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一人じゃ見られない景色 15
RRRRRR・・・・RRRRRRR・・・・・。
何処かに放置されているスマホが鳴り出した。
病院?!
二人とも同じように急患ではないかと緊張が走って、お互いのスマホの在(あ)り処(か)を確認する。
悠貴さんのはカバンの横に置かれた状態ですぐに見つかり、ボクのはテントの端まで飛んでいた。
昨夜寝袋の横に置いたけど、悠貴さんといたしていた時に、手かなんかが当たって飛ばしてしまったんだと思う。
スマホを見つけて手に取ると、鳴っているのはボクのスマホで、しかもかけてきた名前は美影(みえい)ちゃんだった。
出たほうがいいのか、拒否するべきかわからず固まっていると、悠貴さんが隣にきて画面を覗(のぞ)き込んで。
盛大な溜息をついた。
「・・・出た方がいい」
「いいですか?」
「出ない方がリスクが大きい気がするから」
「ごめんなさい・・・」
悠貴さんが苦虫を噛み潰(つぶ)したような表情をしながら、電話に出るように言ってくれたので、ボクは謝りながら電話を通話状態にした。
「もしもし?」
スマホを耳に当てた瞬間、美影ちゃんの悲鳴に近い声が飛び込んできた。
『薫っっっ!!アイツと一緒なんでしょう?!』
「え・・?あ・・・うん・・・」
『そんな所いないで、すぐ帰って!!』
「そんな所って・・・」
『相模湖なんて何もないでしょう?』
あれ?相模湖にいるって、言ったっけ?
美影ちゃんに言うと大変なことになるから、言ってないし、お父さんとお母さんにも口止めしてるのに?
それに、そもそも美影ちゃんロケの最中で家に帰ってないはず。
きょとんとした表情で首を傾(かし)げたボクを、悠貴さんが同じように首を傾げて見てくる。
それはそれで可愛くて、思わず笑ってしまった。
「美影ちゃん、まだロケの最中だよね?」
『ええ、そうよ』
「・・・相模湖にいるって、何でわかったの?」
『え?追跡アプリ入れてるから』
「は?!え?!ボクのスマホに?!」
『当たり前でしょう』
美影ちゃんのキョトンとした声が聞こえる。
目に浮かぶ。
大きな目を更に大きくして、薄すぎず厚すぎない口唇を妖艶に歪ませて、勝ち誇ったように笑う姿が。
絶対こういう表情してる。
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