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第52話
「俺様を選べと言ったはずだ。意味が分かるか」
魔王の言葉に、勇者はようやく顔を見せる。
おずおずと離れた手はそのまま、魔王によってベッドに縫い止められた。
「……俺様は選んだ。貴様を嫁にすると決めた。だから貴様も俺様を選べと言ったんだ。……人間はまったく厄介だな。愛だの恋だの、明確な言葉がなければ話が進められない」
「…………そ、れ、って……」
「言葉を尽くそう。……貴様を愛している。俺様の伴侶となり、生涯寄り添ってくれないか」
魔王は、ベッドに押し付けていた勇者の手を片方持ち上げた。そうして口元に持っていくと、音を立ててキスをする。
まるで誓いのようだった。それに瞠目した勇者は、驚いた顔を戻さない。
「……あ、愛……? 魔王、が、僕を?」
「……貴様、言葉にしても分からないのか」
呆れた様子を見せながら、今度は勇者の手の平に唇を引っ付ける。
「あっ、ま、魔王、ちょ、」
「いつもは減らず口ばかりの貴様が言葉を失うのも悪くはないな。……そうか。貴様は、ストレートに言うと弱いのか」
手の平から、指の間へと舌を這わせる。そうして見せつけるように指を舐めると、最後には自身の唇をペロリとなぞった。
「貴様が欲しくてたまらない。ナカに入ることを許してはくれないだろうか」
とうとう勇者は顔を背けた。頬だけではなく耳まで真っ赤にして、魔王の目にも答えは明らかである。しかし魔王は動かなかった。勇者の耳に「聞いているのか」と言葉を注ぎ込むと、そのまま味わうように耳殻に舌を滑らせた。
「き、聞いて、る、聞いた! っ、聞いたから」
勇者の中心が、早く触れてくれとでも言いたげに揺れていた。それに気付いた魔王は、すぐに自身のそこを擦り付ける。亀頭が触れ合ってもどかしい快楽が生まれてしまえば、勇者の瞳もどろりととろけた。
「聞いた? それで、返事は」
グリグリと、魔王の先っぽが勇者を追い詰める。
返事なんて分かっている。それでも魔王は、勇者の口から聞きたかった。
たった一言で良い。早く挿れてと、それだけを言われたなら、魔王は自身のすべてを勇者に捧げるだろう。
勇者の腰も揺れていた。脚も開いて、魔王を受け入れようとしている。
「勇者?」
「……僕も、愛してる」
それは、思ってもみない一言だった。
魔王の動きが止まる。けれど勇者は、気付かないまま言葉を続ける。
「誰にも渡したくない。僕のことだけを考えていてほしい。……生涯を、お前の隣で過ごしたい」
限界だったのか、勇者が魔王の中心を掴んで、自身の蕾に押し当てた。
「ま、て、勇者! 待て、貴様、今……」
「なんだ、魔王」
勇者が、真っ赤になった魔王を見てニヤリと笑った。勝ち誇ったような笑みだった。
「お前も、ストレートな言葉に弱いんじゃないか」
言いながら、魔王のそれを蕾に擦り付ける。早く挿れろとでも言いたげに、急かすような動きだった。それについ煽られた魔王は、思うままに腰を進めた。
柔い肉を割いて、ナカに押し込める。強烈な快楽が腰から全身に広がった。それに震えながらなんとかナカを貫いて、一気に奥まで到達する。
勇者が震える手を伸ばす。それが魔王の頬に触れると、魔王はこれまでになく優しい笑みを浮かべた。
「……ノア……よく頑張った」
「ん、あ、待て、ま、おう、」
ちゅ、ちゅと優しいキスに襲われながら、勇者はびくりと足を揺らす。
魔王のモノは大きく、勇者のナカをすべて擦っている。勇者の好きなところも奥も、とにかく勇者のすべてに触れて、すべてに刺激を与えているのだ。
それも相手が愛しい人だ。今回はやけに甘やかだし、前回よりも感じ方はまったく違う。
勇者はゾクゾクと腹の奥から這い上がる快楽に堪えながら、必死に魔王のキスに応えていた。動いてほしいのに、動いて欲しくない。もっと求めてほしいくせに早く終わってくれとも思う。これ以上されればあられもなく乱れてしまいそうで、勇者の心は矛盾していく。
「……名前で呼んではくれないか」
魔王が一度、腰を揺らした。
引き抜いて戻しただけである。たった一回のその動きに、勇者はナカを締め付けて、しなやかに背を反らせた。
「ふ、う! あっ……」
「ノア……?」
「や、だ、やめ……!」
ちゅ、ぐちゅ、腹の奥で甘い音を立てながら、魔王が緩やかに律動を始める。
乱暴なわけではない。あくまでも勇者の快楽を引き出すような、そんな気遣った動きだった。
だから余計にダメなのだ。
そんなことをされていると思えば、愛されていると自覚する。魔王の気持ちを浴びながらセックスをするなんて、勇者の脳みそが溶けてしまいそうだった。
「ああ……すごい。ノア、ナカがうねっている。……気持ちがいいのか」
「い、や……やめて、くれ……あっ、魔王……」
唇にキスをされたかと思えば、次には頬に移る。魔王の手は体を這い回り感触を楽しんで、胸の突起をくりくりといじっていた。
「はぁ……ノア。すまない。ゆっくりしたかったが……貴様が可愛すぎて、我慢ができない」
じっと近くで勇者を見ていた魔王が、唐突に体を持ち上げた。
勇者の顔は快楽に濡れていた。瞳が語る。魔王を愛しているのだと伝えている。そんな瞳を濡らして見つめられては、我慢ができるはずもない。
魔王は勇者の腰を掴んだ。そうしてさらに奥に打ち付けると、勇者は思わず身をよじらせる。
「ノア、俺様を呼べ。俺様を見て、俺様だけを感じろ」
「う、ん! あ、気持ち、い、あ、セル、アンセル、」
「……ん?」
ごちゅ! と、最奥を貫かれて、勇者は喉から息を吐き出した。
「ほら、もっと」
「あ! ぐ、や、そこ、ダメ、」
「ノア」
「ぃ、あ! 気持ちい、アンセル、そこ、イく!」
「ああ……ノアのいやらしい姿を見ていたら、俺様も限界がきた」
ガツガツと揺さぶられて、勇者はされるがままだった。
強烈な快楽が繰り返し襲う。それを逃すように頭を振ってみても、魔王は容赦なく次から次に叩きつける。
それも仕方がない。だって勇者のナカは魔王の精子を急かすように、きつく締め付けて離さないのだ。柔らかで熱い肉壁に包まれては、抽挿も深く激しく変わる。
どちらともなく顔を寄せて、やがて唇が重なった。そうして互いに貪るようなキスを繰り返し、舌を擦り付け合う。
「イく、アンセル、出る、から、」
「ん、俺様も奥に……ノア……」
一際激しく奥を穿ち、やがて二人は同時に精を吐き出した。
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