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プラトニック 5

「お邪魔します」 アイツは礼儀正しい正しく挨拶して入ってきた。 土曜日に食事にきて、また日曜日も来るみたいな。 もう、泊まっていけよ、みたいな。 そんな付き合いなのである。 高校生の時は、どこか密室に入ればオレに触りたい、オレさえ許せばずっとオレの中に入ってたいみたいな感じだったのに、嘘みたいに紳士的だ。 「待て!!ダメって言っただろうが!!」 と盛りのついたダメ犬を叱っていたのが嘘みたいだ。 「飲みませんか?」 ワインとか持ってきてしまうのも、大人だ。 まあ、むかしのアイツも「腹減ってませんか?」とチャーハンとか作ってくれるオカンみたいなところはあったけど。 この数日スパーとかはしていないのでアルコールを喜んで頂くことにする。 ツマミも持ってきてくれてる。 飯はオレが用意した。 チャーシュー丼とかとワインってアレだけといいか。 酒かあれば。 酔ったフリとかで。 上手くセックスに持ち込めるんじゃないか、と汚らしいオッサンみたいな考えにオレは陥っている。 いや素直に好きです。 セックスしようよ。 と言えればいいんたけど。 だけど。 オレ、セフレと出会って速攻でセックスとかしてきたくせに、なんか言えないんだよね。 なんだよこれは。 なんていうの、こう、流れでセックスしたいわけですよ。 オレからじゃなくて、アイツから「好きです。あなたを抱きたい」みたいに言わせたいと言うか。 いや、もう大事に思ってくれてるのは十分分かってるんだけど、そこはもひとつ確信が欲しいというか 愛を誓われたいというか。 自分で言っててこの乙女思考に吐き気がしてんだが、でもそうなんだから仕方ない。 ロマンチックに恋がしたい。 アイツとだから。 このためだけにかえってきたからこそ。 めちゃくちゃセックスがしたい。 けど、セックスだけがしたいわけじゃないんだよ!!!! いや、したいけと!!!! このぐちゃぐちゃになった内面とかを知られたくもないというか。 高校の時よりもややこしく。 オレはアイツに2度目の恋をしていた。 ご飯出して、2人で笑いながら向かいあって食べてる間もアイツの身体の感じるはずのない体温を、感じとろうとしてしまう。 熱い肌に包まれた肉体の熱。 それが欲しくてたまらない。 話していて、冗談に笑って、突っ込んでるのに。 それとは別に、本当の手じゃない、欲望の手があいつの身体を撫でさすっている。 オレが話に突っ込むんじゃなくて、オレに突っ込めよ、みたいなオッサンみたいな下ネタがでそうになるというか。 笑ってアイツの上がった喉に、オレの妄想の唇がキスして。 分厚い背中に妄想の腕を伸ばして。 子供だった頃はアイツがそうしてきたら受け止めるだけで良かったのから。 自分からどうすればいいのかわからない。 セフレ達とは互いに「勿体つけてないで服を脱げよ」って言いあえるのに。 でも。 冗談を言ってセックスしていない、この瞬間は瞬間で・・・大切なのだ。 キスしてなくても、抱きしめあっていなくても愛しい。 でも。 男らしい大きな唇にキスしたい。 太い首にかぶりつきたい。 しゃぶりたい。 飲みたい。 ぶち込まれたい。 でも。 顔には出すな。 出すな。 出さないけど、誘いたい。 したい。 見つめすぎたのだろうか。 アイツが突然黙った。 いや、ちゃんと話もしてたし、話は話で面白かった。 アイツの目が熱い。 熱がある。 オレを見てる。 いつものように優しく細められていない。 怖いくらい見てる。 食われそう。 オレも食いたい。 オレもアイツも。 食事も話も忘れて、互いに見入ってた。 呼吸が荒くなる。 荒くなる。 ダメだ。 勃起しそう。 いや、してる。 アイツが苦しそうに顔を歪めた。 オレに向かって腕を伸ばすのをオレは待った。 抱きしめて。 抱いて。 抱き合おう。 だが。 だが。 「・・・・・すみません、今日は・・・帰ります!!!」 アイツは跳ね上がるように飛び上がり、荷物さえ置いて走って出て行ってしまったのだ!!!! 「ウソだろ・・・」 オレは呆然としたまま呻いた。 「あんの、根性無しが!!!」 オレは完全防音の部屋の中でわめいた。 オレは。 好きな男に手を出して貰えないという、苦行の最中にいた。

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