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初めての外出デート⑩

 両手でパタパタと扇いでなんとか顔の熱を冷ました僕は何食わぬ顔でただいま〜って家に入ったんだけど、待ち構えてたみたいにひょっこりダイニングから仲良く顔を出した姉ちゃんズに即捕まってしまった。  「ゆいくん、デートはどうだったぁ?」  「楽しかったかしら?」  「何したのぉ?」  「写真は?ツーショット撮ってきた!?」  「手は繋いだのかしら?」  「チューはまだダメだよぉ!ゆいくんには早いんだから・・・!」  「まだ私達の可愛い可愛いゆいくんで居て欲しいわ」  次々に飛んでくる質問に思わずへちゃりと眉が下がる。姉ちゃん達、こうなると他に気が逸れない限り離してくれないからちょっと面倒臭いのだ。こうゆう時はあれしかない。本当はあんまりやりたくないけどその質問は答えにくすぎるのです。っていうかちゅーもダメだったなんて知らなかったよ。もう既にたくさんしちゃったんだけど・・・内緒にしとこう。 姉ちゃんズに気付かれないようにふぅ、と小さくため息を溢した僕は、パッと顔を上げてニッコリと笑った。  「姉ちゃん!今日行ったカフェのケーキがね、すっごく美味しかったんだよ!夜はBARになるお店でね、隠れ家みたいなお店だから落ち着く感じなんだけどすっごくオシャレで。姉ちゃん達は大人だし甘いの好きじゃないから夜のBARの方が好きかもなぁ。でもケーキも甘過ぎなくて食べやすかったから姉ちゃん達にも食べれるかも!僕、たまには『さくねぇ』と『ももねぇ』と一緒にカフェデートとかしたいなぁ〜・・・」  五十鈴家末っ子の秘技!ぶりっ子話逸らしである!!  ニッコリ笑う事と、普段は姉ちゃんとか姉ちゃんズとかって呼んでるのを小さい時みたいに『さくねぇ』『ももねぇ』って名前で呼ぶのがポイントです。ちなみにデートしたいなってぶりっ子して言ったら完璧。その後喜んだ姉ちゃんズに本当に1日中連れ回されたりするけど、背に腹はかえられぬ、です・・・!  デートの様子とか家族に話すのは僕にはまだハードルが高いんだよぅ!!それにもうちゅーしちゃったの、まともに質問に答えてたらバレちゃう気しかしないし。  ちなみに兄ちゃんも割とコレでなんとかなったりする。でも誰にやっても使った後の構い倒しが大変だから秘技なのです。  「やぁん!ゆいくんがデレたぁ!可愛い〜!約束よぉ!絶対絶対デートしよぉねぇ!お揃いの服買いましょうね!」  「ゆいくんがデレたわ・・・!デートの日にちを決めましょう。今すぐに。そして可愛い服をたくさん買うのよ!」  あー・・・、羞恥に塗れた質問コーナーは終わったけど、今度は両側からぎゅむぎゅむとハイテンションが続いている姉ちゃんズに抱き締められて思わず遠い目をしてしまった。カフェって言ったのにコレはデートという名の1日中荷物持ちコースかもしれない。  「あれ?姉ちゃん達なにしてんの・・・ってゆいくん!何してんの!?羨ましい俺も混ぜて!!」  自分の部屋から降りてきたのであろう兄ちゃんにも見つかって、なぜだか僕と姉ちゃんズを3人まとめてぎゅうって抱き締めだした兄ちゃん。  ・・・あ、僕良い事思いついちゃった。  「ねぇねぇまどかにぃも一緒にデートしようよ!僕久しぶりに4人でデートしたいなぁ!」    こうなれば兄ちゃんも巻き添えにして兄ちゃんに荷物持ってもらおう。僕より力持ちだし。うん、名案だと思う!  この後ゆいくんにデートに誘われた!ってデレェっとした兄ちゃんにしばらく3人共思いっきり抱き締められて苦しくなってたら、何故かご飯を作り終えたらしい父さんが混じってきて仕事終わりの母さんにあなた達何してるの?って言われるまで離してもらえなかった。  そしてなぜか最終的に母さんに1人ずつハグされて終結したんだけど・・・、僕の家ってこういうの割とよくある事なんだよね。前匠に結翔の家ってスキンシップ多いし仲良しだよねって言われたんだけど、僕にとっては小さい時からこんな感じだからよく分からないんだよねぇ。  その後は父さんが作ってくれた晩御飯をありがたくみんなで食べて、いつも通り順番にお風呂に入って僕はアイスを食べてから自分の部屋に戻ったんだ。夏のお風呂上がりのアイスクリームって別格に美味しいよね。  んで、ベットに入った僕は今日の事を思い出して幸せな気持ちに浸っていたんだけど。    ───俺も結翔だけの、な。  あの時の蓮先輩の熱い唇と言葉、ぎゅって包み込まれた時のドキドキして安心する蓮先輩の香りをブワッて思い出して、顔を真っ赤にして夢じゃないよねぇ!?ってベットの中で身悶えちゃってなかなか眠れなかったのは、なんだか恥ずかしいので誰にも内緒なのである。 ─────────────── こんにちは、抹茶もちですm(__)m すっかり結翔の家族の名前を出し忘れていたのでここで補足させてください(つω・。`)! 父:五十鈴 冬馬(いすず とうま) 母:五十鈴 美織(いすず みおり) 長女(双子):五十鈴 櫻子(いすず さくらこ) 次女(双子):五十鈴 桃香(いすず ももか) 兄:五十鈴 円(いすず まどか) ▽覚えなくても話には支障はありませんが家族達の軽い設定を少しだけ。 父は温厚で手先が器用。結翔は父が怒った所を見た事がない。家事担当。細くて身長は低め。地毛が茶髪で直毛。天然。下戸。 母はバリバリのキャリアウーマンで割とサバサバしてる。ボンキュッボンの高身長。父より背が高い。黒髪で癖毛。ちょっと抜けてる。ザル。 兄弟4人は外見だけでいうと全員満遍なく2人の要素を受け継いでいるので、パッと見めちゃくちゃソックリ。 姉2人は地毛が真っ黒で櫻子が直毛で桃香が癖毛 兄と結翔は地毛が茶髪で兄が直毛で結翔が癖毛 櫻子が話し方が硬い方 桃香が話し方が緩い方 兄は家族の中では身長も体格も1番大きいです。 櫻子と桃香と結翔の身長はあまり変わりません。 3人とも末っ子の結翔が大好きで構いたくて仕方がないので、大きくなった結翔は面倒くさがっていつも割と適当にあしらいます。 だからぶりっ子してるって分かっててもデレてくれる結翔が嬉しくて可愛くて仕方がなくなっちゃう3人は大抵結翔の思惑通りコロリと騙されてあげてます。 結翔の図太さは小さい頃に3人に弄り倒され構い倒された事によって形成されているので、今では学習して割と手のひらコロコロ。

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