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一人じゃ見られない景色 7
そして、これからどうしようかという話しになり、BBQの予約が12時から入っていること、あと1時間30分しかないことがわかり、遊園地は諦めて施設内を散歩することにした。
施設の受付でもらった施設や周辺の地図を広げて、悠貴さんが遊園地のあるほうへ散歩に行こうと言う。
反対側はサバイバルゲームのエリアがあったり、キャンプ場があるだけなので、特に行かなくてもいいだろうとのことだった。
ボクは悠貴さんと一緒なら何処でもいいから、異論はなかった。
それからは緑の多い施設内をのんびりと散策した。
よく晴れて青く高い空を見上げたり、湖のほうから吹いてくる涼しい風を感じたり、生い繁(しげ)る木々の匂いを嗅いだり。
降り注ぐ太陽の熱と光を浴びて、白い入道雲を見てあの形はあれに似てるとか、空を走る鳥が何の鳥か当てたり。
そんな他愛(たあい)もないことを話しながら、日々の生活で忘れていたことを、ゆっくりと思い出す。
子供の頃は当たり前のように知っていたことなのに、いつの間にか忘れてしまっていた。
思い出さなかったことを、思い出した。
悠貴さんも同じことを感じているのか、眩しそうに空を見上げて、瞳を瞑(つむ)って、深呼吸したりしている。
じっと見上げていたボクに気付いた悠貴さんは、ふっと微笑(わら)うと、
「相模湖でも見に行くか?」
と切り出した。
施設の前に大きな道路があり、その反対側に相模湖があるのだ。
「行きたい!」
「じゃあ行こうか」
手をつなぎたい衝動に駆られながら、ボクは悠貴さんの隣を置いて行かれないように早足で歩く。
車に気をつけながら道路を渡って、遠く広がる湖を眺める。
碧(あお)く大きな湖。水面が揺れて太陽の光を反射して、きらきら、きらきら、とても綺麗。
ボートが何隻(なんせき)が出ていて、家族連れっぽい人影や、カップルらしき男女の姿が見える。
吹き抜ける風が、頬を、髪を嬲(なぶ)る。
とても気持ちが良い。
夏の湿気を含んだ風、草いきれの匂い、肌を刺すように熱い太陽。
大嫌いだった夏が、悠貴さんが隣にいてくれるだけで、少しだけ好きになった。
それからは相模湖周辺を散歩して、予約の時間になったのでBBQをした。
ボクは全然やったことないから勝手がわからず、慣れた感じの悠貴さんの指示通りに動いた。
と言っても、悠貴さんがほとんど動いちゃったから、ボクは食べる専門になっちゃったけど。
野菜、お肉、お魚がバランスよく考えられたBBQセットだったし、悠貴さんの焼き方も上手かったせいか、いつもより一杯食べてしまい、お腹いっぱいになってしまった。
美味しいと言って食べるボクを、悠貴さんはずっと笑顔で見つめていた。あんまり見られると恥ずかしいのに。
焼いたりするのはできなかったけど、後片付けくらいは頑張らないと。
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