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第10話
四人はゲームセンターに着くと、中学の時に来た時とはだいぶ様変わりしていた。
「わぁ、プリントシール機が随分増えたね」
エリカが声を上げる。エリカの言うように、前までそんなに台数がなかったプリントシール機が、ゲームセンターの半分を占めていた。
そのせいか客層は女性が殆どであり、男性はカップルと来ている人のみだ。
「……せっかくだから撮っていくか?」
哲朗がまた提案するとエリカも賛成する。純一は興味が無かったので、二人で撮ってきなよ、と言った。
すると、ガシッと腕を掴まれる。何事かと見ると、司がグイグイ引っ張っているのだ。
「行くぞ」
「ちょ、まさかお前、撮りたいとか言うのか?」
「ああ」
マジかよ、と純一は引っ張られるまま、ブースの中に四人で入る。
ブースの中はさながら小さなスタジオだった。
「私も久しぶりだけど、どんどん進化していくねー」
操作はエリカに任せていると、司が画面を見ながら純一に密着してくる。
「ちょ、近い近い」
「近付かないと四人入らない」
司は画面を指差す。確かにそうだけども、と純一は思うが、そこまで密着しなくても、撮りようはあるだろう。
「はいはい、撮影始まるよー」
エリカと哲朗は前後に並んで、お互いの顔が写るように立っているだけなのに、司は純一の後ろから抱きついて、顔を純一の肩に載せるような形になっている。
「純一、笑え」
無表情で言ってくる司に「笑えるかよ!」とツッコミを入れたところでシャッターが下りる。
「仲良いね、二人とも」
「エリカちゃん、ほんとにそう思って言ってる? 早稲田、他にもやりようがあるだろっ」
そう言いながら純一は腕を剥がそうとするけども、ビクともしない。位置を変えるエリカ達に対して、司は動こうともしなかった。
「ほら純一、次撮るぞ」
「いや、だから離せって!」
そこでまたシャッターが下りる。まともに写っていない純一に司がダメ出しをする。
「純一、ちゃんと写れ」
「お前が離れれば良いんだよっ」
助けてくれ哲朗、と純一は視線を送るが、面白がっているのか笑って「次のカウントダウン始まったぞ」と言うだけだ。
純一は仕方なしに引きつった笑いを浮かべる。
結局、まともに撮れたのは1枚で、エリカが素敵に落書きして、とても可愛い1枚になった。
四人でそれを分けてそれぞれ眺めるが、純一はすぐにカバンにしまった。
男衆は割とすぐにプリントシールをしまうが、エリカだけはずっと眺めている。
「エリカちゃん、どうしたの?」
「ん? 早稲田くんが意外と馴染んでいるのが面白くって。あ、悪い意味じゃないよ?」
今日会ったばかりなのにね、とエリカは笑う。
「そうだな。早稲田、今度また四人で遊ぼう」
「ちょ、何を言い出すんだよ哲朗」
哲朗とエリカは何故か司の事が気に入ったようだ。純一の反論に、不思議そうに首を傾げる。
「何か変な事言ったか? なぁ早稲田」
「いや……俺としても、楽しく純一と一緒にいられるなら願ったり叶ったりだ」
「わー! だからもう、そう言う思わせぶりな発言やめろってば!」
純一は慌てて司の口を手で塞ごうとするけども、その横で何かに気付いたらしい哲朗が「なるほど」と言っている。純一は誤魔化すのに精一杯で、その呟きには気付いていない。
「ホントに早稲田くんは、純一くんの事が好きなんだね」
エリカは笑いながら言うので、冗談というか、友情の意味で言っていると思うが、純一は気が気じゃなく動揺し、それを哲朗が笑う。
「ほんと、早稲田面白いわ。これからもよろしくな」
「……? ああ」
純一はどっと疲れが出てきて、もう帰りたい、と心の中で思うのだった。
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