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第14話

校外学習が終わってから、純一はクラスメイトに話しかけられる頻度が更に増した。男女関わらず、気のいいヤツだなと言われる事が増え、司と湊に絡まれているだけなのに何故なんだ、と純一は思う。 (高校デビュー、上手くいってるっちゃあいってる、のか?) 純一の最終目標は彼女を作ることだが、入学式に誰にも声をかけられなかった事から考えると、上々だ。 「って、思うんだけど、哲朗はどう思う?」 『まあ、とっつきやすくなったってのは、いい事なんじゃないのか?』 ある日の夜、純一は哲朗と電話をしていた。司や湊に絡まれた愚痴を、毎日のようにこぼしている。 ちなみに純一は、湊にも告白された事は話していない。司だけでも衝撃だったのに、湊の事も話すのは何故か嫌で躊躇ったのだ。 『それにしても、飽きずにそいつらの話題が出てくるなぁ。楽しそうでなにより』 「何だよ、他人事だと思って」 哲朗は笑う。彼は「他人事ついでに」と続けた。 『本当にお前の事気に入ってるんだなって思うよ。実際お前は可愛いし』 「可愛い言うなよ」 純一は口を尖らせた。一応男子高校生なのだから、可愛いという形容詞は言われても嬉しくない。 『今はその容姿を活かして、良いモテ方してるようで安心した』 「……なんか全然嬉しくないんだけど」 そうか? と哲朗は至って真面目だ。 『中学の時は、悪いモテ方してたじゃないか。あれより全然良いだろ?』 彼の言葉で純一は、中学生の時の事を思い出しかけて、首を振ってそれを消した。あれがあったから、余計に彼女を作りたいと思ったし、誰も自分の事を知らない高校へ行けば、人生巻き返すチャンスがあると思っていた。思っていたのに。 『こう言うとお前は怒るかもしれないけど、お前について相談された事はたまにあったからなぁ』 「はぁ? 哲朗、そんな事全然言わなかったじゃないかっ」 言うかよ、と哲朗はため息をつく。 哲朗が相談されたということは、哲朗と同じクラスになってからの話だろう。それなら、丸1年彼は黙っていたことになる。 『とにかく、良い方向に好かれているなら良かったって俺は思ってる』 確かにそれは間違いないけど、と純一は思うが、どうも思い描いていた高校生活とは違う。 「なぁ、哲朗のクラスで可愛い子紹介してよ」 『……工業科に来る女子だぞ? お前なんか理詰めで言いくるめられて尻に敷かれるのがオチだ』 それは工業科の女子に失礼だろう、と思うが、純一のイメージもそんなに変わらなかったので黙る。 『それに、司の事もちゃんと考えてやりな。このまま思わせぶりな態度取ってちゃ、そのうち泥沼化するぞ』 哲朗の言葉に、純一は言葉を詰まらせた。さらにもう一人に告白されて、純一の取り合いのようになっていることは、話した方が良いだろうか? でも、そうなれば、自分が男にばかり好かれてるみたいで嫌だ。 『純一? 話したい事があるんだろ? さっさと言え』 「な、何で分かるんだよ……」 数秒考えてただけなのに、哲朗に何故かバレてしまい、ボソボソ声になってしまう。 『当たり障りのない会話を続けるなら、俺は切るけど?』 「分かった。分かった言うって」 純一は渋々、湊からも司と同じ意味で好きと言われた、と話した。女の子が放っておかない彼なのに、最近自分といると、女子が嬉しそうにこちらを見ているという事も。 電話口で哲朗の深いため息が聞こえる。 『お前さっきの話、人前で俺の物アピールされてるって事じゃないのか?』 「う……」 純一は言葉に詰まる。図星だからだ。 『ちゃんと断った方が良いんじゃないか?』 哲朗の言葉に、純一は分かってるけど、と濁す。 その手の話をするのが面倒なのだ。 そう話すと、哲朗はあのな、と話し出す。 『想像してみろよ、純一が女子に告白しようとする、付き合える確率はかなり低い。どうだ?』 純一は、そんな玉砕覚悟で行く告白なんて、怖くて行けない、と思う。 「あ、そっか……」 司たちはそれでも告白してきたのだ。それなら純一も、同じだけきちんと向き合うべきではないだろうか。 「……うん、俺、ちゃんと考えてみるよ」 純一の言葉に哲朗はおう、と言って、二人は通話を切った。

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