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<5>イラマ編
「あの……智樹さん」
「なに」
俺は今日も、自分ちより落ち着く場所……智樹さんちに泊まりにきていた。あのお風呂場でのおもらし事件以来、一週間は口を訊いてもらえず目も合わせてもらえなくて、家に行っても居留守を使われた。
でも仕事中だけはまともに話してくれて……。ほとんどがお説教ばかりだったけど……そのギャップに心が折れそうだった。定時になった途端、俺を置いてさっさと帰っちゃうし……。けど俺がひたすら謝り続けて、ついに智樹さんが先に折れた。最近やっとまともに喋ってくれるようになったのだ。
「お願いがあるんです」
「……いやだ」
前科があるだけに即刻否定される。読んでる雑誌から目も上げてくれない。まだ何も言ってないのに、悲しい……。
「もう風呂には入らんぞ」
「えっ……そんなあ! 一生ですか!?」
半泣きになりながら縋りつくと、うざったそうにきっと睨まれた。
「ね、もうおしっこの穴いじったりしませんからっ。一緒に入ってエッチするだけでいいですからっ」
「うるさいっ! 喋るな!」
ガンッ!
いつもの鉄拳が飛んでくる。本気で殴られるから日に日に細胞が少しずつ死んで、もっと馬鹿になっているような気がする。
「結局するんじゃねーか!」
「うぅ……だって……」
智樹さんの裸見て、我慢できるわけないのに……。俺が頭をおさえて蹲っていると、殴った智樹さんも手が痛かったみたいで、「石頭……」と涙目になりながら呻いていた。
「……何ニヤけてんだよ」
それが妙におかしくて、こういうやりとりが楽しくて幸せで笑った。
「ううん?」
なんでもないです、と言いながらちゅっと触れるだけのキスをする。
「っ……」
「智樹さん」
おでことおでこを合わせて見つめ合う。
「……口でしてほしいんです」
唇をなぞりながら言うと、カッと触れてる顔が赤くなった。
「そ……れは、無理……」
「どうして?」
やっぱり男同士なのが気になるのかな? 自分にもついてるものを舐めるのは抵抗があるのかもしれない。俺は智樹さんの身体だったら、どこでも興奮するけどな……。
「……わかりました。じゃあキスしていい?」
だめって言われる前に口を塞いだ。喉がひくっと動いたけど、声はそのまま俺の口の中に吸い込まれてく。
「んっ……」
後頭部を掴んで、もっと強く引き寄せる。
「ぁ……っ」
肉厚の舌を捕まえて、じゅるると音をたてて吸った。
「ふぁっ……んっ、ん――っ……っ!」
歯列をなぞってから解放する。ちょっとキスしただけなのに、智樹さんははぁはぁして息が上がっていた。
「お、前……強すぎ。痛い」
「痛い?」
無言で頷かれる。俺は慰めるようにして、もう一度口付けた。
「おい……っ…ん……」
今度は優しく吸った。ちゅ、ちゅ、と音を立てて甘噛みしてやる。
「まて……って……んぅ……っ」
俺はもっと獣みたいな荒々しいキスが好きだけど……智樹さんが気持ちいいって言うなら、こういう甘いキスもいいかな……。
「これくらいでいい?」
返事は返ってこなかったけど、そのかわりに小さく首が動いた。
「ふ、っ……ぁふっ……っ」
何度も角度を変えて優しいキスを繰り返す。そのうちきゅ、と俺の背中に手を回してくれて、嬉しくて涙が出
そうだった。
「へへ……」
広い背中をぎゅっと抱き締めた。智樹さんの匂い……安心する。
「あったかい」
体温が心地よくてぎゅーってしてると、
「……脱げ」
急に冷静な声が降ってきて、がばっと顔を上げた。きっと今の俺の目は期待で爛々に光っているに違いない。だって……
「し、してくれるんですか?」
上ずった声で聞くと、ふいっと目を逸らす。
「智樹さん……?」
「さっさとしろ!」
うわ……ほんとに……してくれるんだ。期待で心臓がバクバクしてくる。智樹さんの気が変わらないうちに、音速で下着ごとズボンを脱いでベッドに腰掛けた。
「………」
「………」
脱いだはいいけど……長い沈黙。俺はフルチンのまま無言。きっと一分くらいだったんだろうけど、永遠みたいに感じられた。
「俺、は……しない」
「えっ?」
「だ、から……お前の好きなように、しろ……」
それって……
………。
智樹さん、普通にするよりもとんでもなくエロいこと言ってるってこと、気づいてないんだろうか……? 俺の好きなように動かしていい、ってことで……
「……酷くしてもいいですか?」
ムラムラしてきて、嗜虐心が頭をもたげる。酷くしたら、またきっと一週間口を利いてもらえない。けど欲望に逆らえなくて、目の前の景色がぐらっと揺れる。
智樹さんは答えに迷ってたみたいだけど、はっきりと言った。
「いいぜ」
目が合う。
「……酷くしても」
「っ……」
愛しい人の顔がぐにゃりと歪んで、下半身に血が集まるのを感じる。早く、早く犯したい……。智樹さんの口の中……。
「……くわえてもらえますか」
そう言うと、早速ぎろりと睨まれた。自分からしてくれるって言ったのに……。やっぱり恥ずかしいんだろうな。今から乱暴にすると思うとゾクゾクする……。
「してくれるんでしょ?」
ほっぺをなぞって促すと、すっごく嫌そうな顔をしながら震える舌を近づけて……そっと咥えてくれた。俺の妄想が具現化したみたいな光景。「これがいつも智樹さんの中に入ってるんだよ」と言いたくなったが、おっさんくさくてやめた。
「口、おっきく開いて……」
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あらすじ画面もご参照ください。l
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