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誰よりも綺麗で美丈夫な不良さん②

ーーー・・・レン先輩に恋してから数日、時間があれば先輩に出会った渡り廊下を見下ろすのが日課になった。 ちょうど僕の1年A組の教室から渡り廊下が見下ろせるから、小休憩の間は教室の1番後ろの窓から渡り廊下を眺めてる。 先輩について僕が知ってるのは、『レン』って言う名前だけ。本名も、学年も知らないし、レン先輩も渡り廊下で助けた地味な僕の事なんてきっともう忘れてる。 だから、一瞬だけでもいい。レン先輩の事、遠くから見ていられたらそれだけで幸せだから、あの時使ってた渡り廊下、偶然でもなんでもいいからまた通らないかなって。 そんな事思いながら渡り廊下を眺めていたら、本当にレン先輩があの時の青色のお友達さんと一緒に別館に向かって歩いて行くのを見かけたんだ。 陽の光に反射してキラキラ光るホワイトベージュの綺麗な髪の毛が視界に入った瞬間、心臓がドクンと大きく跳ねる。 少し怠そうに歩くその後ろ姿を視線で追うだけでドキドキと鼓動が早まり、あぁ、本当に好きになっちゃったんだなぁ、って再確認してしまう。 青色さんはレン先輩と何事かを話し、背中をバシバシと叩いて笑っている。なんだかすごく楽しそう。レン先輩も笑ってるのかな?ここからじゃ見えないけど・・・、でも、レン先輩が笑ってたらいいなぁ。 レン先輩が楽しくて幸せだったら僕も幸せだと思えるもん。 「ゆい、何見てんの?」 「わ!・・・なんだ、(たくみ)かぁ。びっくりしたぁ」 そんなふうにジッとレン先輩を見つめている所に声をかけてきたのが、入学式の日誰も知り合いが居なくてポツンと1人で居た僕に話しかけて来てくれた田嶋(たじま) (たくみ)。 天パのふわふわな黒髪と垂れ目が可愛い匠には中学から付き合っている彼氏が居るって友達になって少ししてからコッソリ教えてくれた。 匠の彼氏さんは山本(やまもと) (りく)。匠と一緒にこの学園に入学してて、僕とも友達になってくれたんだ。陸はいつもすごく穏やかで匠第一って感じで本当に匠の事が大好きなんだなって伝わってくる。まだ出会って間もないけど、2人は僕の理想のカップルだって思えるくらい仲良しさん。 そんな陸に出来た友達、遠藤(えんどう) 静也(せいや)も加えた4人でいつもつるんで行動してるんだ。 (せい)は名前の通り物静かで、自分から話すというより僕達の話をうんうん、と聞いてくれるような聞き上手さん。 サラサラな黒髪に切れ長の瞳でイケメンの部類に入るんだと思うけど、かなりのゲームヲタクで恋愛に興味が無いって出会った頃陸と話してた。 休みは恋人と過ごすよりもゲームをしていたいんだって。 その気になればモッテモテになるだろうに、ちょっと勿体無い気もするけど・・・コレばっかりは本人次第だよね。 ちなみにゲイが多いらしいこの学園でもやっぱりノンケの人の割合の方が多いし、近くにある女子校の女の子とお付き合いしてる人が多いらしい。よく合コンがあったり、登下校の電車が被ったりするから出会う確率は高いんだって。 僕には縁が無いだろうなって思うけどね。 「ん?あれって田原先輩と中嶋(なかじま)先輩じゃない?ゆい、知り合いなの?」 匠が僕の横からヒョコリと顔を出して渡り廊下を見下ろし、キョトンとして誰かを指してそう聞かれたんだけど、誰?と僕もキョトンとしてしまう。 「田原先輩と中嶋先輩ってどの人?」 「ゆい知らなかったの?あの2人有名だよぉ!あそこの白っぽい髪と青い髪の人!白が田原先輩で青が中嶋先輩。目立つからすぐ覚えちゃった」 思わぬ情報に目がまんまるになってしまう。レン先輩って田原レン先輩っていうんだ・・・! 名前が知れただけなのにジワジワと嬉しさが胸を襲い、にまにまと顔が緩んでいく。 「・・・ゆい?」 怪訝な顔で匠に見られてしまった。いけないいけない、すぐ顔に出ちゃうんだから。 「えっとね、こないだ困ってた所を田原先輩に助けてもらったの。名前、知らなかったから」 「え、なにがあったの?大丈夫だった?」 匠はすっごく心配性なんだ。前に、そんなに心配しなくても僕は大丈夫だよって言ったら、ゆいは一見地味に見えるけど小動物みたいだしコロッと騙されそうでほっとけないって言われた。僕から言わせたら彼氏が居るのに言い寄られる事が多い匠の方がほっとけないんだけども。っていうか僕確かに地味だけど小動物じゃないし。 「ん、大丈夫。こないだ渡り廊下通ろうとしたら、派手な感じの人達が沢山居て通れなくなってたの。だから一旦戻って下通って行こうと思ったら、それに気付いた田原先輩が腕引いて別館まで連れてってくれたんだ。優しいよね」 ふにゃって笑いながらそう言うと、匠がすっごく微妙な顔をして僕を見てた。どうしたんだろう? 「そ、か。ゆい、あのね、こんな事言いたくないんだけど・・・。田原先輩はやめた方が、いいよ。あの2人、顔が良いって言う以外にも女遊び激しいって有名だから・・・」 すごく言いにくそうにそう言う匠の顔には心配です!って書いてあるみたいに僕への心配が前面に出ていて、思わず苦笑してしまう。 「匠、心配してくれてありがとう。大丈夫、僕、田原先輩とどうにかなれるなんて思ってないから。ただ見ていられたら良いんだ。だって僕だよ?こんな地味なやつ相手にしてもらえるわけないし。それに田原先輩が幸せだったら僕も嬉しいって思うもん。だからそんなに心配しないで?」 「でも・・・そんなのって・・・」 「もー!なんで匠が泣きそうになってるの?本当に僕は大丈夫だから。でも心配してくれてありがとう。大好きっ!」 まだ友達になって間もない僕の事を自分のことのように心配してくれる匠に胸が暖かくなって、思わずガバッと抱き着いた。 「えー、僕もゆい大好き〜!」 「でも陸と静には内緒にしてて欲しいかな。心配かけちゃいそうだし」 「んー、隠さなくても良いと思うけど・・・、でもゆいがそう言うなら内緒にしとくね」 「ありがとう匠。やさし〜!!!」 「そうでしょう、そうでしょうとも〜!」 そんなふうに匠とぎゅっぎゅと戯れていると、先生に呼ばれてたらしい陸と静が教室に戻ってきた。 「あれ?なんか小動物同士で戯れてる〜!可愛いなぁ」 「うん、なんかホッコリする」 満面の笑みの陸に真面目に相槌を打つ静。 なんだか最近小動物って言われるのに慣れてきてしまった気がする。ちょっと解せない。

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