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嫉妬と空白と無い未来 2

とにかく、アイツとオレは再びめでたく恋人になりました。 世界の終わりから戻ってきて良かったな、と思う。 でも、世界が終わったあの世界で、アイツはどんな風にして死んだんだろうと思うと苦しい。 アイツがあの時どう死んだのか、オレはもう知ることが出来ない。 巻き戻しのこの世界はオレの知ってる限り大きく変わりなく進んでいく。 オレが積極的に変えたこと以外は変わることなく。 アイツとまた出会って恋人になったことやそうなる事で変わったことはあるのに、それ以外はこの世界は変わろうとしない。 頑なまでに。 オレの次の試合の日付も、対戦相手も同じだった。 試合の結果は変わるのだろうか? ここは気になるところだ。 だが、やるだけだ。 全力で。 「試合決まったんだって?」 ヤクザが話しかけてくる。 「絶対に見にこないで下さい。迷惑ですから」 オレは黒塗りの高級車のワックスをかけながらはっきり言う。 ヤクザはガソリンスタンドに車を持ち込むのをやめないし。 ワックスがけが終わるまで帰らないし。 反社と付き合いされてると思うわれるだけで、こちらはこの上もなく迷惑なのだ。 「見に行っても、声なんかかけないよ。それくらいはわきまえてるよ」 ヤクザがため息をつく。 わかってるならもう近づかないでくれ、と言っているのにそこがわからないのは問題だ。 「また綺麗になったよね。・・・恋人でも出来た?抱かれてるんだろ?」 ギクリとすることを言われるが、顔には出さない。 「セクハラです。出禁にしますよ」 そこはキッパリ言う。 逆だからって何言ってもいいわけじゃない。 そんなことまで言われる筋合いはない。 「謝るよ。謝る」 頭を下げられ、遠巻きにオレをみている運転手兼ボディーガードがオレをにらむ、がこちらに来ようとはしない。 ヤクザに言い含められてるからだ。 ヤクザはオレと話しているのを邪魔されるのがキライなのだ。 「ファンなだけだよ。許してくれるならそれ以上にもなりたいけどね」 強面の色男が、それを捨てさり気弱に言う風な様子は、女の子やこういう男か好きな男には効果があるのだろうけど、オレには効かない。 オレは元々男が好きなわけではないしな。 無視してたら舌打ちされたので、やはり計算だと思った。 「オレはあんたじゃどうにかできるタイプじゃないですよ。脅してでもなんとかなるタイプじゃないし」 オレはもう何回言ったかわからない言葉を繰り返す。 「分かってるよ。だから良いんじゃないか。金や力でなんとかなる男も女はいくらでもいるしな」 ため息をつかれる。 「意味無いんですよ。沢山いる人間の中で選ばれただけなんかじゃ。オレが世界の全て位じゃないと」 オレは正直に言う。 沢山の人達の中から選ばれて喜べる低度の傲慢さであれば良かった。 そんなの足りない。 オレはもう、世界にただ1つの人として愛された事があるからこそ足りない。 「すごい女王様だな、君」 ヤクザも流石に驚いた。 「王様ですよ、だってオレはボクサーですもん」 オレは鼻で笑う。 人を手に入れられる貴重品位にしか思ってないヤクザなどに与える愛想はオレにはない。 「・・・ますます本気になるねぇ」 なんかヤクザが言ってるけど、そこからは無視した。 ヤクザはどうでもいい。 そう。 そうなんだ。 それどころじゃ無いんだ。 オレは。 オレは。 生まれて初めての色んな感情に振り回されていた。

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