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誘拐 7

オレは玄関にあるシューズボックスから走れそうな靴を拝借した。 オッサンとオレは靴のサイズがほぼ一緒だった。 ブランドモノのランニングシューズ。 ごめん、すぐ返すから。 オレはそれを履いて、玄関から飛び出す。 非常階段へ向かう。 非常階段のドアを開けて驚いた。 そう向こうも驚いていた。 そう、いかにもヤクザな男が立っていたからだ。 ドアのノブに手を伸ばそうとしたままの市政で。 オレが単に開けたそこに人が立っていたことだけに驚いているのではない驚きを感じているように その男も開けようとしたドアがいきなり開けられ人が飛び込んできたことだけで驚いているのではないのはお互いにわかった。 おそらく、あのヤクザの手下だろう。 まだマンションから逃げてないと踏んで探させているのだ。 この階を探しにきた手下とオレは顔を見合わせてしまったわけで。 「てめぇ!!」 男が怒鳴りオレに手を伸ばしてきた瞬間、オレはその手を後ろに身体を引いてかわし、避けながら左拳で男の顎をとらえた。 完璧はカウンターパンチ。 素人相手とはいえ、惚れ惚れしてしまうほどの。 オレは自分を絶賛した。 綺麗に顎を打ち抜かれて、男はカクンと崩れ落ちた。 ノックダウン。 オレは腕を突き上げながら倒れた男を跨いで、階段を駆け下りていく。 気分は良かった。 だがこれは出口を見張られているな、とも思った。 おそらくこの階段はエントランスホールに向かう。 階段の出口も、ホールの出口も、誰かいるはずだ。 だが。 突破するしかない。 流石にここでは麻酔銃は使えないはずだ。 他の住人だっているわけだし。 倒す。 全員ぶち倒して。 ここから出る。 駆け下りながらそう決めた。 男を倒した階から騒ぎ声が聞こえて、追ってくる足音も聞こえた。 オレの足は階段を確実に捕まえ、でも、落下するように降りていく。 落ちる重力をスピードに変えて。 反響する複数の足音が聞こえてくる。 気づいたし、追ってきたか。 だがオレのが断然早い。 でも。 これは非常階段の出口でも待ってることに間違いないな。 出口と後ろからでオレを挟み撃ちにするつもりだ。 オレはもう目の前にある出口の扉を見ながら思った。 この先で待ってる連中がいる。 それを分かっていながら、オレはドアを開けた。

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