 当然のことながら。 勝ち抜き、地方大会を優勝してしまった。 全部、立ち技で一本勝ち 勝つ度にオレをみて笑うから、その度に会場がざわめいて困った。 笑う方が勝つより衝撃がデカいっておまえ何。 アイツはオレだけをみてる。 会場のどこにいてもみつける。 怖い。 ヤバい。 そんなにオレが好きだって隠さないのはどうなの? そのくせオレはそれが嬉しかった。 怖かったけど。 でも。 見てみてわかる。 天才だった。 知ってたけど。 全てが理だった。 パワーではなく、技だった。 あの見事な身体ではなく、技術がアイツを勝たせていた。 相手はアイツのパワーを感じることなどなかっただろう。 自分の力を利用して投げられ倒され、背中から落ちていた。 「技術だよ、技術。力じゃない」 アニキが笑って言うのが聞こえた気がした。 「才能は無くても寝技なら努力で上手くなるぞ」 試合に負けて泣くオレにアニキが言ってくれたこと。 練習に付き合ってくれたこと。 アニキこそ柔道で将来を期待されてたのに、両親が死んでオレのために諦めたこと。 それがオレには辛かったこと。 オレをおじさんに預けて、アニキは柔道を続けて、と泣いたこと。 アニキが笑ってオレを抱きしめたこと。 「お前を手放す方がツラいよ、オレには」 アニキがそう言ったこと。 オレのために柔道選手としていた会社をやめたこと。 弟を育てるために。 夢を手放して、アニキが働くのを見てた。 それが辛かった。 アニキは笑った。 「それはお前が決めることじゃない。オレが決める」 と。 でもアニキがボクシングを始めてそれが嬉しかったこと。 「仕事しながらもこれならできるし」 アニキが笑ったこと。 アニキがプロデビューしたこと。 試合の応援。 アニキの勝利。 いろんなことが思い出されてぐるぐるした。 朝、アニキと一緒に走ったこと。 もっと強くなりたいと思ったこと。 2年間蓋をしていた思いが色々と溢れだしてきた。 オレは強くなりたかった。 オレも強くなりたかった アニキみたいに。 光の中に立つアイツを見てそれを思いだした。 綺麗に技を決める。 それは重ねた練習の成果で。 才能で。 格闘技という科学で。 それはオレの好きなものだった。 大好きだったんだ。 アニキが死んだから。 何もかもを閉ざしてしまった。 ああ。 強くなりたかったんだ。 オレも。 アニキみたいに。 オレはそれを思い出して。 思い出してしまって。 それはアイツの意図したものではないだろう。 アイツはただ、オレに見に来てもらいたかっただけだ。 たった一人認知できる人間に、自分がしていることを見せたかっただけだ。 アイツも実感したかっただけだ。 自分がしていることに何かの意味があるって。 オレ達は子供で。 何もかもがわからなくて。 ただ、お互いにしがみついていて。 でも。 ここから動き出してしまった。 あのまま。 二人で何もかも気づかずに。 閉じこもっていられたら良かったんだろうか

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