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12.この身についての回想
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今にして思えば、目覚めた時に感じた違和感をもっと早くに追究すべきだった。
この身は、完成するまでに長い年月を経るように作られていた。
それは莫大な力を集積する為の時間であり、人間に希望を託した期間でもあった。
嘆きが積りきらなければ──人々が争いを止め、心を正し、手を取り合って生きてる世になって行けば、この身は生まれ落ちる事なく、穏やかに消失して行く。
だが、実際には予見されていた期間の半分を待たずして目覚めの時は来てしまった。
全身を満たす魔力が悲しくも、己を奮い立たせた事を覚えている。僅かに感じる痛みのようなものは、完成が早まってしまった為だろうか。否、それよりも。と、眺め続けて来た惨劇が足を進ませた。
一刻も早く、人間を助けなければ。
彼等が死地へ旅立った日と変わらず嘆きと苦しみが溢れる世界を救う為、影ながら支え、時に自ら赴き、魔術でなければ抗えない現象や生物を食い止め、人間同士の争いを収め、打ち拉がれそうな者達に希望を与えようと尽力するうちに、初めの違和感は意識の隅へ追いやられていった。
動き続けられる限りは、力が宿り続ける限りは、立ち止まる事があってはならない。一人でも多く、少しでも早く、昨日より僅かでも平穏な日々を送れるように、もっと、もっと、もっと、もっと……。
だが、ある時、気が付いてしまった。
己の内を巡る力が、その器を突き破って出て来ようとしている事を。
救う為に存在しているはずのこの身が、破滅をもたらそうとしている事を。
自覚してからの症状の進行は早いように感じた。
力を使い過ぎれば抑える為の魔力が足りなくなり、蓄え過ぎてしまえば比例して暴走する力も増える。
消費の為の活動と回復の為の眠りを繰り返し、自浄作用で均衡を保ちながら使命を果たせていたのは、いつまでだったか。
遂には、人々を助けるよりも自身の力を抑える事が平和を保つ為に優先すべき事となり、それすら誰かの助けがなければ儘ならなくなった。
だが、止まる事は許されない。
走れ、救え、満たせ、叶えよと、血肉を構成する魔力が急き立てるから。
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