土曜日だった。 アイツは来るだろう。 オレはセフレたちの誘いは全部断ってる。 世界の終わりから帰ってきてからは。 つまりアイツにされたセックス以来この身体は清らかで。 いや、ディルドとか使ってしまってますけど。 されたこと思い出して、オナニーしてますけど。 してますけれども。 生身の人間とはしてません。 アイツと別れてもすぐに誰かとセックスしたのに。 こんなにしなかったことはない。 だって、オレの好きな男はオレにキス以上のことをしてこないんです。 オレの家でごはん食べて、オレと古いそれこそマニアックな1980年代のボクシングの動画とか見たりして、2人でああどこうだ言って。 アイツは意外とボクシングに詳しくて。 意外でもないか。 格闘家だし。 まあ、それにオレもしていたから柔道には詳しいから、アイツに色々聞いたりしてた。 オレは、何よりアイツのファンを長年やってるから、かなりの柔道ファンなのだ。 柔道のマニアックな雑誌まで、ボクシングのと一緒に購入してアイツの切り抜き作ってるのは内緒だけど。 マニアックな格闘技の話で盛り上がって、かと思ったらコメディ映画とか見て爆笑して。 仲の良い友達みたいに楽しく過ごす。 そして変える前にアイツは優しくオレの唇にそっと触れるだけのキスをして去っていく。 その後オレが部屋で自慰に狂うのも知らないくせに。 でも。 その反面。 そんな風に扱われるのが、うれしくもある、ってのわかる？ あ、コイツオレに本気なんだというか。 したことのなかったプラトニックな恋というものの眩しさというか。 甘酸っぱいんだよ！！！ 不思議なのはアイツとオレが記憶を無くしている時どう過ごしていたのかとか一切聞いてこないところなんだけど。 気にならないのか？ とは思うんだけど。 でも、とにかく。 アイツ結構ちゃんとオレのこと好きじゃね？ と分かるから、もう1つ関係を進めてもいいんじゃないかと思うんですけど。 そもそも、オレはそのために世界の終わりから帰ってきたわけじゃない？ でも、「セックスしようぜ」とは言いにくいというか。 そこまで大切に思われてるのに、そんなセックス大好きなオレだと嫌われるんじゃないかとか色々考えてしまうというか。 これじゃ「いやらしいヤツと思われて嫌われるの わぁ、嫌なんですぅ」みたいな前まで鼻でバカにしていた話じゃないかと思うが、そうなんだ。 前のアイツとはちがうだけに色々考えてしまうというか。 オレは生まれて初めて、恋と欲望の狭間で苦しんでいた。 大事にされてるのに有頂天になりながら、でも相手の身体が欲しくてたまらなくて、そんな自分を嫌われるじゃないかとかウダウダしてしまうなんて。 そんなモノだけはオレとは関係ないと思ってたのに！！！ 「大事にしてるんで」 と付き合ってる女に手を出さない奴を 「うわぁ、スカしてるんじゃねーよ。やれなかったらいみないだろ。向こうだってヤリたいって」 みたいなことを言ってきた自分を呪っている。 いや、大事にされるのはそれはそれでめちゃくちゃ嬉しいんですよ。 ヤリたいけど！！！ でも、今日こそは。 関係を進めようとオレは決めてきた。 アイツが部屋のドアを叩く音がした。 土曜日、明日は互いに仕事は休み。 今夜はするべきだ。 するしかないだろ。 オレは決意を決めてドアを開けた。