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一人じゃ見られない景色 4
悠貴さんは一瞬ボクから視線をそらして、ゆっくりと玄関口に入って、履いていたスニーカーを脱ぐ。
ボクが用意したスリッパに足を通しながら、家の二階を気にするように、眉根を寄せながら首を伸ばした。
「・・・美影はいるのか?」
「あ、ううん。ロケに行ってるから一昨日からいないですよ」
「そうか・・・」
ほっと安堵(あんど)したように吐息を漏らす悠貴さん。
美影ちゃんが大の苦手なのを知っているので、ボクは思わずくすりと笑ってしまった。
それに気付いた悠貴さんが、苦虫を噛み潰したように、表情を歪めた。
「しょうがないだろ、あんだけ敵意むき出しで攻撃されたら、苦手にもなるさ」
「うん、わかってます。ごめんなさい、美影ちゃん素直だから」
「良くも悪くもな・・・」
うんざりしたように軽く吐息を吐いて、それでもボクには笑みを向けてくれた。
ダイニングキッチンに入ると、お母さんが出来上がった朝ご飯をテーブルに並べているところだった。
炊きたての白いご飯、作りたての豚汁なみに野菜たっぷりのお味噌汁、卵焼きにアジの開きに納豆。それにほうれん草におひたし。
日本の朝食そのもののご飯が、四人分並べられていく。
お母さんがいると思っていなかったのか、悠貴さんが慌てて背筋を伸ばして、挨拶をする。
「おはようございます。お邪魔します」
「おはようございます。いつ見てもイケメンで礼儀正しいわね〜。朝ご飯まだでしょ?いっぱい食べてね〜」
お母さんはニコニコ微笑みながら、朝ご飯を食べて行くように言ってくれた。
悠貴さんは急に褒(ほ)められて恐縮(きょうしゅく)したのと、朝ごはんを用意してくれていたことに、更に恐縮してしまっていた。
「いえ、大丈夫です。お気遣い有り難うございます」
ちょっと緊張気味に固辞(こじ)する悠貴さんに、お母さんがのんびりとした口調で畳み掛ける。
「あら、でももう作っちゃったし。魅華(みか)も美影もいないし、お父さんと二人じゃこんなに食べれないわ」
「あ・・・では、お言葉に甘えさせていただきます」
「どうぞ、いっぱい食べてね。薫は少食だから作り甲斐(がい)がないのよ〜」
話しながらお母さんは、何処か嬉しそうに見えた。
悠貴さんは、お母さんに促されるように椅子に座る。
そこは美影ちゃんの席で、ボクはいつものようにその隣に腰掛けた。
そしてお母さんも座ったので、三人でいただきますをする。
ボクにとっては毎日食べている、いつものご飯だけど、悠貴さんは何だか嬉しそうに楽しそうに、美味しいと言いながら食べていた。
しばらくしたらお父さんが起きてきて、悠貴さんはきちんと立ち上がって挨拶してくれたり。
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