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リバイバル 6

次の日は普通に仕事に行った。 世界が終わるとしても生きていかないといけない。 金はいるのだ終わるまで。 スケジュールに書いている通りに仕事する。 この日の仕事内容をオレは覚えてた。 印象にのこる日だったからだ。 巻き戻した日に書いたノートにも書いてあった。 そう、オレはガソリンスタンドで働いている。 店頭での給油やボイラー用の灯油の配達、車の簡単な整備とか、バイトのシフト管理とかまあ、色々。 普通は土日休みなどもらえない仕事なんだけど、そこは社長がオレのファンなのだ。 おかげで土日休み、18時退社を許されている。 オレは顔だけじゃなく仕事も出来る男なので支店の副店長を任されてもいる。 女の子は残念ながらウチの店にはいないが、バイトの男の子達は顔が良くて強いオレに尊敬の眼差しを向けくれるので、それはそれで悪い気分ではない。 オレはセックスは男とするのがいいが、女の子にチヤホヤされるのは大好きだから女の子がいて欲しいとは思っているけどね。 良い職場だ。 試合や練習で顔を腫らしても「試合?頑張ってね!!」と受け入れてくれるお客さんさん達はなんならオレの試合のチケットも買ってくれる。 オレは名物店員で、人気者なのである。 顔が良いだけではなく、魅力的だからな、オレは。 まあ、人が放っておかないでしょ、当然。 練習を優先させて貰えて、チケットも捌ける、専業で出来るモノじゃないプロボクサーを続けるためにはこれ以上はなかなかない良い職場なのだ。 今日のことは覚えていた。 この日、ヤクザがやってきて。 モメたのだった。 アルバイトが黒塗り高級車、窓は真っ黒なフィルターを貼られて中が見えない、明らかにヤクザの車でございますという車の窓を拭いていた。 そしてフロントガラスを拭く時にバイトの子がワイパーを折ってしまったのだ。 真っ青になるバイトくん。 オレが駆けつけた時には殴られ、ヤクザに土下座させられていた。 まあ、その日は色々あった1日になった。 それが、前に一度経験したその日だった。 同じことが繰り返されるとは思っていなかった。 だって土曜日アイツとセックスして、日曜日にアイツとトモダチになるといつのは、前の時間ではなかったことだ。 死ぬまでオレはアイツと会うことはなかったんたから だから同じことが起こるわけではなく、もしかしたら世界が終わるということも変化するのではないか、と思ってしまった。 だが、その日。 一応、事件があった時間頃になると給油している店頭に気を付けていた。 全ての窓に黒いフィルムを貼った高級車が入ってきた時、オレが何かしら違う行動を起こさない限り同じことが起こることを確信した。 オレは動いた。 本当はピットでオイル交換をしなきゃいけなかったんだが、この先起こることが分かっていたから先に動かないといけなかった。 オレがピットからその車に走るのと、アルバイトが車のワイパーを折るのは同時だった 真っ青になって目を見開き、恐怖で髪を逆立てているバイトと、運転席から罵声を上げておりてくる、運転手役なんだろう間違いようもないヤクザ。 これはあの日の再演だった。 ただ、この日はオレがその場にもう向かっている。 オレはバイトが胸ぐらを掴まれ、殴られ、土下座を強いられる前にヤクザを止めれた。 良かった。 良かった。 このバイトくんはショックで仕事をやめてしまったし、殴られ土下座を強いられたことによる心の傷を心配していたからだ。 「暴力はやめて下さい。警察を呼びます」 そう言ってオレはヤクザの腕を抑えた。 必要以上の力は使ってない。 オレは適切に対処した。 「なんだ、お前は!!」 ヤクザがいかって殴りかかってきたが、華麗にワンステップで避ける。 避けられて真っ青になってさらに殴ってきたがそれも軽々避けたら殴る勢いで自分で転けた。 国内有数のボクサーなんだぞ、オレは。 真っ赤になって睨まれたが、それはオレのせいじゃない。 「警察呼んで」 オレはバイトに指示をだす。 バイトの子は真っ青になってオフィスへと走っていく。 良かった。 殴られる前で。 前回この子はヤクザに殴られ、土下座させられ、精神的に追い詰められてバイトも学校も辞めたのだ。 止められてよかった。 世界が終わるとしてもそれまでに彼がひどいことにあうこともない。 真っ赤な顔で立ち上がったヤクザはオレをにらみつけ、震えている。 だけどオレはとことん冷静だ。 冷静でなければボクサーになれない。 「止めろ」 後部座席から出てきた人が言った。 前回もこの人が運転手役のヤクザを止めたのだ。 そして、見舞金だとバイトに10万渡し、店長にもいくらか渡してた。 オレは警察を呼ぶべきだと主張したが、ヤクザに怯えきった殴られたバイトと、ヤクザが怖い店長はそれを拒否したんだよな。 ビビりの店長はともかく、バイトくんの怯えぶりはあまりにも酷く、無理強いはできなかった。 ヤクザというには良い男だったし、かなり若かった。 ヤクザラしからぬ美しい高級スーツを着た30半ばの男。 甘い感じのタレ目の優男だけど、かくしきれない暴力の匂いはした。 が、オレもまあボクサーだから驚くことはない。 「ウチのバイト殴りかかる前に止めてくれませんかね?」 この前にも思ったことを言っておく。 前回はバイトのケアの方が忙しくて、店長の方に対処を任せていたので、オレはこの男と話せなかったんだ。 男は面白そうにオレを見た。 「ボクサーか?」 聞かれた。 ヤクザにはボクシング好きが多い。 ステップと構えでわかったのだろう。 「ええ。だから暴力沙汰は困るんで、きちんと警察呼んで対処させて下さいね」 オレは言った ヤクザを恐れることがヤクザをのさばらせる。 恐れてはいけないのだ。 「・・・いいぞ。ウチのが悪いから」 あっさり頷かれて拍子抜けした。 「折れたワイパーは弁償します」 そこは言っとく。 「いいのに」 男は笑う。 なら、もっと早く止めろ。 「君、名前は?」 聞かれた。 ヤクザに名乗る名前はないと思った。 「教えたくありません」 オレは言った 「てめえ!!」 運転手ヤクザが吠える。 オレは手下や周りに吠えさせるこういうヤクザが大嫌いだ。 「だまれ!!」 だが運転手ヤクザに怒鳴ったのは男で、それはオレもおどろいた。 「君の気がすむようにするといい」 男はオレに微笑んだ。 前回とは全く違う結末にオレは初めて焦ったのだった。

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