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第8話

数日後の放課後、実力テストの結果が出た。純一は思っていた通り、学年順位で見れば下から数えた方が早かったので、これからの勉強に付いていけるか不安になる。 「どしたの? 実力テストの結果、そんなに悪かった?」 湊がテスト結果を覗いてくる。見られて減るものではないので見せると、苦笑された。 「俺もイマイチだったから、これから一緒に頑張ろ」 「とか言って、結構いい順位なんじゃないのかよっ」 語尾に合わせて湊の結果表を奪おうとしたが、純一の手は空を掻いただけだ。 「なんだよ、俺のは見せたじゃねーかっ」 「やだ。俺としては不本意な結果だから」 「良いから見せろっ」 純一は立ち上がって飛ぶが、それ以上に高い所へ湊は手を上げる。背の低い純一は「俺の届かない所にやるな」と理不尽な怒りをぶつけた。 「おい、何をじゃれている」 「あ、司」 司が来たタイミングで、湊は腕を下げた。隙あり! と叫んで結果表を奪った純一は、表の数字を見てムカムカしてくる。 「おい! 湊お前、何が不本意な結果だ? 5位ってどういう事だよ!?」 湊は純一から表を返してもらうと、不本意は不本意だよ、と肩を竦める。この順位で不本意とは、贅沢が過ぎる、と純一は喚くが、もう屁理屈もいいところだ。 「おい司、お前は? 表持ってるよな?」 「ああ。……どうしてそんなにイライラしてるんだ?」 早く出せ、と言う純一に、司は素直に表を出す。 純一はそれを奪うように受け取ると、0と1しかない表に怒りを覚えた。 「……司。お前満点1位って何だよ! 俺だけ仲間はずれじゃねーかっ」 「……俺と純一は友達のはずだが?」 司は純一が何に対して怒っているのか、本気で分からないらしく論点がズレた回答をしている。 「あはは、司その返し最高。純一、覚えてない? 新入生代表で挨拶してたの、司だよ?」 純一はそんなの覚えているはず無いだろ、と表を司に突き返した。底辺は底辺同士で傷を舐めあえると思ったのに、仲のいい二人は学年トップクラスだ。 「何で頭良いのにここに入学してんだよ……」 イライラして疲れた純一は、その場に座り込む。 「一番近い学校だったから」 「あ、同じくー」 湊が「三人で勉強会すれば、きっと純一の成績も上がるよ」とニコニコしてるが、純一は湊を睨んだ。 「楽しんでるだろ」 「あ、ばれたー?」 純一はため息をつく。 少しずつ分かってきた事だが、湊は女子が騒ぐ程の外見をしていながら、女子とはあまり積極的に接触しないようにしている。前までは違ったらしいのだが、純一といると楽しいしね、と先日言われ、実際色々からかわれてムカつく事もしばしばだ。 (イケメンでモテて、頭も良いとかどれだけ持ってるんだよ) 彼女が欲しい純一としては敵でしかないのに、司と湊といると楽しいと思い始めている。 中学の時には乏しかった友達との時間。こういう時間を、純一は欲しかったのかもしれない。 「もー、お前ら覚悟しろよ? テスト前は俺ん家で合宿だからな」 「お、良いねぇ」 湊と司が手を貸してくれて純一は立ち上がる。いつものように、三人は笑いながら帰路に着いた。

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