4 / 16

一人じゃ見られない景色 4

悠貴さんは一瞬ボクから視線をそらして、ゆっくりと玄関口に入って、履いていたスニーカーを脱ぐ。 ボクが用意したスリッパに足を通しながら、家の二階を気にするように、眉根を寄せながら首を伸ばした。 「・・・美影はいるのか?」 「あ、ううん。ロケに行ってるから一昨日からいないですよ」 「そうか・・・」 ほっと安堵(あんど)したように吐息を漏らす悠貴さん。 美影ちゃんが大の苦手なのを知っているので、ボクは思わずくすりと笑ってしまった。 それに気付いた悠貴さんが、苦虫を噛み潰したように、表情を歪めた。 「しょうがないだろ、あんだけ敵意むき出しで攻撃されたら、苦手にもなるさ」 「うん、わかってます。ごめんなさい、美影ちゃん素直だから」 「良くも悪くもな・・・」 うんざりしたように軽く吐息を吐いて、それでもボクには笑みを向けてくれた。 ダイニングキッチンに入ると、お母さんが出来上がった朝ご飯をテーブルに並べているところだった。 炊きたての白いご飯、作りたての豚汁なみに野菜たっぷりのお味噌汁、卵焼きにアジの開きに納豆。それにほうれん草におひたし。 日本の朝食そのもののご飯が、四人分並べられていく。 お母さんがいると思っていなかったのか、悠貴さんが慌てて背筋を伸ばして、挨拶をする。 「おはようございます。お邪魔します」 「おはようございます。いつ見てもイケメンで礼儀正しいわね〜。朝ご飯まだでしょ?いっぱい食べてね〜」 お母さんはニコニコ微笑みながら、朝ご飯を食べて行くように言ってくれた。 悠貴さんは急に褒(ほ)められて恐縮(きょうしゅく)したのと、朝ごはんを用意してくれていたことに、更に恐縮してしまっていた。 「いえ、大丈夫です。お気遣い有り難うございます」 ちょっと緊張気味に固辞(こじ)する悠貴さんに、お母さんがのんびりとした口調で畳み掛ける。 「あら、でももう作っちゃったし。魅華(みか)も美影もいないし、お父さんと二人じゃこんなに食べれないわ」 「あ・・・では、お言葉に甘えさせていただきます」 「どうぞ、いっぱい食べてね。薫は少食だから作り甲斐(がい)がないのよ〜」 話しながらお母さんは、何処か嬉しそうに見えた。 悠貴さんは、お母さんに促されるように椅子に座る。 そこは美影ちゃんの席で、ボクはいつものようにその隣に腰掛けた。 そしてお母さんも座ったので、三人でいただきますをする。 ボクにとっては毎日食べている、いつものご飯だけど、悠貴さんは何だか嬉しそうに楽しそうに、美味しいと言いながら食べていた。 しばらくしたらお父さんが起きてきて、悠貴さんはきちんと立ち上がって挨拶してくれたり。

ともだちにシェアしよう!