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夢のような日々⑧
「あ!そうだぁ!」
「うぁ!」
みっくん先輩の後ろを小走りで追いかけていると、渡り廊下に差し掛かったあたりで突然くるりと振り向いたみっくん先輩に肩を抱かれた。
驚いて変な声を出してしまう僕を気にも留めず、そのままグイッと体を引かれて後ろからハグされているような体勢になってしまい更に驚く。
「みっくん先輩!?」
「ゆいちゃんピースして、ピース!」
「へ?あ、はい?」
「よぉ〜しっ!はい、ちーずぅ!」
え?え?と混乱しながらもとりあえず言われた通りにピースをするとパシャリとみっくん先輩が掲げた携帯から音が鳴る。
「ん〜、良い感じぃ!」
「え、はい・・・?」
ね〜!って携帯を見せられて思わず曖昧に頷く。画面にはニッコニコなみっくん先輩と微妙な顔をしたままピースをしている僕が写っていて。
しかしなんで写真?
コテリと首を傾げると、ポケットに入れていた携帯をヒョイっと引き抜かれてしまう。
「え?みっくん先輩!?何で僕の携帯取るんですかぁ!?」
手を伸ばして取り返そうとするも、腕を高く上げてしまって全然届かない。
ピョンピョン跳ねながら頑張って取り返そうとしていると、スイスイっと僕の携帯を操作していたみっくん先輩がニンマリ笑ってサラッと返してくれた。
「はい、もうい〜よぉ!」
「えぇ?あ、ありがとうございます?」
・・・はっ!何で僕今お礼言っちゃったんだろう?取られた携帯返してもらっただけなのに!
「俺の連絡先入れてあるからぁ〜、いつでも連絡してきてねぇ〜!んじゃ、またねん」
良い笑顔で手を振りながらそのまま帰っていったみっくん先輩。
いや本当になんだったんだ。
しばらくポカンとしたまま渡り廊下に突っ立っていた僕だけど、もう考えても疲れるだけな気がするなって気付いて教室に戻る事にした。
なんだかドッと疲れたなぁ。
✱✱✱
「ゆーいー!やっと戻ってきた!どこ行ってたのぉ?心配しちゃったじゃん!」
教室に戻るともう3人共戻って来てて、匠がパタパタと駆け寄って何故か色んな角度から僕を確認し始めた。
「ごめんね。たっちゃん先生に社会科準備室までお使い頼まれちゃって」
「そうだったんだね。匠、ゆいは大丈夫そうだから落ち着いて」
「1人で行ったのか?大丈夫だった?」
未だ僕の周囲を回っている匠を陸が嗜めていると、今度は静に心配そうに言われてしまった。
僕ってそんなに頼りなさそうなのかなぁ?
まぁ正直持って行くの大変だったけども。
「ん、大丈夫だったよ!ちょっと量多かったけど途中で会ったみっくん先輩が手伝ってくれたし」
「「「みっくん先輩?」」」
見事にシンクロした3人がコテリと首を傾げた。
あれれ?初めて話した時、皆もみっくんって呼んでねぇって言ってるの聞いて無かったっけ?
「ん?中嶋蜜樹先輩知ってる、よね?こないだみっくんって呼んでって言ってたよ」
僕がみっくん先輩の名前を出した瞬間、何故か3人共すっごく嫌そうというか複雑そうな顔をしてしまった。
またシンクロしてる。仲良しだなぁ。
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