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<11>キスだけ編
「ただいまぁー」
靴を脱ぎながらリビングまで届くように声を張り上げると、すぐにバタバタと足音が聞こえてきた。
「おかえりなさい」
飼い主を出迎えるでっかい犬……みたいなヤツ。こっちが脱力しそうになるくらい、ふにゃっとした幸せそうな顔。こんなやりとりが当たり前になったのはいつからだろう。
「お前な……いちいち来なくてもいいって。座ってろよ」
俺にはトモのケツで犬のしっぽがぱたぱたしているのが見える。どうしようもないバカ犬だ。けど悲しきかな、俺はこいつの隣にいるのが一番安心できる。
そのままリビングに向かおうとすると、手を取られて壁に押しつけられた。
「何……、んっ」
いきなりキスされる。反射的に口を閉じた。別に嫌だった訳じゃない。急すぎて、びっくりしただけ……。すぐ諦めるだろうと思ったのに、歯列をつつ……となぞってくる。ゆっくり、何か訴えてくるみたいに。
「…………」
目が「早く開いて」って言ってる。歯をちろちろくすぐってきて、むず痒い……。こうなると先に進むまで動かない……のは、嫌になるほど知っているので、仕方なしに少しだけ開いた。
「っ、ん……!」
少しの隙間に、逃がさないとばかりに遠慮なく入り込んでくる。
「! ふ……っぁ」
すぐに深くなって背筋がぞくぞくした。触れ合う部分が熱を持ったみたいに熱い。
「っふ、ふ……、は……っ」
ちゅう、ちゅう……と慈しむみたいに吸ってくる。乱暴すぎて苦しいからやめろと言ったのは俺だけど、こんな……酒も入ってない、まともな時にゆっくりされると、恥ずかしいやら逃げたいやらでどうしようもなくなってくる。
「はぁっ……っ、待て……」
「んー……?」
「お前……しょっちゅう盛るの、やめろ……中坊じゃあるまいし」
一瞬離れたスキに言ってやった。
「中学生はこんなエロいキスしないでしょ」
「ぁ! こら……っ…、んむっ」
言いながらまた顔が近づいてきて塞がれた。何度も何度も角度を変えて貪られる。舌が絡むたびにぐじゅ……と頭の中に音が直接響いて、身体が震えた。
「ふぅ、っ……! ん、んっ……んく、……」
唾液が口の端から溢れそうになって、仕方なしに飲み込む。同時に、目の前のバカも同じように喉を鳴らす音が聞こえた。そんなの聞きたくないのに、勝手に耳に飛び込んでくる。
「はあ……智樹さんの、おいし……もっと飲ませて……」
「ん゛ッ!? ん゛っ……!」
瞬間、舌をじゅっと強く吸われた。引っこ抜けるんじゃないかと思うほど、強く……。痛いくらいなのに、下腹がぞくぞくした。
「ぁ……」
トモの喉が小さく動くのを見て、羞恥でかっと血が上った。
「足りない……もっとちょうだい」
「ばっ……んうぅっ」
もっとったって……これ以上どうしろってんだよ……! 早く、と催促するように舌を甘噛みされる。
「ふぁ……、!」
「んー……」
舌だけ引っ張り出されて、噛んだり、吸われたり、好き勝手に弄ばれる。
「えぁ、ぁ」
まぬけな声が漏れる。やめさせたいけど、身体に力が入らない。こんなキスされたら……腰がくだけて……逃げ出せない。
「智樹さん、いい匂い……たまんない……すげー好き……」
……まるで呪いの言葉みたいだ。脳の奥までこびりついて、言われるたびに身体が跳ねる。耳にちゅっとキスされたかと思うと、中に舌が差し込まれた。
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あらすじ画面もご参照ください。l
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