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巻き戻し 1
その日、オレは目覚めた。
悲鳴をあげながら。
そしてそこがオレの部屋であることに気付く。
アイツがオレのエロい声が聞きたいばかりに防音工事をした、オレの部屋だ。
アイツと離れてからもずっとそこに住み続けたオレの部屋だ。
オレは起き上がる前に吐いた。
布団の中で。
心臓は悲鳴をあげ、いや全ての内臓は恐怖からのたうち回っていた。
オレは。
死んだ。
死んだはずだった。
だって、世界が終わって、みんな死んだんだ。
吐きながら、震えながらオレはのたうち回っ周り、吐瀉物にまみれ、痙攣した。
涙が止まらない。
叫ぶような声が喉から出てくる。
目の裏まで血液がはげしく回り、眼球か飛び出すかと思った。
恐怖で目玉が飛び出すってこういうことかと。
そして、胸を締め付けられる後悔。
恐怖よりも強い、それ。
それは後悔であり悲しみだった。
オレは大声で喚き泣き、転げ周り、錯乱し。
そして、気付いた。
自分がまだ生きていることに。
世界が終わっていないことに。
オレはよろよろと起き上がり周りを見回す。
オレが吐いたモノで汚れてはいるが、そこはいつものオレの部屋で。
オレは混乱する。
確かに。
確かに。
世界は終わったのに。
アレが夢で無いことは、オレこの恐怖と哀しみがそれを教えてくれる。
それはまだ肉体に刻まれている。
身体を締め付けてくる。
だけど、アレ、世界の終わりを、具体的なイメージにすることも言葉にすることができないことも、オレを怯えさせた。
考えようとするとグニャリと思考がロックされる。
これはなんだ。
焦る。
でも。
それが起こった日付は覚えてた。
だって、さっきまでその日の中にいたんだから。
オレは枕元で充電されていた携帯に手を伸した。
その日付が教えてくれたこと。
それは。
終わりが来るほぼ1年前にオレが戻っている、ということだった。
オレはまた吐いた。
現実が受け入れなかったからだ。
でも。
でも。
オレはそうしながらも、もうどうするかは決めていた。
オレは。
オレは。
アイツのところに行かなければならない。
世界が終わる前に。
もう一度会いたいと願って死ぬよりは。
絶対にアイツを取り戻したい。
もう一度。
愛されたい。
オレは嘔吐し、叫びながら、覚悟をきめたのだった。
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