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<9>受け視点編
宮内智樹と出会って、俺の人生は変わった。
いや、正確には、こういう関係になってから、だが……
「お前、俺といて楽しいの?」
俺んちでだらだら過ごすのがいつの間にか恒例になった日曜日、部屋の隅に積んでいたバイク雑誌を捲るトモに聞いてみた。
この質問をするのには、少し勇気がいった。ここでそっけない返事が返ってきたら、さすがの俺も少し落ち込む。一日二日の関係ではないのだから。
「ん? 楽しいよ」
即刻返ってくる返事。こいつ、本当に考えて喋ってるんだろうか。
「どうして急にそんなこと聞くの?」
「別に」
普通に答えたはずなのに、トモはニヤニヤ笑ってこっちに近づいてくる。本当に思っていることを隠せない奴だ。
「俺に飽きられるんじゃないかって、不安になっちゃった?」
「…………」
よくもまあ、そんなおめでたい発想がぽんぽん出てくるもんだ。でも、俺はこいつのこういう脳天気なところが嫌いじゃない。俺には無い部分だからだ。魅力のひとつだと思ってる。本人には口が裂けても言ってやらないが。
「なんてゆーか、俺にとって智樹さんは空気みたいなもんかな。あ、もちろんいい意味でね? 隣にいて当たり前だし、いなくなったら生きていけない」
「っ……」
また恥ずかしい台詞をぺらぺらと……言ってて恥ずかしくならないんだろうか。
「不思議だよね。家族みたいな感じ。お兄さんみたいでもあるし、お父さんみたいな感じでもある」
胸がきゅっと摘まれたように痛くなる。俺はこの先、女であれ男であれ、ここまで言ってくれる奴と出会えるのだろうか。
「っ」
……不意打ちでキスされる。
「……なんだよ」
「して欲しそうな顔してたから」
「してな……んぅっ」
ぬるりと舌が入ってきて、歯列をゆっくりとなぞっていく。今の今まで全くそういう雰囲気じゃなかったのに、一瞬で空気が変わった。昔、女と付き合っていた時もそうだったけど……こういう駆け引きみたいな空気はどこかむず痒くて、いつまで経っても慣れない。
「っん……っんぅ……」
以前は乱暴で獣みたいなキスばかりだったけど、「吸いすぎ」と言ったらすぐ直った。本当に犬みたいな奴だ。
「んっ…! ふ……は……っ」
大人しいキスになったけど、ねちっこくてなかなか離してくれない。時々ぞっとするほど荒々しく上顎を擦られて、腰がくだけそうになる。こんなキスは知らなかったし、それほどまでに燃え上がる相手と出会ったこともない。
「ぁ……んっ…ふ、……っ」
別に知らなくてもよかった。けど、こいつは……
「っはあっ……!」
解放される頃にはいつも酸欠気味だ。必死で息を整えていると、ひょいっとベッドの上に持ち上げられて押し倒された。こいつ、こういう関係になる前はそうでもなかったのに、ここ数ヶ月でやたら二の腕の筋肉が発達したような気がする。
「っおい……!」
「したい」
「こんな昼間から……」
「カーテン閉めるし、窓も閉める。ね? いいでしょ?」
そんなの当たり前に決まってる。こいつを動物に例えたら、万年発情期の犬だ。いくらやったって毎日盛る。シャツを脱がそうとしてきて、こうなったらもうどうしたって止まらないことはわかってるから……脱がしやすいように力を抜いた。ズボンもあっという間にはぎ取られる。
「んっ……!?」
無言で口の中に指を突っ込まれてかき回される。舌の厚みを確かめるようになぞったり、上顎を擦ったり……。俺の意思を無視したそれにイラっときて、節くれた指を軽く噛んでやった。
「……ふふ」
痛いはずなのに嬉しそうに笑って、引き抜いた指を後ろの穴にあてがった。
「っ……!」
そんなところ、誰かに触られるなんて考えたこともなかったのに、身体を作り変えられた。にゅるっと一本だけ入ってくる。すぐに二本目が追いかけてきて、二つの指で穴をくぱっと拡げた。
「ひ……っ」
横に開いたり、縦に開いたり……。ぐにぐにと内側を犯していく。
「あぅっ……ぁ……!」
開いた隙間から空気が入ってきてスースーする。気持ち悪い。
散々かき回して指が出ていったかと思うと、目の前の男はその場でシャツを脱いだ。見るつもりはなくても目に飛び込んでくる。いつも智樹さんの腹筋は綺麗だの固いだの胸もスゲーだの言うけど、こいつもなかなか均整のとれた身体をしてると思う。
膝立ちになってかちゃかちゃとベルトを外し始めて……その生々しさを直視できなくて、さすがに目を逸らした。
「よいしょ」
「!」
全裸になって覆い被さってきたかと思うと、手をとられて指を絡ませられた。そのままシーツに縫いつけられる。
「おいっ……! なん……」
「たまにはいいでしょ? 顔、見ながらさせて」
いつも、後ろ……から、突っ込むくせに。いやだ。みっともない顔を見られたくない。
「いやだ……っ! っ、あ……!?」
くちっ、と熱いものが下に触れる。もう何回も何回も何回も経験した感触。全身がぞわっとして鳥肌が立った。
「ん……、入るよ…」
「あ……っ」
「力、ぬいて……」
「ひ、ああぁっ」
ずぷんと一気に深くまで貫かれて、目の前が真っ白になった。一瞬、自分がどこにいるのかわからなくなる。
「あー…イイ……」
「ぅ……あ……ぁあ、……っ!」
「入り口はゆるゆるなのに、中は……っ、はじめてのときみたいに、きつ……」
カッと頭が熱くなる。こんなにしたのはどこのどいつだと思ってる。こんな……こんな場所入れて、きつくないほうがおかしいに決まってる。
「智樹さん……ぎゅって締めて……いきんでみて?」
……食いちぎる勢いで締め付けてやろうと思ったのに、力が抜けてうまくいかなかった。
「んっ……んーっ…! ん……っ」
「そうそう……うん……締まってる…」
こうすると、嫌でも中のモノのカタチをありありと感じる。ドクドク脈打ってるのがわかって、妙に気恥ずかしかった。血管の形まで感じる気がする。こんなものが身体の中に入るなんて、今でも何かの冗談なんじゃないかと思う。
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あらすじ画面もご参照ください。l
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