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凄く甘くて少しだけほろ苦い⑩
「じゃあ結翔、すげぇ嫌だけどそろそろ俺も教室行くな。昼は俺が結翔を迎えに行くからそれまで教室で良い子に待ってて?」
「へ?僕1人で行けますよ?」
蓮先輩にお迎え来てもらうのは嬉しいけど、蓮先輩の教室からだったらココにくる方が遠回りになるんじゃないかな?
そんなの申し訳ないし、今まで通り1人で行けるのにってキョトリと蓮先輩を見上げると両手で頬っぺたを挟まれて顔を固定されてしまった。
「俺が結翔を迎えに来たいの。だからお願い、待ってて?」
今にもチューしちゃいそうな至近距離で囁く蓮先輩に、思わず思考停止してコクコクと頷くと満足そうに笑ってくれる蓮先輩。
やっぱり僕、蓮先輩に勝てる気しない。まぁ勝つ気も無いんだけども。
最後に良い子って頭を撫でてくれた蓮先輩は、じゃあまた昼になってヒラリと手を振って行ってしまった。
・・・なんだかちょっと寂しいかも、なんて。
蓮先輩の小さくなっていく背中をジッと見つめながら見送っていると、クイッと袖が引っ張られた。
「ゆーいー!僕何も聞いてなかったからすっごくびっくりしちゃったよぉ!いつの間にあんな砂糖吐きそうなくらい甘々な関係になったわけ!?一体デートで何があったの!?っていうか田原先輩ってあんな事するタイプだったんだね!?」
そうだった!蓮先輩に思考が引っ張られすぎて匠に説明するの、スッカリ頭から抜けちゃってた。
「今日の朝、登校しようと思って家を出たら蓮先輩が迎えに来てくれてて。まさかこんな事になると思ってなかったからね、今日の朝匠に会ってから直接報告しようと思ってたんだけど・・・。驚かせちゃってごめんね。あのね、僕、蓮先輩のお気に入りにしてもらえたみたいなんだっ!すごいよね。僕、こないだのデートからずーっと夢見てるみたいなんだ」
「・・・ん?お気に入り?恋人じゃなくて?」
匠に怪訝そうにそう言われて思わず顔が真っ赤に染まってしまった。
僕が蓮先輩の恋人・・・!?うわぁ・・・うっわぁ!
「ちっ、違うよっ!好きとか付き合って欲しいとか言われた訳じゃ無いし、恋人ってわけじゃないよ。でも僕的には恋人気分に浸っちゃってる、かも。蓮先輩に甘やかされて頭ふわっふわになっちゃってる自覚あるもん」
「えぇ?じゃあなんて言われたの?」
「え?えっと・・・、お、俺だけのになってよ、って・・・!」
「・・・それで結翔はなんて返事したの?」
「蓮先輩も僕だけのになってくれますか?って言っちゃった。今思うとなんであんな大胆な事言えたんだろう・・・!」
「えぇ〜・・・。もうそれ付き合ってるんじゃないの?だってさっきの田原先輩、ゆいに骨抜きって感じだったよ?」
「それは僕をお気に入りにしてくれたからだと思うよ。蓮先輩のお気に入りってすごいなぁって既に今日何回も思っちゃった!」
───それに、僕は蓮先輩のペットだから。勘違いしちゃダメなんだ。でもさ、恋人気分には浸らせてもらっちゃうつもりではあるんだなぁ、僕。だって勝手に浸って勝手に幸せになる分には蓮先輩に迷惑はかけないでしょ?
「そうかなぁー・・・?」
「ん、そうだよっ!匠、心配してくれてる?僕大丈夫だよ。今すっごく幸せだもんっ!」
「まぁゆいが幸せなら僕はそれで良いんだけどさぁ、1回ちゃんと田原先輩と話してみた方がいいと思うんだけどなぁ」
未だ納得していなさそうな匠がそう言った瞬間にチャイムが鳴ってしまったので、話はそこで終わってしまった。
「また後で最初から最後までちゃんと話聞かせてよねぇ!」
なんてちょっと唇を尖らせて自分の席に向かった匠。
また匠に心配かけちゃった。
心配かけちゃって申し訳ないのはもちろんだけど、いつも僕の事を心配してくれる匠に胸がホッコリ暖かくなる。
僕、友達にも恵まれてるよなぁって改めて思う。
大好きな人達に囲まれて、僕って本当に幸せ者だよねぇ。
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