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プラトニック 6
土曜日の夜、逃げられた。
確かにアイツは欲望をオレに覚えていたはずなのに。
だが、日曜日にはまた来ると思った。
このところ、土曜日の夜にわざわざ帰って、日曜日にまた来ていたからだ。
休養日なので、のんびり2人で部屋で過ごすのがなんか当たり前になってた。
有名人のアイツと出歩くのも鬱陶しいし。
まあ、そこまで出かけて何かしたいわけではないんだよね。
したいことは格闘技で、そこは毎日頑張ってるし。
アイツも似たようなものだし。
強いていうならセックスかしたかったんだけど、そこは耐えさせられたこのひと月程だった。
本当なら土曜日の夜はセフレとセックスする日だったのに。
アイツだって、似たようなモノだろうに。
なんでしない。
しないんだ。
もうオレは限界だった。
オレが、好きだろ?
何でしないんだよ。
オレが魅力的じゃないなんて有り得ないだろ。
このオレだぞ!!
悶々も悩んで、デカいディルドまでつかって、一晩中自分をなぐさめて。
そんな自分が情けなく。
全ての怒りが逃げていったアイツに向いた。
だからアイツが日曜日、何事もなかったかのように昼過ぎに部屋に来た時不機嫌だった。
「帰れ。今日はもう帰れ」
オレは怒って言った。
一応、部屋には入れた。
アイツの顔が歪む。
納得できないとでも言いたげに。
「何故です?」
葉を食いしばり、怒りを抑えるかのように言う。
怒りたいのはこっちだ。
「逃げたじゃねーか、昨日の夜!!」
オレは怒る。
「アレは・・・」
アイツが何か言い訳しようとしてるけど、もう、知らない。
「オレが抱きたくないのかよ。なら帰れよ!!」
オレは怒鳴った。
ちょっと泣いてしまった。
昨晩、オナニーしながら考えていた。
もしかしたら。
アイツはオレを抱きたくないのかもしれない。
そう思ったのだ。
アイツはオレと同じではないのかもしれない。
「好きな女には手を出さないで、他の女には酷いことするクズ」とかも見てきたからだ。
この世の中には色んな男がいるのだ。
好きな女は聖女にして、欲望は他で発散、好きな女を汚せない、みたいな種類のクズだ。
アイツはそういうヤツではなかったけれど、10年たてば変わったのかもしれない。
オレを勝手に綺麗なモノにして、欲望はヨソですませているのかもしれない。
オレがこんなに求めているのに。
求めているのに。
そんなことを考えてしまったら泣けてしまった。
もうこっちは長い禁欲生活で情緒不安定なのだ。
涙ぐんだオレをみて、アイツがうぐぅとも、ふぐぅとも言えないような声をだす。
何だその顔は。
歯を食いしばり、指先を握り込み、肩が盛り上がっている。
そんなに身体に力をいれたなら、身体の動きがスムーズにならないのは分かっているはずだろうに。
オレたちは身体の使い方のプロフェッショナルなのだ。
耐えている。
耐えている。
何をだ。
「もう帰れよ。お前がオレとしないなら、オレは自分でしなきゃいけないんだからな!!」
オレは真面目に言った。
明日は練習を休むと連絡した。
このままじゃパフォーマンスも悪いから、今日はオナニーで欲望を満たして、明日は休んで、すっきりしたい。
こいつが好きだけど、オレの欲望はもう限界だ。
たっぷりしないと、心身に影響がでる。
もう、オナニーだけでいい。
アイツの喉が鳴った。
唾を飲み込んだのだとわかった。
「自分で、するんです、か」
なんかカタコトで聞き返す。
「するから帰れ」
オレはドアを指さした。
デカい声を出して、めちゃくちゃオナニーする。
そう決めてたからだ。
「・・・じゃあ・・・見せてくださいよ・・・」
アイツが低い声で言った。
はあ?
と思った。
「じゃあ」の使い方が間違っていると。
「・・・手伝ってあげますよ」
アイツがひくい声で言った。
目がギラギラしてた。
なんか違うスイッチをオレは入れてしまったのだとわかった。
しまった、と思った。
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