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誘拐 4
「凄い目してますね。やはりあんたは最高だ。美しい危険な獣だ」
睨みつけるオレをヤクザはウットリと見つめてきた。
キモイ。
マジ最悪
そう思ったのでそう言った。
「傷付きますね・・・本当にオレはあんたが好きなんだよ?」
ヤクザが顔を近づけてそう言った。
顔は良かった。
キモイ変態だが。
だが、だからこそキモイ。
オレは迷わず唾を吐きかけた。
唾はヤクザの頬を濡らした。
「ヒドイな。優しくしてやれなくなる」
悲しそうにヤクザが言った。
「殴るか?」
オレは鼻で笑う。
このヤクザがそれでもオレを好きだというのは真実だと思ったからだ。
歪みきって、マトモじゃないけど、欲しがるだけの醜い気持ちだが、好きなのは好きなんだろ。
そんなもんクソだが。
好きな奴に嫌われるのは、まあ、苦しいだろうから、そうしてやった。
歪んでるから、愛されないから、他の何かで代用したいだけの弱さを笑ってやる。
そんな醜くて弱い人間など、バカにする以外はないし、コイツがオレに酷いことを出来ないと踏んだからこその行動だ。
嫌いな人間を傷つけたかった。
嫌いなのはコイツがオレのアイツを傷つけようと考えたからだ。
絶対ゆるさない。
まあ、手足を縛られ、身動きとれないから絶対絶命なんだけど、絶対ゆるさない。
「まさか。薬を打って気持ち良くさせてから、あんたとセックスするだけだ」
ヤクザは悲しそうに言った。
「クスリは良いぞ。大嫌いなオレが相手でも何度でもイける」
ため息をついてはいる。
そのため息もウソじゃないんだろう。
でも確かに興奮もしてた。
オレを犯すことを考えて。
目の奥に歓喜と狂気がある。
そこがヤクザがヤクザなとこだ。
クソなところだ。
ほんとに嫌いだ。
だが黙ってやられてやるつもりはない。
当然だろ。
オレの目の前にある顔に反動で起き上がりオレは頭突きをかました。
手足を縛ったくらいでオレが何もできなくなると思うなよ。
綺麗に決まった。
ヤクザは鼻血を吹き出した。
軟骨が折れる音がしたから、鼻は折れただろう。
自慢の顔を壊してやったと思ったら、笑いが自然と込み上げた。
「もっと男前にしてやったぞ!!喜べ!!」
オレは大笑いした。
鼻血を吹き出させ、蹲るヤクザ。
部屋の隅からボディガードらしき連中が飛び出してくる。
コイツらも鼻を腫らしてる。
オレが攫われる時に殴ったり蹴ったり投げたりしてやったからだ。
病院送りにならなかった何人かだろう。
散々オレにやられたヤツらだから、喜んでオレに殴りかかろうとした。
オレはそれでも笑ってた。
笑ってやる。
死ぬまで笑ってやる。
でも。
殴られはしなかった。
ヤクザが止めたからだ。
「止めろ」
ヤクザはオレを必要以上には傷つけたくなかったのだ。
麻薬を打っておかしくして犯したいと思ってはいても。
クソヤクザめ。
でもヤクザは部下の訓練は行き届いていて、部下達は止まった。
悔しそうに。
「しばらく閉じ込めて弱らせてから、薬を打つことにしよう。オレはあんたを傷つけたくはないんでね、あんたが好きだから」
愛しい男の扱い方も実にヤクザらしかった。
「小便やクソを垂れ流しして、水も飲めなくて弱った頃にまた来ますよ」
ヤクザは優しく言いやがった。
そんな弱った男にクスリ打って犯すの。
最低だけど、ヤクザだから当然だ。
「ホントクソなみたいな愛だな」
オレはまた唾を吐いた。
今度は届かなかった
「ヤクザですから」
ヤクザはもっともなことを言った。
いや、そうだわ。
そして、オレを一人残して。
出て行った。
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