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初めての外出デート⑨

 おれだけのになってよ?僕の心は最初から蓮先輩だけのモノなのに、変なの。  熱に浮かされたような頭でそんなふうに思う。  それにこんなふうにキスされて意味深な事言われちゃったら僕、単純だから期待しちゃう。好きだって言われたわけじゃないし・・・、それに蓮先輩はノーマルだって知ってるのにね。  女の人が恋愛対象の蓮先輩に僕を恋人にしてほしい、なんて言えない。なんでか分かんないけど今はペット扱いでもたくさん構ってくれて、キスしてくれて・・・夢みたいな日々だけど、蓮先輩に好きな女の人が出来たらきっとこの時間は終わっちゃうんだから。  けど・・・それまででもいいから。僕が蓮先輩だけのになるなら、蓮先輩も僕だけのになってくれたら良いのに、なんて。  気付いたら体が動いてた。  僕より背の高い蓮先輩。  背伸びして、初めて僕からキスをした。  「・・・・・・蓮先輩も僕だけのになってくれますか?」  閉じていた瞼を上げるとビックリした顔の蓮先輩が視界いっぱいに広がった。  蓮先輩の瞳の中に映る僕は真っ赤な顔して目には涙が溜まってて、なんだか不思議だ。  ・・・・・・悲しいわけじゃ無いのにね。  「・・・あぁ。俺も結翔だけの、な」  あぁ、その言葉だけで充分幸せだ。  もしいつか蓮先輩にもう要らないって言われたとしても、今この瞬間の幸せは色褪せる事なんて無いだろうな。  なんでか分からないけど溢れてしまいそうになった涙を誤魔化すようにへにゃりと笑った僕は、蓮先輩の胸元に額を擦り付けるように思いっきり抱きついた。  ───しばらくそうして無言で抱き締めあっていた僕達は、蓮先輩が僕のつむじにキスを落とした事で時間が動き始めた。  「結翔、このまま抱き締めていたいのは山々なんだけどさ、そろそろ帰らないと家族が心配するんじゃないか?」  「・・・あ、本当だ。もうこんな時間だったんですね。そろそろ帰らなきゃ電話掛かってくるかもです」  「だよな。っし、んじゃあ行くか」  蓮先輩は1度強くぎゅって抱き締めて自然に僕の手を取って歩き出した。  今日はずっと手を繋いでくれてた蓮先輩。それが例え迷子防止であったとしても!例え距離感バグってるだけだとしても!僕は蓮先輩と手繋いでデートが出来て幸せです!  さっきまでのちょっとしんみりした気持ちが一気に晴れて思わずえへへって笑っちゃう。  やっぱり僕、チョロいのかもしれない。  ポツポツと今日の楽しかった思い出を話しながら歩いていたらあっという間に僕のお家が見えてきちゃった。1人で歩くと駅前の辺りなんて凄く遠く感じるのに不思議だよね。  蓮先輩はそのまま家の前まで送ってくれて、また寂しさがぶり返しちゃってる僕の頭を優しく撫でてくれた。  「結翔、コレ。最初に入った店で結翔が試着してくれた中で俺が1番似合ってるって思ったやつ。次のデートではコレ着てきて欲しい。勝手にごめんな。コレ着た結翔を独り占めしたくてつい買っちゃったんだ」  そうして差し出された袋に目をまん丸にしてしまう。  あれ、蓮先輩の服じゃなかったんだ・・・!  「あの、えっと・・・、嬉しい、です。ありがとうございますっ!でも今日全部蓮先輩に奢ってもらっちゃったのにこんな素敵なプレゼントまで・・・良いんですか?」  ソロリと蓮先輩を伺うように見上げると、ニヤって笑った蓮先輩。あ、ちょっと悪い顔。そんな表情も格好良いなぁ・・・!  「良いんだよ。俺がやりたくてやってんだから。でも気になるなら・・・、今度俺のお願い聞いてよ」  お願い?そんなのでいいの?ってキョトンとしてしまう。  「お願い、ですか?それはもちろん良いですけど。でも蓮先輩のお願いならお礼じゃなくてもいつでも聞きますよっ?」  「言ったな?約束だよ?」  ニンマリ笑った蓮先輩がそう言うので、分かりましたっ!って気合を入れて小指を差し出すと、蓮先輩はハハって笑いながらちゃんと指切りしてくれたんだ。  「んじゃ、また月曜な」  「はいっ!送ってくださってありがとうございました。気を付けて帰ってくださいねっ!」  そう言ってニッコリ笑った僕の頬にサラリとキスを落とした蓮先輩は、ポカンと口を開けて驚いてしまった僕を見てまた楽しそうに笑って。  そのままヒラリと手を振って帰っていってしまった。  ・・・・・・こんな真っ赤っかな顔でお家入れないよぉ!

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