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第1話-4
こっちに向かって来たと思ったら、予想外の誘いに苦笑いをしながら返事をする。
「あはは…燐くん、大人にそんなこと言って大丈夫?」
「何で?俺が誘ったら、イオリのココ…勃つのかな?って思って。βでも男だから有り得るよね」
ニヒルな笑みを浮かべる燐は、人間とは掛け離れた独特な色気があった。
とても中学生くらいとは思えない、妖艶な眼差しと手付き。
この誘いに乗るべきなのか、軽くあしらってこの場を出た方が良いのか。
さっきから選択枠ばかりで頭が痛い。
だが、燐の誘いを断るように奏が話を割って出た。
「伊織。祢音が待っているから、先に部屋へ戻ってくれ。俺なら、すぐ行くと伝えて欲しい」
「はい、分かりました」
とりあえず奏の助け舟により、燐と何かをすることもなく「じゃ、またココに来てよ」と笑顔で手をヒラヒラと振り見送られた。
◇ ◇ ◇
一方の祢音は、音沙汰が無いのを気にしてか、何かあったのかと不安になっていた。
夕食も食べ終わり、時間を見計らってきたお手伝いさんがいつものように食後の紅茶を運んでくる。
甘めな物を好む舌の持ち主のため、ミルクと2杯分の砂糖を用意してティーポッドの横に置く。
高級感のある食器は、デザインもまた特徴的で奏の趣味嗜好が伺える。
初めは緊張のあまり、ティーカップを割ってしまうのではないかと、触れることすら躊躇う程だったが今ではすんなりと口へ運ぶことが出来る。
「先程、伊織さんとすれ違ったので、そろそろこちらへ来るかと思います。もう暫くすれば」
「分かりました。わざわざありがとうございます」
紅茶は自分で注ぐのが好きな祢音は、お手伝いさんが部屋を去った後にゆっくりとポットからカップへと淹れていく。
それからミルク、砂糖の順番に入れ、香りを楽しみ一口。
以前、外国産の茶葉を直接取り寄せていると聞いたことがあった。香りが高く味も濃い。産地や収穫時期に寄って異なることが多いので、その都度、取り寄せている地域を変えていると知ったのはつい最近のこと。
夕食後のティータイムは、ホッとひと息出来る穏やかな時間に祢音はいつも眠くなりそうになる。
お腹いっぱいになると眠くなるのは、子供の頃から全く変わっていない。
「もうすぐ伊織さん、来るから…」
コンコン
「伊織です。祢音くん、良いですか?」
返事が無い。
コンコン
再びドアをノックして部屋を開ける。
「あ、寝てる」
クスっと笑うと、人の気配に気付いた祢音が目を覚ます。
「すみません、何か寝ちゃってたみたいで」
「いえいえ、気にしてないですよ。それより行きましょうか」
伊織に促され、飲みかけの紅茶は後で片付けてくれるとのことで、そのまま奏の部屋へと向かう。
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