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第2話-2
「やっぱ食堂は混んでるなぁ。さっさと食って中庭行こうぜ」
「そうだね、人多すぎ…」
私立の中高一貫校で、主に英才教育を受けている子供や生まれ持った才能に長けている子供の間ではこの男子校はとても有名で、卒業生らは難関大学への進学や一流企業に就職、バース系の研究員や公務員になる者が多い。
αを持つ親は挙 ってこの学校に子供を入れたいと、誰もが思う。
βやΩの学生は、少しでも良い企業に就職したいため、自らここを選ぶ者も少なくない。
しかし、Ωの生徒は発情期が来たら抑制剤を飲むか、酷い場合は期間中の休みを取らなければならないのが入学条件で、首輪をするのは自由になっている。
それでも通いたくなるこの学校は、理事長が権力者と言う噂が生徒の中では広まって、更には郊外までも知られるほどになっていた。
「もういいのか?袮音は少食だけど、今日は更に少なくない?」
「あんまり、体調が優れなくて」
「もしかして…」
「ち、違うよ。発情期はまだ…」
「そうだよな、匂いしないし」
陽濔が袮音の首筋辺りを嗅いでみると、フェロモンは出ていない。
昨日のあれは、誘発されただけ…?
そんなことあるの?
でも、今は至って普通に生活出来てるし、ただちょっと体が気怠い感じだけ。
もし発情期だとしたら、陽濔くんがこんなに近くで接する訳ないだろうし。
何かあったら保健室でも行こうと、そう思った矢先に下半身が疼いた気がした。
「体調悪かったら早めに言えよ?」
「う、うん。ありがとう。中庭で休めば大丈夫だと思うし、食堂は人が多かったからね」
「人酔いってやつ?」
「そうかも?あはは…」
ゆっくり2人で中庭に向かって歩く。
草木も茂みだし、新緑の季節になってきた。
独特な緑の薫りが風に吹かれて鼻腔を刺激する。
そろそろ初夏も近付いて、虫たちも動き出すこの時期はガゼボ周辺の花たちも見頃になってくる。
庭師の方たちが、その季節によって花を植え替えしてくれているため、四季折々の花が堪能出来る唯一の場所。
中庭の少し手前、校門が見える所で陽濔が何かに気付いた。
「なぁ、あれって袮音の所の」
「ん?え!?奏様…?」
校門の横に黒塗りの車が止まっていて、袮音がそっちに目を向けた時に奏が降りてきた。
学校に用事でもあるのかと思ったが、伊織も特に何も言ってなかったから、ただ近くで予定でもあるのだろうと考えていたら、運転席から出てきた伊織と共に学校の敷地内へと足を踏み入れる。
遠くから見てもとても目立つ奏に、袮音は何故か茂みに姿を隠した。
「どうした?何で隠れんの?」
「あ、つい…」
「悪いことでもしたのか?」
「違うよ。ただ…朝、学校に来るなんて一言も言ってなかったから。何かあったのかな?」
伊織の左手には、ジュラルミンケースが握られていて何かを持って来たのだと予測。
しばらく行動を伺っていると、来賓者の入口の方へと向かって行った。
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