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崩壊 1

1度中でイカされるのを覚えてしまうと、オレも歯止めが効かなくなった。 週に1度アイツがやってくるだけじゃ足りなくなって。 昼休みに初めてした旧校舎の使ってない準備室でした。 毎日のように。 声を我慢出来ないオレの唇をキスで塞がれながら、下から突き上げられたり、指で口の奥まで犯されたながら背後から激しく貫かれたり、脚をみっともなくおしひろげられ、舌を絡ませあいながらするセックスは最高だった。 「コレ好きなんですね」 アイツが微妙な場所を抉りながら囁いてくる。 アイツは覚えが本当に良くて。 オレの身体をトコトン知り尽くし、支配した。 どうしたらオレの穴が締め付けて痙攣するのかを知ってたし、どうしたらオレが意識を飛ばしながらヒクヒクと蠢く肉塊になるのかも、アイツの動きひとつひとつに鳴く楽器になるのかも知っていた。 オレに絶対服従だとわかっていなければ、コイツにここまで肉体を好きにさせなかったと思う。 オレに絶対服従だと知ってたから、どこまでも好きにさせてしまった。 後輩はいやらしい男だった。 次から次へと、新しいエロいことを考えてくる。 溺れまくった。 昼休みだけじゃ我慢出来なくて、家に帰ったらアイツとしたことを思い出して、後ろを弄って自分でイった。 後ろでしかイケなくなるのはすぐだった。 後ろは凄かった。 何回でも連続してイケるんだから。 セックスの虜になった。 部屋に入り二人きりになるなり、いつも自分からアイツのをしゃぶった。 ズボンを下ろして。 早く勃たせて、早く挿れたかったからだけど、いつだって咥える前にはもうデカくてガチガチだった。 愛しくてたまらなかった。 オレの口や舌でアイツが呻くのが喜びだった。 昼休みに身体を繋ぎ、週一度過ごす。 そして携帯に毎晩届くアイツからのメッセージ。 他愛のない、今日の練習は何でした、みたいなのと、おやすみなさい好きです、の変わらない言葉。 それを見ながら1人でしてた。 オレは恥ずかしくて何も送らなかったけど、2人の時はアイツに甘えまくった。 子どもの時以来だった。 誰かに甘えるなんて。 腕を回して抱きついて。 抱きしめられて安心した。 繰り返されるキスに酔いしれ、好きだと言われることに満足した。 このまま居られたら幸せだったのかもしれない。 でもそうならなかった。 そう、アイツの試合を見たことがきっかけだった。 アイツは間違いなく天才で。 本来オレなんかが独り占めできる人間ではなく、でも、アイツはその壊れた認識力のためにオレに固執している、とその時にわかっていた。 そして。 オレはもう気付いていた。 アイツのその認識力の欠如の原因を。 そしてアイツがどれほど凄いのかも。 綺麗な弧を描いて、力なく人を投げるアイツ。 まるで敵が自分から飛ぶように転がせるアイツ。 最小限の力で最大の効果。 他のスポーツのことはわからない。 ただ、柔道という格闘技でアイツが天才なのはオレは良く分かった。 それは死んだアニキが目指して、そしてオレが憧れたものだった。 アイツには意味のない才能。 それはあまりにも美しかった。 それがただするだけのモノでしかアイツにはなくても。 誰もいない、オレしかいない世界で生きてるアイツ。 オレには。 今は居なくてもアニキもいたし。 拗ねて離れてしまったけれど、良くしてくれた人達もいた。 オレは本当の意味では一人じゃなかった。 アイツのように誰かが飛び込んできてくれたなら、その人間を感じとることができた。 でも。 アイツは。 オレ以外はいない世界で。 オレがいない時には一人きりなのだ。 それは正しいのか。 正しくはない。 オレは悩んだ。 オレだけのアイツをあいしていたからだ。 でも。 気付いてしまった可能性から目を背けることができなかった それはオレに刺さった棘になる。

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