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第15話

とはいえ、話を切り出すにはそれなりの勇気がいる。しかも、もうすぐゴールデンウィークで、それが明けたら中間テストだ。 とりあえず、ゴールデンウィークはテスト勉強をしなければ、授業に既についていけてない純一はピンチだ。 この司と湊に告白された問題は、テストが終わるまで置いておこう。 「と、言う訳で俺に勉強を教えて下さい、お願いします」 昼休み、いつものように三人でお昼ご飯を食べていた純一は、二人に頭を下げた。 「こっちは全然大丈夫だよー。むしろなんか楽しくなりそうで良いね」 湊はいつものようにニコニコして応えてくれる。 「司は?」 純一は司を見ると、弁当のご飯を頬張っていた。それを飲み込むまで待っていると、箸を置く。 「そもそも勉強会って何をするんだ?」 真顔で聞く司は、本気で分からないようだ。 湊が「うわ、司って勉強しなくてもいい点取れちゃう人?」と驚いている。 すると司は、「テスト対策ならするが、それよりも面白い本があると、そちらを優先してしまうな」と、再び箸を取った。 純一はそれを見ていて、喋りながら食べないとか、時々育ちが良い感じを見せるよな、と思う。 「それそれ。テスト対策をみんなでやるの。俺、初回のテストから赤点取りたくない」 純一はもう一度手を合わせて拝む。 「テスト勉強には興味が無いが、純一と一緒にいられるならやろう」 「あ、ありがとう」 何だか動機が不純のような気もするが、と純一はとりあえずホッとした。成績学年トップクラスの二人に教えてもらえば、少しは点数が取れそうだ。 「それより……」 司が弁当を食べ終わって、弁当箱の蓋を閉める。 「純一、箸が進んでいないようだが、美味しくなかったか?」 「えっ?」 純一は弁当箱を見る。あの約束以来、司は律儀に毎日弁当を作ってきてくれる。いつも通りとても美味しいけれど、余計な事を考えていて食べるのが遅くなっていた。 「いや、美味しいよ。いつもありがとうな」 笑って再び食べ始めると、司の動きが止まった。 「あ……」 湊が声を上げる。 「なに湊? ……って、司! 近い近い近い!」 司が純一にもたれかかるようにして近付いて来ていて、純一は押しのけようと司の肩を押す。 「ちょ、何だよ!?」 「何だよって……キスしたいと思った」 「はぁ!?」 純一はお弁当箱を持って避難する。今の流れでどうしてそうなるのか、純一は理解できない。 「あはは、司ってホント直球」 「湊も笑うなよ!」 他人事だと思って、と純一は怒るけども、湊は「今のは仕方ないよ」とまだ笑っている。 仕方ないって何だ、と純一は混乱する。全然、キスをしたくなるようなシチュエーションではなかったはずだ。 「とにかく! ゴールデンウィークは俺の家で勉強会な!」 無理矢理話題を変えると、湊が「彼女欲しいって言う割には、ニブチンなんだから」とムカつくことを言ってきた。 (……こんなんでまともに勉強会できるのか? いや、俺の今後の成績を決めるんだ、真面目にやってやる) 高校デビューのためには、成績もある程度良くなければ。 純一はそう思って、弁当の残りをその場でかき込んだ。

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